<夏のエピソード後編(5):5分だけおさななじみ> [片いなか・ハイスクール]
「片いなか・ハイスクール」連載第101回
<夏のエピソード後編(5):5分だけおさななじみ>
アロンから水中眼鏡を受け取ると、裕美子はその辺を潜り始めた。
何やらあちこち泳ぎまくっている。あまり感情を見せない娘だが、どうやら楽しいらしい。
アロンは岩の上に寝そべって空を見あげた。
薄い雲がゆっくりと動いている。太陽にかかれば少しは涼しくなるかもしれないが、強い日差しに負けて蒸発してしまいそうだった。雲は太陽から逃げるように流れていった。
しばらくして近くに人がやってきた。小泉の声だ。
「アロン君、ありがとう。あー、楽しかったです。見えましたよ水の中。近眼なのでやっぱり近付かないとピント合わないんですけど、でも近くに寄ればはっきり見えて、すごく感動しました」
起きあがったアロンだが、そこには見慣れない少女がいた。
「え・・と、どなたでしたっけ?」
「え?小泉・・裕美子ですよ」
「・・・あれ?!髪形が・・」
裕美子の髪は直毛ではなくパーマをかけたようなもわもわした特徴ある髪をしている。ところが目の前に立つ少女はさらりとまっすぐな髪をしていた。
「ああ、そうか。わたしくせっ毛なんですけど、濡れるとくせが取れてまっすぐになるんです。別人みたいでしょう?これも結構嫌で、よくからかわれたから、みんなの前では見せないようにしてるんです」
「本当に別人みたいだ。他のみんな知らないの?風呂とかでバレない?」
「微妙にタイミングずらしてるので・・まだ知られてないですけど」
しばらく悩むアロン。
その間に髪をタオルで拭いている裕美子。髪はもとにもどりつつあった。
「小泉、ちょっとお願いがあるんだけど」
「わたしにですか?」
「あのさ、おさななじみ役を引き受けてくれない?」
「え?・・おさななじみさん、来れなくなったんですか?」
「いや、違うんだ・・。実はいないんだ、そんな人。あれ、美女から逃げる口実でレソフィック達と考えたものだったんだ」
「へえー。」
すっとぼけた反応を裕美子は示したが、しばらくして笑い出した。
「あははは、そうなんですか?うそだったんだ。あはあは。なんかずいぶん手が込んだうそですねー」
めずらしい裕美子の笑う姿。しかもまだメガネも外したままである。普段見せないだけにそれが裕美子だと思うとそれは妙でもあった。
「メガネ外して笑ってる小泉は別人だね・・。それなら俺の美人眼も疑われないですむや。勇夫をさ、女装させるってのもあっていっぺんやったんだけど、あれで挑んだら俺のセンス疑われるとこだったよ。おさななじみやってくれる?」
「でも・・わたし真っ直ぐな髪にしてやるんですよね?髪濡らしてないとですよ?ちょっと乾くと戻ってきますから、無理じゃないですか?」
「5分くらいなら何とか持たないかな?会見は5分までで、すっ飛んで逃げるから」
「うーん」
「たのむ!」
「・・わかりました」
「すまん!ありがと!」
次回「夏のエピソード後編(6):水中騎馬戦」へ続く!
