<改めてカップルで(3):片いなか映画館> [片いなか・ハイスクール]
「片いなか・ハイスクール」連載第121回
<改めてカップルで(3):片いなか映画館>
次の日、昼過ぎに待ち合わせの片いなか映画館の前にアロンは行った。
するとカーラだけじゃなく、なんとチャンと裕美子もいた。
リーダーが時計を見ながら言った。
「よう。時間ぴったりだな」
「こんちゃ。俺は時間厳守な男なんだ。あれ?なんでリーダー達もいるの?」
「ハウルから割引券もらったんだって?それ出所は生徒会長でさ、もともとペアチケットのペアってやつで、2枚あったんだ。1枚僕がもらってね。それで小泉さん誘って待ち合わせてたんだけど。あとの1枚は会長が使うって言ってたのに、そしたらカーラがいたからさ、ちょっとびっくり。ハウル、変な入手の仕方してないだろうな」
アロンとカーラは『あり得なくもない・・・』と、ちょっと心配になった
「アロン君、女の子待たせちゃダメですよ」
そう注意する裕美子は、今日もまた一見中学生のようである。どうもこの人は着飾ろうとするほどに中学生っぽくなっていく。
「は、はぁい。ダイジョブよ、時間通りだし・・」
相変らずぎこちない返事をしているカーラであった。
「ところで何の映画?券には何も書いてないんだけど。土日のこの時間でのみ有効って」
「その時やってるものってことだな」
スクリーンは一つしかない片いなか映画館である。日にちや時間によって映画をこまめに変えて上映するということをしていた。
「今日のこの時間は、アニメとドキュメンタリーの2本立てですって」
貼ってある手書きの本日上映スケジュールを見てカーラが言った。
「なんだ?その組合せ」
2本、3本立て、かつわけのわからない組合せもまた片いなか映画館の特徴だった。
意を解さないアロンに裕美子がもっともらしい答えをする。
「とにかく手に入ったフィルムを手当たり次第上映するんでしょう」
「もしかして、この映画気に入りませんか?」
リーダーが裕美子に聞いた。
「いいえ?普段あまり見ない映画ですし、せっかくですから」
「よかった。じゃ、入りましょうか」
リーダーは裕美子と一緒にシアターへ入っていった。
『俺はカーラと来てるんだよな』
アロンはカーラを探すと、パンフレット売り場のところにいるのを見つけた。
「カーラ、ポップコーンでも買ってこうか。見ながら食べたりする?」
「え?う、うん」
「どっちがいい?普通のとキャラメルのと」
「あ、えっと、・・・どっちでも・・」
アロンはカーラを覗き込んで
「キャラメルかな?甘いの好きそうだし」
と言うと、カーラはうつむいてしまった。
「うん、それでいい・・」
巨大なバケツ状のポップコーンを持ってシアターに入ると、リーダー達はスクリーンを真正面にいい位置を陣取っていた。裕美子が手招きしている。
「いい場所取ったね。横いいの?」
「・・2人きりがいいなら、お好きなところへ」
「せっかく取ってくれたし、いいよね?ここで」
「うん」
「アロン、いいもの買ってきたな。裕美子さんもいりますか?」
「お昼食べていくらも経ってないから、わたしはいらないですけど・・・リーダーは遠慮しなくていいですよ?」
「じゃ、いっか・・」
しかし、甘いキャラメルのいい匂いがただよってくる。リーダーは横目でちらちらしていた。
それに気付いて裕美子がリーダーの袖を引っ張った。
「気になるなら買いに行きましょう。始まったら動けないですから」
「え?あはは。ばれちゃった?恥ずかしいな」
しかし裕美子はじとっとアロンの膝の上のポップコーンを見るとぽそっと言った。
「・・・2人でそれ食べ切れますかね?」
アロンは何を言いたいか感じ取ると、
「確かにこの量ずっとはちょっとくどいんだよね。リーダー、買うなら塩味にしてよ。こっちのもあげるから、いくらか交換しようぜ。いいよね?」
カーラにも一応同意を求めた。
「う、うん。その方が・・楽しめるよね?」
「はい。じゃ、そうしましょう。あと5分少々ですよ、リーダー急ぎましょう」
「あ、はいはい」
リーダー達が立ち去って、ようやくぽつりと2人だけになった。
「はい」
アロンがポップコーンのバケツを差し出す。
「この席でよかった?」
カーラが一つまみしながら答えた。
「う、うん。構わないわよ、ここで。あの2人も気になるし・・」
これはカーラも覗きぐせがあるんだろうか。通路の方を見やるとカーラが言った。
「ユミちゃん、おとなしキャラに見えるけど違うのね。リーダーをリードしてる・・すごいね」
「そうだね」
