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オリエンテーリング (1) [片いなか・ハイスクール]

連載第1回
<オリエンテーリング (1)>

『俺たちは今、遭難しようとしている。・・・・勝手な行動を取ったわけでもなく、間違った道に向かったわけでもない。これは学校が望んだのだ!』


道なき林の中を草木をかき分けて進む9名のパーティー。
俺はおそらくこの物語の主人公、アロン・コー二ック。つい半月前、この都会ともいなかとも言えない街の高校に入学したばかりの男子高校生だ。
『おかしい、この物語は、普通の他愛ない学園ものだったはず。普通に学校生活の中で繰り広げられる出来事や、ラブストーリーがのほほんと語られると聞いていたのに、なんだこのサバイバルゲームは』

先頭を歩く男子が振り返った。
「方向、間違いないか?!」
彼はこのパーティーのリーダーを務めるジョン・ディアス。180cm以上のスラリとした長身で、モデルのよう・・というか実際モデルのバイトしてるらしい。。アフリ力系で肌は黒っぽいが、色々血が混じっているようでさらりとした直毛の髪をしている。
コンパスを持った男子が
「いいと思う・・」
と答えた。こいつはアンザック・ボールデン。人のよさそうな奴だ。アンザックは方向いいというが、アロンの意見は違った。
「アンザック、俺、あの小さい崖をのぽり下りしたとき、斜面の向きのせいで方向感覚が少しずれたような気がする」アロンは言った。
「え?方位はあってるけど」
「起点が左右にぶれれば目標の方位は少しずつずれるだろ。少し目標ルートより右に行ったような気がするんだけど」
「俺もそんな気がする。左へ15度くらいじゃないか?目標方向は」
俺に賛同した太ったこいつはウォルト・ペーターゼン。記録係に割当たっている。今日は相当いいダイエットになっているだろう。
「ど、どうする?俺、方向合ってると思ってた。ジョン、アロン達が少し進む方向が違うみたいだって言うんだ」
「確かか?言っとくけど、俺の方向感覚はまったくあてにするなよ。後ろに進むって言われても、ああそうかって思うくらい音痴だから」ジョンは方向音痴らしい。
「どっか見晴らしいいとこないかな。できたらもう一度目標確認したいな」とアロン。しかし林の中はまったく見晴らしのききそうなところがなかった。
「おーい、女子で向かう方向に自身ある奴いるか?」ジョンがパーティーの女子に聞いた。
「え?もしかして迷っちゃったんですか?」
不安に駆られ、目をうるうるさせてるこの娘はクリスティン・ローゼン。おっとりしてて、こんなところではいかにも役に立ちそうにない。でも救護係だから、手当してもらうにはいいかもしれない。
「なんだよ、頼りないなあ!ちゃんと道案内してよね」
ここにも170cm級のモデル並みの体系の女子が一人。誰彼とも認める超美人のシャルロット・ドヌーヴだ。モデルはやってないようだが、雑誌で見かけてもおかしくない容姿である。ただ結構性格がきつい感じがする。
ジョンが反論した。「そりゃねえよ。ここは男女関係なく力合わせないと、本当にやばいぜ。人任せにしないで、みんな同じように考えてくれよ」
ジョンは結構パーティーをまとめるにはいいリーダーかもしれない。
「でも方向感覚って、女の方が鈍いこと多いからねえ。適材適所で使ってよね。あ、でもシャルロットはお化け屋敷でも道迷わずにすぐ出てこれるじゃない」
超美人のシャルロットと仲のいい彼女はダーニャ・ラミウス。中学が一緒だったそうだ。
「あれは怖いからとっとと出てきただけでしょ!だいたいお化け屋敷の中とここじゃ比べるものが違うでしょ」シャルロットはお化けは嫌いなようだ。
「すごいわ。わたしお化け屋敷の暗い道、迷って出てこらんなくて、いつも泣き崩れて係員に救助されるんですぅ」と見かけから予想つく通りのクリスティン。この人だけはここもお化け屋敷と同次元らしい。この人に救護されることはなさそうな気がしてきた。
「冗談言えるくらい元気なら、それはそれでいいや。カーラは?」アロンはカーラという女の子に聞いた。カーラ・プロストは今のところつかみどころのない娘だった。通信係に割当たっている。
「もう少し・・左じゃないかと思う。で、でも自身ないから!」
「おー!ジョン、もう一人同じ意見がいたぞ」
「カーラも左寄りか?じゃ、そっち行ってみよう」
方向は決まった。ところでこのパーティーにはもう一人女子がいる。アロンはそのもう一人、かたわらにがっくりと疲れて座り込んでるイザベル・ナイトレイに声をかけた。
「イザベル、大丈夫?」
「しゅ、出発する直前に声かけて・・」
イザベルは出発前から本人が宣言していたように、体力がまったくないらしいのだ。まだ工程の4分の1に満たないのにこの疲れよう、今日1日持つんだろうか。

