＜入寮（４）:もう一人の１年生＞：Right World：SSブログ

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＜入寮（４）:もう一人の１年生＞　[片いなか・ハイスクール] [編集]

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「片いなか・ハイスクール」連載第198回
＜入寮（４）:もう一人の１年生＞

２０時頃、ドアがノックされ、２年生２人と１年生が１人入ってきた。

ちなみに女子寮生は裕美子を除いて３年生１人、２年生５人、１年生１人の全７人。
３年生はもう卒業を待つばかりなので、２年生が実権を握っている。やってきた２年生のうち、ちょっと小太りのがリーダー格だった。１年生はＢ組の生徒で、裕美子に劣らないほど学校で目立たない子だった。
リーダー格のが話し掛けてきた。

「夕飯おいしかったわ。あいつに任せると貧相なのしか出てこないから、今日はがっかりしてたんだけど、思いがけない誤算だったわ。あんた料理うまいんだね」
「・・お口に合って、よかったです」
「そういえばお菓子箱の中身少なくなってたわ。補充しといてよ。でも小泉さんが調理当番になれば、あそこのお菓子の減りも鈍って、あんたの財布も助かるわね」

とリーダー格はＢ組の１年生に向って言った。つまりお菓子は貧相な食事の穴埋めを主とし、しかもその補充はＢ組の１年生が自費でやっているらしい。
続いてもう一人の２年生はポケットからたばこを取り出し、火を着けようとした。

「ちょっちょっちょと待って下さい、それはよくないです」
「なに、あんた。固い奴ね。生徒会じゃあるまいし」
「生徒会委員です」

みんなが一瞬たじろいだ。
しかしたばこを取り出した２年生がすぐに平気な顔で返した。

「へー、そんなまっとうなのがここに来るとはね。・・ちくる気？」
「・・あなたが自己管理の中でする分には、干渉しないってことにしてもいいですけど、みんなの前では受動喫煙の影響あるし、ここはわたしの部屋ですから、ここではよして下さい」
「ここもともと喫煙所として使ってたのよね。そこにあんた越してきたのよ」
「ここはやめてください。灰皿だってないですよ」
「ああ、そういえばこの部屋の灰皿どこいったのかしら」
「寮管がどっかしまったと思うよ」

『管理人さん公認なの？・・学校管理してないのかしら、ここ・・』
裕美子は眉をひそめた。

「とにかくさあ、部活とかないときは夕食当番、あんたに頼むわあ。あんたもお願いしといた方がいいんじゃない？」

リーダー格は最後はＢ組の１年生に向かって言った。その１年生は小さな声で懇願した。

「お願いね。食材の買い物とかはやってもいいから・・。食材費は寮からでるの」

そりゃそうだろう。自分で作る上にその食費まで自分持ちでは、自炊宿と変わりない。

「すみませんけど、明日は同好会があるので、食事当番の時間には寮に戻ってこれないです」
「じゃあ、明日の当番はあんただね」

と小太りの２年生はＢ組１年生に言い放ち、

「じゃ、仲よくやろうよ」

と言って引き上げていった。
Ｂ組の１年生はまだ残っていた。

「どうしよう・・・何作ったらいいのか・・」

肩をすぼませて本当に困った様子である。

「いつも当番に当たったときはどうしてるんですか？」
「・・・カップ麺とか・・」

さすがに裕美子もこれには引いた。放っておいたら明日の晩は自分もカップラーメンをすすることになる。そこまで寮管がノータッチとは。

『このままじゃアロン君達にも及ばない自炊生活になるわ・・・』
いや、むしろ料理慣れしたアロン達の方がいいものを食べている。

「えっと、お名前なんでしたっけ？」
「カミラ」
「カミラさん、同じ麺類ならパスタにでもしません？」
「ああ、カップパスタもあったわね」
「ち、違います。パスタは自分で茹でるの。ソースは缶詰のできてるのを鍋に開けて温めるだけだから」
「簡単にできる？」
「簡単ですよ。手順を書いておいてあげます」

と裕美子はノートに書きながら説明した。

「パスタは一人１００ｇ目安にして、少し多めにすると８人だから１Ｋｇ買いましょう。ソースは１缶で３人分として３缶。中くらいのお鍋に移して弱火で暖めます。大鍋にお湯沸かして塩をこれっくらい入れて、沸騰してからパスタ入れて、袋に書いてある時間茹でたらお皿にとって、ソースかけて終わり。大丈夫ですよね？」
「うん、これくらいならできそう・・・ありがとう」

次回「入寮（５）:改善要求」へ続く！

前回のお話「入寮（３）:食事当番」
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