1本目は海洋ドキュメンタリー映画であった。内容は読者のご想像に任せる。
1本目が終わって、間に休憩が入り、再びシアターに戻るとき、入り口で係員がみんなに飲み物を配っていた。
「試供品なんですけど、よかったらどーぞ。底にある紐を引っ張ると冷却が始まって、およそ1時間後にキンキンに冷えて飲みごろになるそうです」
「1時間後?この映画が終わるころじゃん」
さて2本目は、いなかの雑貨店の娘が、ひょんなことから仲間を連れて魔物退治に出かけるファンタジーアニメ映画。詳しい内容はかっぱちゃんのブログを見るといい。
そんなアニメ映画もそろそろ終わるころ。
「アロン君、これもう飲めるかな」カーラが飲み物の缶をちらつかせた。
「そうだね。もういいんじゃない?うわ、すごい冷たくなってる。霜がおりてるぞ」
それを見てリーダーと裕美子も蓋を開けた。
「すごい冷たくって味がよくわかんない。でも柑橘系の香りね。この映画館、冷房の利きが悪いからぐいぐいいっちゃうわ」
と、カーラは喉で味わうように飲んでいた。
「これ・・もしかして?なんかいやな予感が・・・」
次回「改めてカップルで(4):3人に効き目バッチリ」へ続く!
前回のお話「改めてカップルで(2):各々別行動」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
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<改めてカップルで(3):片いなか映画館>
次の日、昼過ぎに待ち合わせの片いなか映画館の前にアロンは行った。
するとカーラだけじゃなく、なんとチャンと裕美子もいた。
リーダーが時計を見ながら言った。
「よう。時間ぴったりだな」
「こんちゃ。俺は時間厳守な男なんだ。あれ?なんでリーダー達もいるの?」
「ハウルから割引券もらったんだって?それ出所は生徒会長でさ、もともとペアチケットのペアってやつで、2枚あったんだ。1枚僕がもらってね。それで小泉さん誘って待ち合わせてたんだけど。あとの1枚は会長が使うって言ってたのに、そしたらカーラがいたからさ、ちょっとびっくり。ハウル、変な入手の仕方してないだろうな」
アロンとカーラは『あり得なくもない・・・』と、ちょっと心配になった
「アロン君、女の子待たせちゃダメですよ」
そう注意する裕美子は、今日もまた一見中学生のようである。どうもこの人は着飾ろうとするほどに中学生っぽくなっていく。
「は、はぁい。ダイジョブよ、時間通りだし・・」
相変らずぎこちない返事をしているカーラであった。
「ところで何の映画?券には何も書いてないんだけど。土日のこの時間でのみ有効って」
「その時やってるものってことだな」
スクリーンは一つしかない片いなか映画館である。日にちや時間によって映画をこまめに変えて上映するということをしていた。
「今日のこの時間は、アニメとドキュメンタリーの2本立てですって」
貼ってある手書きの本日上映スケジュールを見てカーラが言った。
「なんだ?その組合せ」
2本、3本立て、かつわけのわからない組合せもまた片いなか映画館の特徴だった。
意を解さないアロンに裕美子がもっともらしい答えをする。
「とにかく手に入ったフィルムを手当たり次第上映するんでしょう」
「もしかして、この映画気に入りませんか?」
リーダーが裕美子に聞いた。
「いいえ?普段あまり見ない映画ですし、せっかくですから」
「よかった。じゃ、入りましょうか」
リーダーは裕美子と一緒にシアターへ入っていった。
『俺はカーラと来てるんだよな』
アロンはカーラを探すと、パンフレット売り場のところにいるのを見つけた。
「カーラ、ポップコーンでも買ってこうか。見ながら食べたりする?」
「え?う、うん」
「どっちがいい?普通のとキャラメルのと」
「あ、えっと、・・・どっちでも・・」
アロンはカーラを覗き込んで
「キャラメルかな?甘いの好きそうだし」
と言うと、カーラはうつむいてしまった。
「うん、それでいい・・」
巨大なバケツ状のポップコーンを持ってシアターに入ると、リーダー達はスクリーンを真正面にいい位置を陣取っていた。裕美子が手招きしている。
「いい場所取ったね。横いいの?」
「・・2人きりがいいなら、お好きなところへ」
「せっかく取ってくれたし、いいよね?ここで」
「うん」
「アロン、いいもの買ってきたな。裕美子さんもいりますか?」
「お昼食べていくらも経ってないから、わたしはいらないですけど・・・リーダーは遠慮しなくていいですよ?」
「じゃ、いっか・・」