さて、ここで我々のパーティーとは何ぞやということに触れておこう。
このサバイバルめいてきた行軍は「オリエンテーリング」と名打った学校行事なのだ。クラスメンバーのお互いをよく知り、結束を固めることが第1目的。そしてグループ対抗となっていることで団結力、協調性なども試されているらしい。
舞台は、片田舎な我が高校から電車で数駅行ったところにある緑豊かなクスス山の東山麓。この1年生対象のオリエンテーリングは学校の恒例行事らしいが、クスス山で開催されるのは今年が初めてとのことだ。

この片田舎にある我が高校は、もっと都会にある本校の第1分校である。
第1分校はAからCの3クラスあって、アロンはC組。男女各9名、総勢18名のクラスである。各クラスはさらに2班に別れ、アロンがいるのはC組B班だ。C組のA班とB班はクスス山麓のオリエンテーリングエリアに、互いに対角線反対側から入り、相手班の入った入り口からエリアを出なければならない。途中にはチェックポイントが5カ所あって、そこを通過することになっている。12時間以内で出られたら完走だ。12時間を越えると失格である。12時間というと夜の9時になるので、まずありえないと思っていたが、いまや現実味のある話になってきた。
しかも配られている地図は、東西南北、オリエンテーリングエリア全体の大きさとチェックポイントの位置関係、直線距離はわかるが、そこへ至る道や地形は一切載ってない。道は探せということらしい。
このオリエンテーリングはクラスごとに別々の日に行われている。
A組は月曜やって翌日は休日。B組は火曜やって翌日休日。俺らC組は本日水曜日が開催日だ。問題は前のクラスからどんなだったか話をまったく聞けなかったことだ。完走したのかさえわからない。というかこの日程は、そういったことを聞けないように仕組まれていたとしか思えない。
しかも最初のチェックポイントを目指すC組B班は、、オリエンテーリングエリアに入って1時間ほどで獣道さえなくなった。

学校は生徒を遭難させようとしているとしか思えん!
そういう状況を作り出して、いやがうえにも結束力を作り出そうとしているようだ。

ただこれが、学校側が生徒の死を望んでない証拠に、30分に1回定時連絡をして、問題があればすぐ救助に向かう準備が整えられているとのことだ。話によると麓にはヘリも準備してあるという。本当か知らんが。
果たして俺らは今日中に家に帰れるのだろうか。


次回「オリエンテーリング (2)」へ続く!
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TSO

コメントを使って言い訳や作成裏話を載せることにしようと思います。

本当はマンガが描けるなら描きたいのですが、そんな技術ないので文書にしました。
さらに当初構想は少女マンガっぽい路線を考えていたのですが、気付いてみれば主人公が男の子なのでこれも頓挫。
そして極めつけは、ラブコメといいつついきなり妙なスタート。
いろんな作品を見て気付きましたが、初回というのは何かとインパクトを与えることに苦心してるんですね。
少年誌のみならず少女マンガもけっこう突拍子もない第1回だったり。そうかあ。というわけで、本作も話の中の順番を入れ替えて、少し倣ってみました、最初の1行だけ・・・。監修する編集もいないし。

というわけで、気ままに思いつくままに筆を走らせたいと思います。

by TSO (2009-12-30 22:37) 

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