<ダーニャの保健体育(1):1日遅れのバレンタイン> [片いなか・ハイスクール]
東日本大震災被災地がんばれ!
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「片いなか・ハイスクール」連載第229回
<ダーニャの保健体育(1):1日遅れのバレンタイン>
2月15日 月曜日。
バレンタインの翌日であるが、肝心の日が日曜だったこともあり、男共はこの日もまだ殺気立っていた。
いつも朝は早いチャンが教室へ向かっていると、向こうからやってきたのはアンザックだ。本来ならこの時間にはまだいない人間である。
「おはよう。今日は早いね」
「や、リーダー、おはよう。たまにはなー」
配布物があるからと先生に呼ばれて職員室から戻ってくるときも、またもやアンザックにあった。
「あれ、どうしたんだい?なにうろついてるの?」
「わ、わははは。別に・・」
と、そこに向こうからやってきたのはハウルとクリスティンだった。
「あ、リーダー、おはよ~」
「やあ、ハウル、クリスティンおはよう」
ハウルはリーダーの前で立ち止まると、意味ありげに上目遣いに見上げて肩をすぼませて言った。
「リーダー・・、後でちょっとあたしの席に来てくれる?」
今敏感な状態のアンザックが先に反応して「え?!」と振り返ると、そのまま耳をダンボにした。
「これ教室に持っていくところなんだ。そしたら行くよ。でもホームルームまであまり時間ないかな?」
「みんな来てるかな・・揃ってからの方がいいから・・。あたし呼ぶから、そしたら来てぇ」
リーダーの顎をなでてハウルは歩いていった。クリスティンもニッコリと微笑みを投げる。リーダーちょっと顔が赤くなった。
盗み聞きしていたアンザックが『ええー?!』という顔でつっ立っているところにハウルが到達すると、
「おっはよー!」
とでかい声をあげてバチン!とアンザックの背中をひっぱたいた。おー、いい音だ。
「ぎゃー!」
「まあ、下品な声・・」
ちょうど通りかかったA組の女子が3人、眉をしかめながら通過した。アンザックの評価は激減である。
「ハ、ハウル~、ひでえよ・・」
涙目のアンザックだった。
カーラがやや遅めにやってきたので、ハウルはホームルームの後にチャンを呼ぶことにした。
ドジ担任が教室を出て行ったところで、ハウルが立ち上がった。ちょうどチャンが振り向いたので、ハウルは手でおいでおいでと招いた。ハウルの席にはクリスティン、カーラ、そして裕美子が集まってきた。
「えっと・・、なんだい?」
「リーダー、何番か選んで」
ハウルはあみだくじの書いてある紙を取り出して指さした。選択肢は3つあった。
「何する気だい?1番でいいよ」
「1番?ちゃーんちゃっかちゃーん」
楽しそうにあみだくじの線をたどるハウルに不安気なリーダーと、何をしてるんだろうという顔のハウル以外の女の子達。
「あははは!リーダー、くじ運ないわね~」
「え?」
ハウルがかばんから箱を取り出した。
「リーダーにみんなからバレンタインのチョコあげまーす」
「え、え?」
「裕美子から渡しまーす。ただしこのセリフで」
下の方が折りたたまれていたあみだくじの紙を全部広げると、チョコの箱と一緒にそれを裕美子に手渡した。カーラとクリスティンも覗き込む。そしたらぷぷっと笑った。そこには渡すときのセリフや態度が指示してあったのだ。
くすくす笑う三娘に、裕美子だけはメガネ越しでも残念そうな顔をみせて、
「もう・・、リーダーなんでこんなの選んじゃうの?」
とリーダーにつぶやいた。
チョコもらえると聞いて一瞬喜んだリーダーだったが、すぐに不安が入り混じった奇妙な顔になった。
裕美子が上を向いて目を閉じて役作りの準備をしている。そして・・・
メガネ越しにキッツい目線を投げ下すと、放り出すように箱を突き出し、ぶっきらぼうに言い放った。
「勘違いしないで。これ、『義理』だから」
「は、はいいぃ!?」
カーラとハウルが寄り添って大笑いしている。横にいたシャノンまで笑っていた。裕美子はしゃがんで机の角に頭を押し付けて「ごめんね、リーダーごめんね」と必死に謝っている。
そこへ
「おら!授業始めるぞ、席着け!」
と次の授業の先生が入ってきた。
リーダー、礼を言う頭の切り替えもできぬまま背筋を震わせて自分の席へ帰って行った。
席に着いたとき、チョコの箱をちょっと開けた。するとメッセージカードが入っていた。ハウルが書いたものだった。
『リーダーのことだから変なセリフで受け取ったかもしれないけど、私達みんなリーダーのこと好きだからね。早く本命見つかるよう応援してるよ(ハート)』
チャンは目を閉じると、ようやく本当に安心した笑みを口元に見せ、いつも遊びに誘ってくれる騒々しい女友達に心の中で感謝した。
と、ちょんちょんとシャノンに背中を突っつかれた。振り向くと小さな紙片を渡された。
『お礼はホワイトデーに。ハウル』
次回「ダーニャの保健体育(2):裕美子の対策」へ続く!
