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<スキー旅行(2):バスもハウルが手配した> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第181回
<スキー旅行(2):バスもハウルが手配した>


「バス来たよー」

美女が手配したハウルに感心しきりだった。

「これでスキー場直行?うちらの、この片いなかの駅まで来てくれるなんてすごいね」
「いえネ、本当の集合は都会の駅だったんだけど、ルート聞いたら、ミシェルによるとすぐそこのインターで高速に乗るんですって。それじゃてんで寄ってもらうように頼んだの」
「まったくハウルの交渉力には恐れ入るよ」

ミシェルも舌を巻いていたが、ハウルをよく知るクリスティンは

「たぶん、怖いもの知らないだけと思うけど」

と、ハウルのストッパーらしいコメントをした。

ここでようやく出番の回ってきたアロンと裕美子。このメンバーが揃うとすっかり目立たなくなってしまう本編の主人公達だった。たぶんすぐみんなに埋もれるだろう・・

「裕美子、大荷物は俺が持つよ」
「ありがとう。それじゃ車内に持ち込むの、わたし持ちます」

勇夫がまたでっかく冷やかし反応する。

「げー、見せつけやがって。もしかしてカップルってお前らだけ?」

アロンとカーゴルームに入れる大荷物をかついでいたレソフィックが苦笑いしながら言った。

「クリスティンは俺捨てて、小泉の弟になびいちゃったからなあ」

何を入れているのか、家出のような荷物を引きずっていたクリスティンが飛び上がる。

「レソフィックさん!ああ!ごめんなさい。でもお友達に変わりないですから!じゃ、旅行中はよかったらエスコートしてください」

というと、クリスティンはレソフィックと腕を組んだ。そして「はいっ」と言うと、レソフィックのもう片方の手に、例の家出荷物の肩ひもを預けた。あまりうれしそうな顔をしていないレソフィックに、あの萌え萌えの笑顔を振りまいて、きゅっと組んでいる腕に抱きついた。
腕は大きな胸の谷間に包まれている。意識してやってるんなら相当の悪魔だが、まだ有効な武器として認識せずに使っていることを知っているレソフィックは、ふうっと顔を和らげると、素直なクリスティンに身を任せることにした。
一方、それを見たカーラはびっくりする。なにしろ自分ができないスキンシップを目の前でこともなげにやるのだ。

「ク、クリスティン・・大胆ねえ」
「え?なんで?」

まったく屈託ない顔である。

「カーラさん、お国どこでしたっけ?わたしの国はあんまりスキンシップのコミュニケーションないからわかるんだけど・・」と裕美子。
「わ、悪かったわね。オセアニアだけど、なぜかそういう環境じゃなかったのよ!」

ハウルがバスの横で叫ぶ。

「おーい、早く乗ってよー」



バスはなぜか他に乗客がいなく、貸切状態であった。
シャノンが感激する。

「ハウル、すごーい。どうやったらこんな手配できるの?もしかしてバスジャック?」

一瞬みんなの顔がマジになる。乗降口を登っていたアンザックの足が止まった。

「馬鹿なこと言わないの!どういうわけか私らだけなのよ。だからバスもこんな片いなかの駅まで直接来てくれたんなけどね」

入り口で止まって邪魔なアンザックを、押し込むのでなく引きずり下して先に乗り込んだハウルは、紙袋を運転手に差し出した。

「はい、運転手さん、差し入れ」

紙袋には、事前にみんなから1カレントずつ集めたお金で買ったおつまみや缶コーヒーなどが入っていた。
運転手のおじさん、思わず顔がほころぶ。

「おほ、お嬢ちゃんありがとう」

これを見てシャノンが

「あ、そうか、しまったー。そういうのは私にやらせてほしかったなー」

と、おじさんとの接触に失敗したのを悔やしがった。
しかしハウルもタダではやらない。

「運転手さん、ぶっ飛ばしてね!」

これだからこの後バスは追い越し車線しか走らなかったのである。


勇夫はバスに乗り込むと、一番後ろへ突進、横に長い椅子に陣取った。

「わははは。やっぱここだよなあ!」

ウォルトが
「あ、俺そこ取ろうと思ってたのに。横になって寝ようとしてたんだぞ」
と奥に向かいながら言うと、
「ナニ言ってんだ、一番後ろの席ははしゃぐ席って決まってんだろ?」
と勇夫は靴を脱いで椅子に乗っかった。

レソフィックはクリスティンと一緒にバスに乗ると、
「で、俺は隣に行ってもいいのかな?」
と聞いた。

「も、もちろんですよ。どうぞどうぞ・・」

きちんと席に座るみんなにハウルが、
「ガラガラなんだから、みみっちくくっつきあって座ることないわよ。いっぱい席使っちゃいなよ」
と言うと、美女が
「ありがたい。後ろ気にせずリクライニングできるわー」
と倒せるだけ椅子を倒した。

しかし裕美子はアロンにくっついてバスに乗ると
「と、隣でも・・いいですか?」
とアロンの顔を見る。
アロンは顔を少し赤らめて答えた。
「い、椅子の向き変えて、向かい合わせってのもできるぜ」

するとアンザックが、
「え?そんなこともできんの?あ、ほんとだ、特急電車の席みたい」
「そいつはいいや。足投げ出せるじゃん」
とジョンも椅子を向かい合わせにした。
一番後ろからそれを見た勇夫が
「あ、そっちの方がいいなあ。トランプとかやろうぜ。ウォルト、一番後ろ使ってもいいぞ」
と言って椅子の上を渡り歩きながら前に移動してきた。そのジョロウグモのような勇夫にハウルが思わず注意する。

「勇夫テンション高すぎ!いつ寝る気?夜行バスなんだよ」

「私、運転手のおじさんの後ろにする。おじさん、寝ないように話し掛けてあげるね」
シャノンは一番前に陣取った。

やっぱりわれらが主人公は目立つことなかった。


次回「スキー旅行(3):ウォルトvsイザベル」へ続く!

前回のお話「スキー旅行(1):宿はハウルが取った」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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りたーむさん、K-STYLEさん、ヒロさん、zeroさん、kuzeさん、bitさん、くぼたんさん、(。・_・。)2kさ、あいか5drrさん、こさぴーさん、xml_xslさん、takemoviesさん、niceありがとうございます。
by TSO (2011-02-19 21:45) 

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