前回のお話「夏のエピソード後編(4):大近眼は陸も海も同じ」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
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<夏のエピソード後編(5):5分だけおさななじみ>
アロンから水中眼鏡を受け取ると、裕美子はその辺を潜り始めた。
何やらあちこち泳ぎまくっている。あまり感情を見せない娘だが、どうやら楽しいらしい。
アロンは岩の上に寝そべって空を見あげた。
薄い雲がゆっくりと動いている。太陽にかかれば少しは涼しくなるかもしれないが、強い日差しに負けて蒸発してしまいそうだった。雲は太陽から逃げるように流れていった。
しばらくして近くに人がやってきた。小泉の声だ。
「アロン君、ありがとう。あー、楽しかったです。見えましたよ水の中。近眼なのでやっぱり近付かないとピント合わないんですけど、でも近くに寄ればはっきり見えて、すごく感動しました」
起きあがったアロンだが、そこには見慣れない少女がいた。
「え・・と、どなたでしたっけ?」
「え?小泉・・裕美子ですよ」
「・・・あれ?!髪形が・・」
裕美子の髪は直毛ではなくパーマをかけたようなもわもわした特徴ある髪をしている。ところが目の前に立つ少女はさらりとまっすぐな髪をしていた。
「ああ、そうか。わたしくせっ毛なんですけど、濡れるとくせが取れてまっすぐになるんです。別人みたいでしょう?これも結構嫌で、よくからかわれたから、みんなの前では見せないようにしてるんです」
「本当に別人みたいだ。他のみんな知らないの?風呂とかでバレない?」
「微妙にタイミングずらしてるので・・まだ知られてないですけど」
しばらく悩むアロン。
その間に髪をタオルで拭いている裕美子。髪はもとにもどりつつあった。
「小泉、ちょっとお願いがあるんだけど」
「わたしにですか?」
「あのさ、おさななじみ役を引き受けてくれない?」
「え?・・おさななじみさん、来れなくなったんですか?」
「いや、違うんだ・・。実はいないんだ、そんな人。あれ、美女から逃げる口実でレソフィック達と考えたものだったんだ」
「へえー。」
すっとぼけた反応を裕美子は示したが、しばらくして笑い出した。
「あははは、そうなんですか?うそだったんだ。あはあは。なんかずいぶん手が込んだうそですねー」
めずらしい裕美子の笑う姿。しかもまだメガネも外したままである。普段見せないだけにそれが裕美子だと思うとそれは妙でもあった。
「メガネ外して笑ってる小泉は別人だね・・。それなら俺の美人眼も疑われないですむや。勇夫をさ、女装させるってのもあっていっぺんやったんだけど、あれで挑んだら俺のセンス疑われるとこだったよ。おさななじみやってくれる?」
「でも・・わたし真っ直ぐな髪にしてやるんですよね?髪濡らしてないとですよ?ちょっと乾くと戻ってきますから、無理じゃないですか?」
「5分くらいなら何とか持たないかな?会見は5分までで、すっ飛んで逃げるから」
「うーん」
「たのむ!」
「・・わかりました」
「すまん!ありがと!」
次回「夏のエピソード後編(6):水中騎馬戦」へ続く!
前回のお話「夏のエピソード後編(4):大近眼は陸も海も同じ」
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xml_xslさん、F−USAさん、HAtAさん、niceありがとうございます。
次の回向けの挿絵を準備中・・・ですが、うまく描けません。(~_~)
みなさんのマンガのように表現できたらと常々思います。
町会の神輿があるっていうから、ジュース・つまみもらいに行ってこようかナ。
by TSO (2010-07-11 13:56)
裕美子ちゃん、だいぶイメージ変わりましたね~
天然っぽいとこも可愛いです(^-^)
by ケンケン@ (2010-07-11 15:35)
ケンケン@さん、dorobouhigeさん、niceありがとうございます。
ケンケン@さん、コメントいつもありがとうございます。
3変化(へんげ)した裕美子ですが、芸としては次回もう1回あったりして?
天然キャラとしては既に突出したクリスティンがいるので、もうこれ以上養えません。(^^;
裕美子さんは珍しく今回とぼけたところを見せましたが、通常は超が付くほど計算しつくされた謎の人です。この辺はぜひ8章、9章読んでいただければと思います。
次回の挿絵ようやく描けたー。でも次は4コママンガをアップする予定です。
by TSO (2010-07-11 22:52)
copperさん、寿パパさん、c_yuhkiさん、niceありがとうございます。
裏話しますと、この裕美子さんの特徴ある髪はひらいけい先生の『YUMEMI白書』(サンデーだったかと思ったら月間少年ジャンプだったそう)が原点です。この漫画の主人公「はなと・ゆめみ」の髪がこうだったんですね。それまでは裕美子さんは天パーの設定でした。
by TSO (2010-07-12 22:05)