<入寮(1):荷造り> [片いなか・ハイスクール]
東日本大震災被災地がんばれ!
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「片いなか・ハイスクール」連載第195回
<入寮(1):荷造り>
裕美子のお父さんは来週転勤先のアカタ市へ引っ越すことになった。お母さんと中学生のひろきも一緒に行く。裕美子は分校の寮へ入ることにし、分校へ通い続けることが決まった。
裕美子の家はてんてこ舞である。引っ越し先探し、ひろきの転入手続き、裕美子の入寮手続き。その週末は引っ越しのための荷作りである。
荷造りの手伝いのため、裕美子の家へアロン、レソフィック、勇夫、クリスティン、ハウル、カーラが集まった。
来るなりクリスティンが泣いてひろきにすがりつく。その大きな胸に顔が埋まったひろきを見て、お父さんも赤面する。
「ひろき君、私頻繁に連絡するから、ぜったい他の子の誘惑に負けちゃだめよ!」
「でも遠距離恋愛って、やっぱり難しいのよねー。近くにいる子にはかなわないのよ」
「ハウルのばかあ!!」
相変わらず無遠慮なハウルを、クリスティンを慰めながらカーラが叱り付けた。
するとひろきが心に温めていた自案を明かした。
「俺、分校受験しようと思うんだ。ねえちゃん達が高3のとき俺も間に合うもん」
初耳の両親がびっくりする。
「おまえも分校へ?どこから通うんだ?それにもっと勉強しないと受からないぞ」
「通うのはユミ姉みたいに寮入ればいいだろ。ユミ姉と同じ遺伝子が少しでも俺にもあるなら、もう少し成績上がる可能性あるだろうし」
クリスティンがハウルを突き飛ばして駆け寄った。
「わかった、ひろきくん!私も勉強応援する。手伝うから!」
そして大きな胸を揺らしながらクリスティンがひろきの手をとると
「高3になって、もっと魅力的になったお姉さんが待ってるからね。頑張ってね!」
と言って潤んだ目でひろきに微笑んだ。
それを見て一層顔を赤くしたお父さんが感心する。
「やるなあ、ひろき」
裕美子はあきれたように嘆いた。
「ひろき、動機が不純だわ・・」
大勢のおかげで荷作りは早く済んだ。
お父さんとお母さんが段ボール箱をテーブルに冷たいものを並べて、楽しそうに後片付けしている子供達を呼んだ。
「みんなご苦労さん。助かったよ、ありがとう。裕美子にこんな友達がいるなんてなあ」
「ほんとね。安心して裕美子を預けられるわ」
友達代表としてカーラが答えた。
「アロン君除いて、暇なだけです。アロン君は裕美子を助ける義務があるもんね」
お父さんはアロンをしげしげと見た。裕美子が注意に入る。
「お父さん失礼ですよ、アロン君に。こんなに一生懸命働いたのに、何疑ってるの?」
「いや、そんなつもりじゃないよ。裕美子いい人見つけたな」
それを聞いてハウルが喜んだ。
「あー、ご両親公認ってことは・・」
勇夫もひろきの肩を組んで冷やかす。
「ほらあ、ひろき、やっぱりお前の義兄になるぞ、こいつ」
裕美子の父親が焦った。
「そ、そこまでは言ってないぞ。・・みんな夕方まで大丈夫かい?お礼に夕食をご馳走するよ」
ハウルが勇夫を横目で見ながら
「この男ども、半端じゃなく食べるからやめた方がいいと思いますよ」
と言った。
勇夫も負けじと応対する。
「この女ども、料理できないもんだから食うの専門で、男以上に食べるんですよ。やめた方がいいですよ」
火花を散らす2人。
「まあまあ、それは気にしなくていいよ」
しかしアロンとレソフィックは遠慮した。
「でもこの人数だし・・な」
「まだ夕方までだいぶあるし、今日のところは引き上げようか」
「アロン君達、一食浮きますよ。いいの?」
ちょっと名残惜しそうに裕美子が言った。
「大丈夫だって」
無理強いしてもつまらんと思った裕美子の父は
「そうかい?じゃあまた改めてお礼するよ」
と今日は引き下がることにした。
引き上げることになったところで、アロンは裕美子に言った。
「寮へ引っ越すのは今度の火曜だっけ。学校終わったら荷物運ぶの手伝うよ」
「ありがとう。でも寮に持ち込むのはそんなに量ないから。家具類は備え付けみたいですし」
「手荷物だけだったとしても手伝うから」
次回「入寮(2):寮の様子」へ続く!