しかし、甘いキャラメルのいい匂いがただよってくる。リーダーは横目でちらちらしていた。
それに気付いて裕美子がリーダーの袖を引っ張った。
「気になるなら買いに行きましょう。始まったら動けないですから」
「え?あはは。ばれちゃった?恥ずかしいな」
しかし裕美子はじとっとアロンの膝の上のポップコーンを見るとぽそっと言った。
「・・・2人でそれ食べ切れますかね?」
アロンは何を言いたいか感じ取ると、
「確かにこの量ずっとはちょっとくどいんだよね。リーダー、買うなら塩味にしてよ。こっちのもあげるから、いくらか交換しようぜ。いいよね?」
カーラにも一応同意を求めた。
「う、うん。その方が・・楽しめるよね?」
「はい。じゃ、そうしましょう。あと5分少々ですよ、リーダー急ぎましょう」
「あ、はいはい」
リーダー達が立ち去って、ようやくぽつりと2人だけになった。
「はい」
アロンがポップコーンのバケツを差し出す。
「この席でよかった?」
カーラが一つまみしながら答えた。
「う、うん。構わないわよ、ここで。あの2人も気になるし・・」
これはカーラも覗きぐせがあるんだろうか。通路の方を見やるとカーラが言った。
「ユミちゃん、おとなしキャラに見えるけど違うのね。リーダーをリードしてる・・すごいね」
「そうだね」
1本目は海洋ドキュメンタリー映画であった。内容は読者のご想像に任せる。
1本目が終わって、間に休憩が入り、再びシアターに戻るとき、入り口で係員がみんなに飲み物を配っていた。
「試供品なんですけど、よかったらどーぞ。底にある紐を引っ張ると冷却が始まって、およそ1時間後にキンキンに冷えて飲みごろになるそうです」
「1時間後?この映画が終わるころじゃん」
さて2本目は、いなかの雑貨店の娘が、ひょんなことから仲間を連れて魔物退治に出かけるファンタジーアニメ映画。詳しい内容はかっぱちゃんのブログを見るといい。
そんなアニメ映画もそろそろ終わるころ。
「アロン君、これもう飲めるかな」カーラが飲み物の缶をちらつかせた。
「そうだね。もういいんじゃない?うわ、すごい冷たくなってる。霜がおりてるぞ」
それを見てリーダーと裕美子も蓋を開けた。
「すごい冷たくって味がよくわかんない。でも柑橘系の香りね。この映画館、冷房の利きが悪いからぐいぐいいっちゃうわ」
と、カーラは喉で味わうように飲んでいた。
「これ・・もしかして?なんかいやな予感が・・・」
次回「改めてカップルで(4):3人に効き目バッチリ」へ続く!
前回のお話「改めてカップルで(2):各々別行動」
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☆☆ 災害時 安否確認 ☆☆
間に合ったー。
絵を載せたくてがんばってました。いつもより大きい絵アップしてます。
本文内で「おねがい!勇者さま」をそれとなく入れるのは、この章書いた最初っからのことでしたが、かっぱちゃんのところからバナーお持ち帰りしてから、映画館前の場面が頭についちゃって・・・
これ載せてて大丈夫でしょうか?>かっぱちゃん
by TSO (2010-09-02 01:16)
映画、みんな楽しそうでいいなあ~~
「いやな予感」が気になります(笑)
イラストは力作ですね!細かいとこまで良く描けてます~!
人物の服とかもスゴイです。
結構こういうの時間かかるんですよねぇ。
お疲れ様でした(*⌒ー⌒*)
by ケンケン@ (2010-09-03 21:16)
kashimiさん、xml_xslさん、HAtAさん、「直chan」さん、copperさん、ケンケン@さん、ヒロさん、たねさん、niceありがとうございます。
ケンケン@さん、コメントありがとうございます。
なんかいびつですけど、楽しく描けましたヨ。
お気に入りは、たいした絵じゃないけど真ん中のポスター「突撃野郎 Bチーム」。今、新キャストでAチームやってますね。
by TSO (2010-09-04 22:45)
こんばんにゃ(^o^)/
か、かかか、かっぱの勇者さまが映画になってるにゃ~
(゜◇゜*)!?
びっくり~、でもうれしいですにゃ~
いいも悪いも、もうとっても嬉しいです~
リンクありがとうです(T∀T)かんげき!
by K-STYLE (2010-09-05 00:46)
かっぱちゃん、nice&コメントありがとです。
勝手に使ってスミマセンです。でもオッケーみたいでよかった。ほっ。
いつか映画で見てみたいですにゃ。
by TSO (2010-09-05 20:40)