<夏のエピソード後編(7):ユカリ> [片いなか・ハイスクール]
「片いなか・ハイスクール」連載第103回
<夏のエピソード後編(7):ユカリ>
みんな昼飯を食っている頃。宿の裏手でアロンと裕美子は落ち合った。
裕美子はアロンに買ってもらった水着に着替えている。それもなんとビキニである。
西洋人に比べたらそりゃボリューム感は及ばないが、意外と着やせするのか水着のマジックか、ちゃんと胸の谷間も見せて、不思議な色っぽさがあった。
「ごめんな・・なんか迷惑かけてるね、俺」
「気にしないでください。今アロン君は『ユカリ』さんと久しぶりの再会で幸せな状態なんでしょ?」
「・・・メガネかけてないよ、その『ユカリ』さんは」
おさななじみの名前は『ユカリ』と裕美子が命名したのだ。
「こうですか?」裕美子はメガネを取った。
なんでメガネにするんだろう、と思った。
「うん、いいね」
髪を濡らしながら裕美子が聞く。
「どんな性格ですか?『ユカリ』さん」
「え?・・明るくて元気な子・・かな」
「それがアロン君の理想の子ですか?・・私とは全然違いますね」
「そうかな・・」
裕美子は髪を濡らして櫛で整えると、アクセントに赤いピン止めで左の前髪をとめた。
ストレートになった髪は背中の中頃まで届いていた。
「似合う?」
「か、かわいい、中学生みたい」
「ちゅう・・・、やめようかしら」
「いいよいいよ、すごく似合ってるし」
ばるんばるんとバイクで二人乗りして美女達の待つところへ着いた。その音にダーニャが気付く。
「あ、来たよ、アロン君」
美女が額に手をかざしてそれを見た。「誰か乗っけてるね、ちゃんと」
アロンは美女達の前までバイクを持ってきた。
「おまたせ。おさななじみのユカリだよ」
「はぁい、アロン君が世話になってるね、ユカリでーす。よろしくね!」
アロンが引きつるほどの明るい声で、アロンの後ろで手を振ってあいさつする『ユカリ』だった。
うわあっと居合わせたみんながざわめく。
それは背が小さいがゆえにまだ少女のようだ。が、羽織った上着の下から見えるビキニ姿からは、どこかに色っぽさが見え隠れする不思議な感じだった。
驚いたのは勇夫とレソフィックもだ。誰だあれ?まさかナンパ?
その親しげな雰囲気にちょっと押された美女は、少々口篭った。
「ほ、本当におさななじみ?久々の再開なの?」
『ユカリ』が答える。
「3年ぶりでース。大人っぽくなったってほめられちゃった、てへ?」
男どもから「かわいー!」の声が上がる。
しかしこれで大人っぽくなったということは、3年前はどんだけ子供だったんだ?
「許婚だって噂だけど」
「ああ、小さい頃の約束だったんだけど、今会ったらもう、惚れ直しちゃって・・。あは、もう1回約束しちゃった!きゃー」
裕美子の変容ぶりに一段と引きつるアロン。これはこっちが長く持たんと思い、逃走を図る。
「わ、分かっただろ、美女。ということだからあきらめろ!」
「ごめんね、話は聞いたけど、あきらめてね!」
「行くぞ、ユカリ!」
ぶわっとアクセルあけてUターンしようとした。
すると『ユカリ』がアロンの肩越しに向うを指さして言った。
「アロン君、あそこまで行こう、あの岬!二人っきりで!」
またまた唐突なセリフを聞いて驚いたアロンは、アクセルを開けすぎてしまった。バイクはドリフト状態になる。
『まずい!小泉振り落としちゃう!』
しかし裕美子は絶妙に体重をずらしてバランスを取り、派手にドリフトしたバイクから落ちることなく、2人はさっそうと走り去って行った。
ぼーぜんと立ちすくむ美女。
ハウルは感心していた。
「すご・・。さすがアロンの彼女っつうか」
「かわいかったね・・あの子。アロン君、ちょっとロリコン趣味かな」
クリスティンも率直に感想を言う。
カーラも圧倒された感じで無言である。
シャノンはなぜか顔を赤らめていた。
「かわいいかったー」
「誰?あれ」「さあ・・」とレソフィックと勇夫。
次回「夏のエピソード後編(8):ナニモノ?」へ続く!