前回のお話「3学期(3):転校の行方」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
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「片いなか・ハイスクール」連載第195回
<入寮(1):荷造り>
裕美子のお父さんは来週転勤先のアカタ市へ引っ越すことになった。お母さんと中学生のひろきも一緒に行く。裕美子は分校の寮へ入ることにし、分校へ通い続けることが決まった。
裕美子の家はてんてこ舞である。引っ越し先探し、ひろきの転入手続き、裕美子の入寮手続き。その週末は引っ越しのための荷作りである。
荷造りの手伝いのため、裕美子の家へアロン、レソフィック、勇夫、クリスティン、ハウル、カーラが集まった。
来るなりクリスティンが泣いてひろきにすがりつく。その大きな胸に顔が埋まったひろきを見て、お父さんも赤面する。
「ひろき君、私頻繁に連絡するから、ぜったい他の子の誘惑に負けちゃだめよ!」
「でも遠距離恋愛って、やっぱり難しいのよねー。近くにいる子にはかなわないのよ」
「ハウルのばかあ!!」
相変わらず無遠慮なハウルを、クリスティンを慰めながらカーラが叱り付けた。
するとひろきが心に温めていた自案を明かした。
「俺、分校受験しようと思うんだ。ねえちゃん達が高3のとき俺も間に合うもん」
初耳の両親がびっくりする。
「おまえも分校へ?どこから通うんだ?それにもっと勉強しないと受からないぞ」
「通うのはユミ姉みたいに寮入ればいいだろ。ユミ姉と同じ遺伝子が少しでも俺にもあるなら、もう少し成績上がる可能性あるだろうし」
クリスティンがハウルを突き飛ばして駆け寄った。
「わかった、ひろきくん!私も勉強応援する。手伝うから!」
そして大きな胸を揺らしながらクリスティンがひろきの手をとると
「高3になって、もっと魅力的になったお姉さんが待ってるからね。頑張ってね!」
と言って潤んだ目でひろきに微笑んだ。
それを見て一層顔を赤くしたお父さんが感心する。
「やるなあ、ひろき」
裕美子はあきれたように嘆いた。
「ひろき、動機が不純だわ・・」
大勢のおかげで荷作りは早く済んだ。
お父さんとお母さんが段ボール箱をテーブルに冷たいものを並べて、楽しそうに後片付けしている子供達を呼んだ。
「みんなご苦労さん。助かったよ、ありがとう。裕美子にこんな友達がいるなんてなあ」
「ほんとね。安心して裕美子を預けられるわ」
友達代表としてカーラが答えた。
「アロン君除いて、暇なだけです。アロン君は裕美子を助ける義務があるもんね」
お父さんはアロンをしげしげと見た。裕美子が注意に入る。
「お父さん失礼ですよ、アロン君に。こんなに一生懸命働いたのに、何疑ってるの?」
「いや、そんなつもりじゃないよ。裕美子いい人見つけたな」
それを聞いてハウルが喜んだ。
「あー、ご両親公認ってことは・・」
勇夫もひろきの肩を組んで冷やかす。
「ほらあ、ひろき、やっぱりお前の義兄になるぞ、こいつ」
裕美子の父親が焦った。
「そ、そこまでは言ってないぞ。・・みんな夕方まで大丈夫かい?お礼に夕食をご馳走するよ」
ハウルが勇夫を横目で見ながら
「この男ども、半端じゃなく食べるからやめた方がいいと思いますよ」
と言った。
勇夫も負けじと応対する。
「この女ども、料理できないもんだから食うの専門で、男以上に食べるんですよ。やめた方がいいですよ」
火花を散らす2人。
「まあまあ、それは気にしなくていいよ」
しかしアロンとレソフィックは遠慮した。
「でもこの人数だし・・な」
「まだ夕方までだいぶあるし、今日のところは引き上げようか」
「アロン君達、一食浮きますよ。いいの?」
ちょっと名残惜しそうに裕美子が言った。
「大丈夫だって」
無理強いしてもつまらんと思った裕美子の父は
「そうかい?じゃあまた改めてお礼するよ」
と今日は引き下がることにした。
引き上げることになったところで、アロンは裕美子に言った。
「寮へ引っ越すのは今度の火曜だっけ。学校終わったら荷物運ぶの手伝うよ」
「ありがとう。でも寮に持ち込むのはそんなに量ないから。家具類は備え付けみたいですし」
「手荷物だけだったとしても手伝うから」
次回「入寮(2):寮の様子」へ続く!
前回のお話「3学期(3):転校の行方」
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by TSO (2011-04-28 21:01)