前回のお話「バレンタイン(9):やっちゃいました」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
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「片いなか・ハイスクール」連載第229回
<ダーニャの保健体育(1):1日遅れのバレンタイン>
2月15日 月曜日。
バレンタインの翌日であるが、肝心の日が日曜だったこともあり、男共はこの日もまだ殺気立っていた。
いつも朝は早いチャンが教室へ向かっていると、向こうからやってきたのはアンザックだ。本来ならこの時間にはまだいない人間である。
「おはよう。今日は早いね」
「や、リーダー、おはよう。たまにはなー」
配布物があるからと先生に呼ばれて職員室から戻ってくるときも、またもやアンザックにあった。
「あれ、どうしたんだい?なにうろついてるの?」
「わ、わははは。別に・・」
と、そこに向こうからやってきたのはハウルとクリスティンだった。
「あ、リーダー、おはよ~」
「やあ、ハウル、クリスティンおはよう」
ハウルはリーダーの前で立ち止まると、意味ありげに上目遣いに見上げて肩をすぼませて言った。
「リーダー・・、後でちょっとあたしの席に来てくれる?」
今敏感な状態のアンザックが先に反応して「え?!」と振り返ると、そのまま耳をダンボにした。
「これ教室に持っていくところなんだ。そしたら行くよ。でもホームルームまであまり時間ないかな?」
「みんな来てるかな・・揃ってからの方がいいから・・。あたし呼ぶから、そしたら来てぇ」
リーダーの顎をなでてハウルは歩いていった。クリスティンもニッコリと微笑みを投げる。リーダーちょっと顔が赤くなった。
盗み聞きしていたアンザックが『ええー?!』という顔でつっ立っているところにハウルが到達すると、
「おっはよー!」
とでかい声をあげてバチン!とアンザックの背中をひっぱたいた。おー、いい音だ。
「ぎゃー!」
「まあ、下品な声・・」
ちょうど通りかかったA組の女子が3人、眉をしかめながら通過した。アンザックの評価は激減である。
「ハ、ハウル~、ひでえよ・・」
涙目のアンザックだった。
カーラがやや遅めにやってきたので、ハウルはホームルームの後にチャンを呼ぶことにした。
ドジ担任が教室を出て行ったところで、ハウルが立ち上がった。ちょうどチャンが振り向いたので、ハウルは手でおいでおいでと招いた。ハウルの席にはクリスティン、カーラ、そして裕美子が集まってきた。
「えっと・・、なんだい?」
「リーダー、何番か選んで」
ハウルはあみだくじの書いてある紙を取り出して指さした。選択肢は3つあった。
「何する気だい?1番でいいよ」
「1番?ちゃーんちゃっかちゃーん」
楽しそうにあみだくじの線をたどるハウルに不安気なリーダーと、何をしてるんだろうという顔のハウル以外の女の子達。
「あははは!リーダー、くじ運ないわね~」
「え?」
ハウルがかばんから箱を取り出した。
「リーダーにみんなからバレンタインのチョコあげまーす」
「え、え?」
「裕美子から渡しまーす。ただしこのセリフで」
下の方が折りたたまれていたあみだくじの紙を全部広げると、チョコの箱と一緒にそれを裕美子に手渡した。カーラとクリスティンも覗き込む。そしたらぷぷっと笑った。そこには渡すときのセリフや態度が指示してあったのだ。
くすくす笑う三娘に、裕美子だけはメガネ越しでも残念そうな顔をみせて、
「もう・・、リーダーなんでこんなの選んじゃうの?」
とリーダーにつぶやいた。
チョコもらえると聞いて一瞬喜んだリーダーだったが、すぐに不安が入り混じった奇妙な顔になった。
裕美子が上を向いて目を閉じて役作りの準備をしている。そして・・・
メガネ越しにキッツい目線を投げ下すと、放り出すように箱を突き出し、ぶっきらぼうに言い放った。
「勘違いしないで。これ、『義理』だから」
「は、はいいぃ!?」
カーラとハウルが寄り添って大笑いしている。横にいたシャノンまで笑っていた。裕美子はしゃがんで机の角に頭を押し付けて「ごめんね、リーダーごめんね」と必死に謝っている。
そこへ
「おら!授業始めるぞ、席着け!」
と次の授業の先生が入ってきた。
リーダー、礼を言う頭の切り替えもできぬまま背筋を震わせて自分の席へ帰って行った。
席に着いたとき、チョコの箱をちょっと開けた。するとメッセージカードが入っていた。ハウルが書いたものだった。
『リーダーのことだから変なセリフで受け取ったかもしれないけど、私達みんなリーダーのこと好きだからね。早く本命見つかるよう応援してるよ(ハート)』
チャンは目を閉じると、ようやく本当に安心した笑みを口元に見せ、いつも遊びに誘ってくれる騒々しい女友達に心の中で感謝した。
と、ちょんちょんとシャノンに背中を突っつかれた。振り向くと小さな紙片を渡された。
『お礼はホワイトデーに。ハウル』
次回「ダーニャの保健体育(2):裕美子の対策」へ続く!
前回のお話「バレンタイン(9):やっちゃいました」
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by TSO (2011-08-31 22:19)