前回のお話「夏のエピソード後編(6):水中騎馬戦」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
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<夏のエピソード後編(7):ユカリ>
みんな昼飯を食っている頃。宿の裏手でアロンと裕美子は落ち合った。
裕美子はアロンに買ってもらった水着に着替えている。それもなんとビキニである。
西洋人に比べたらそりゃボリューム感は及ばないが、意外と着やせするのか水着のマジックか、ちゃんと胸の谷間も見せて、不思議な色っぽさがあった。
「ごめんな・・なんか迷惑かけてるね、俺」
「気にしないでください。今アロン君は『ユカリ』さんと久しぶりの再会で幸せな状態なんでしょ?」
「・・・メガネかけてないよ、その『ユカリ』さんは」
おさななじみの名前は『ユカリ』と裕美子が命名したのだ。
「こうですか?」裕美子はメガネを取った。
なんでメガネにするんだろう、と思った。
「うん、いいね」
髪を濡らしながら裕美子が聞く。
「どんな性格ですか?『ユカリ』さん」
「え?・・明るくて元気な子・・かな」
「それがアロン君の理想の子ですか?・・私とは全然違いますね」
「そうかな・・」
裕美子は髪を濡らして櫛で整えると、アクセントに赤いピン止めで左の前髪をとめた。
ストレートになった髪は背中の中頃まで届いていた。
「似合う?」
「か、かわいい、中学生みたい」
「ちゅう・・・、やめようかしら」
「いいよいいよ、すごく似合ってるし」
ばるんばるんとバイクで二人乗りして美女達の待つところへ着いた。その音にダーニャが気付く。
「あ、来たよ、アロン君」
美女が額に手をかざしてそれを見た。「誰か乗っけてるね、ちゃんと」
アロンは美女達の前までバイクを持ってきた。
「おまたせ。おさななじみのユカリだよ」
「はぁい、アロン君が世話になってるね、ユカリでーす。よろしくね!」
アロンが引きつるほどの明るい声で、アロンの後ろで手を振ってあいさつする『ユカリ』だった。
うわあっと居合わせたみんながざわめく。
それは背が小さいがゆえにまだ少女のようだ。が、羽織った上着の下から見えるビキニ姿からは、どこかに色っぽさが見え隠れする不思議な感じだった。
驚いたのは勇夫とレソフィックもだ。誰だあれ?まさかナンパ?
その親しげな雰囲気にちょっと押された美女は、少々口篭った。
「ほ、本当におさななじみ?久々の再開なの?」
『ユカリ』が答える。
「3年ぶりでース。大人っぽくなったってほめられちゃった、てへ?」
男どもから「かわいー!」の声が上がる。
しかしこれで大人っぽくなったということは、3年前はどんだけ子供だったんだ?
「許婚だって噂だけど」
「ああ、小さい頃の約束だったんだけど、今会ったらもう、惚れ直しちゃって・・。あは、もう1回約束しちゃった!きゃー」
裕美子の変容ぶりに一段と引きつるアロン。これはこっちが長く持たんと思い、逃走を図る。
「わ、分かっただろ、美女。ということだからあきらめろ!」
「ごめんね、話は聞いたけど、あきらめてね!」
「行くぞ、ユカリ!」
ぶわっとアクセルあけてUターンしようとした。
すると『ユカリ』がアロンの肩越しに向うを指さして言った。
「アロン君、あそこまで行こう、あの岬!二人っきりで!」
またまた唐突なセリフを聞いて驚いたアロンは、アクセルを開けすぎてしまった。バイクはドリフト状態になる。
『まずい!小泉振り落としちゃう!』
しかし裕美子は絶妙に体重をずらしてバランスを取り、派手にドリフトしたバイクから落ちることなく、2人はさっそうと走り去って行った。
ぼーぜんと立ちすくむ美女。
ハウルは感心していた。
「すご・・。さすがアロンの彼女っつうか」
「かわいかったね・・あの子。アロン君、ちょっとロリコン趣味かな」
クリスティンも率直に感想を言う。
カーラも圧倒された感じで無言である。
シャノンはなぜか顔を赤らめていた。
「かわいいかったー」
「誰?あれ」「さあ・・」とレソフィックと勇夫。
次回「夏のエピソード後編(8):ナニモノ?」へ続く!
前回のお話「夏のエピソード後編(6):水中騎馬戦」
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裕美子変化の最後を飾るのはめちゃくちゃ明るい性格の演技でした。
それにしても2枚目のイラスト、描いたときは色塗るのやめようと思いました。なにせ500niceの時以上、1枚の中に12人もいるんですもの。これでも登場してない人が、1枚目のアロンと裕美子除いてもあと4人もいるんですから。Ainoさんが色塗らなかった気持ちがわかりますね。
そして3枚目のイラスト、覚えてますか?2ヶ月前の今年のゴールデンウィーク、5月2日に載せたやたらと時間がかかったという「イラスト-夏のエピソード」です。そう、今回のシーンのだったんですね。実は裕美子のメガネ取った姿、このときに初公開していたのです。髪形も変わってたから裕美子だと気付いた人はまずいなかったと思いますが。
by TSO (2010-07-16 22:01)
裕美子だと絶対気づかないですよね(笑)
それにしても、これだけのイラスト描けるのスゴイです~!
特に3枚目なんか素晴らしいと思います(^-^)
by ケンケン@ (2010-07-17 18:21)
やまさん、xml_xslさん、copperさん、ヒロさん、まこ爺さん、ケンケン@さん、HAtAさん、niceありがとうございます。
ケンケン@さん、いつもコメントありがとうございます。ちょっと褒めすぎです。(*^^*)
3枚目で大変だったのはなによりバイクでしたね~。それとその後小説の方も修正加筆してますから、イラストのところに戻れなくならないよう気を使うこととか。
しかし5/2記事は皆さんG/Wで忙しかったようで、通常の記事より閲覧数が少なく、そもそもこんなイラストあったこと自体あまり知られてないんじゃないかと。
by TSO (2010-07-17 22:49)