<アロンの誕生日:カーラのプレゼント> [片いなか・ハイスクール]
「片いなか・ハイスクール」連載第124回
<アロンの誕生日:カーラのプレゼント>
9月22日の朝。
チャンはいつもかなり早く登校している。ところが教室に行くとすでに裕美子とアロンがいた。
「ま、この『ユカリ』さんがわたしからの誕生日プレゼントです」
「面白かった。ありがとう」
何やらアロンがやや赤い顔で驚きから覚めたような顔をしている。
「あれ?2人ともどうしたんだい?」
しかし裕美子が手に持っているチェックボードを見てチャンは気付いた。
「あ!今日安全巡視だっけ、しまったあ!また小泉さんにやらせちゃった」
「今日はそれでよかったかも」
アロンがちょっと照れたように言う。
「もう終わりましたよ」
裕美子がチャンに向き直って言った。
「今日アロン誕生日なんだよな。それで覚えとこうと思ってたのに・・すっかり忘れてた!」
「人の誕生日で覚えとこうってのが無理だったんじゃねぇの?」
アロンはそう言うと裕美子の方を見て、
「でも、おかげで小泉に一発芸を誕生日プレゼントに見せてもらったし・・・」と言った。
「へぇ。小泉さん、そんなことするんですか?どんな芸?」
なぜかアロンが慌てて答えた。というのはその一発芸は例のおさななじみの真似だったからだ。
「ああ、いやいや大したことないんだ。『かくしげ』なんてね」
そう言って片手を上にあげて、もう片方の手で脇の下を押さえた。
「そ、そんな下品なことしません」
その日のお昼。ハウルといつものお仲間達は一緒に昼食を取っていた。
食べ終わったところでハウルが小脇に抱えていたバッグをごそごそしながら、みんなに向かってにやにやすると、
「へへー。今日はデザート持ってきたよ。特別製だよ」
と言いだした。
「わあ、うれしい、デザート?」
クリスティンが目を輝かせる。
「カーラにちょっと景気付けにね」
急に名前を言われてカーラは顔を上げた。
「私に?どういうこと?」
「誕プレ、あげるんでしょ?まだあげてないよね」
一方アロン達は、売店の激しい争奪戦からようやく勝ち取ったサンドイッチなどを、外のベンチで食べていた。
食べ終わったころ、カーラが一人でやってきた。
「アロンくーん、ちょっと来て」
「?」
カーラは立ち上がったアロンの手を取ると、向こうへ引っ張っていった。それを見てレソフィックが首をかしげた。
「おんやぁ?カーラらしくないぞ。またドーピングされてないか?」
「なんじゃ?そりゃ」
勇夫やレソフィックが見えなくなるまで離れると、木陰の下まで行って立ち止まった。カーラはくるりと振り向くと
「・・はい、これ」
と包装された箱を差し出した。
「なあに、それ」
「ん?開けてみて」
「開けていいの?」
かさかさと包装をとると紙の箱があって、それを開けるとマグカップが出てきた。
「あ、マグカップだ」
「・・こないだ教室で使うカップ、割っちゃったんだよね。それ、あげる」
「え?これくれるの?なんで?」
「今日・・お誕生日なんだよね?アロン君」
「え?なんで知ってんの?」
「みんなのプロファイルためてる人いるから・・」
『みんなの?ダーニャかな?』
アロンは思い当たる人を思い浮かべていると
「私の誕生日には素敵なプレゼントもらったから、そのお返し・・・。つまんないお誕生日プレゼントでごめんね・・」
と言ってカーラがすっとアロンの目の前に近付いてきた。
「あのときの感動のお返しには程遠いけど・・これで許してね・・」
カーラはアロンのマグカップを持つ腕に出を添えると、かかとを上げて身長差約10cmを埋めた。
そしてそのまま顔を寄せると・・・
「!」
なんとカーラ、唇にキスをした!
すると向うの茂みの影から
「わあ!!」
と驚く聞きなれた声が・・この声はハウルだ。
その声の方に向くと、カーラといつもいる連中、ハウル、クリスティン、裕美子が覗いていた。
「な、なんだおまえら!」
「じ、じゃね。アロン君」
カーラはその集団の方へすごいスピードで走って行くと、みんなをど突いて引っ張っていった。
アロンは唇に手をやる。
「あ、甘!それとアルコールの匂い。ウイスキーボンボンか何か、食ったな。・・・それでカーラの奴、キスなんか・・・」
アロンは赤い顔をしてマグカップを見た。
「酔った勢いでこれも買ったのかな・・?」
みんなを引き連れたカーラ。真っ赤な顔をしている。3分の1はアルコール、残りは恥ずかしさである。
「ハ、ハウル!いつも悪趣味だっての!なんで覗いてんのよ!」
「い、いやあ、驚いたなあ。でもよかったじゃん。ね?」
クリスティンに同意を求める。クリスティンも赤い顔をしている。こちらは3分の1は恥ずかしさ、残りがアルコールである。
「ハウルの持ってきたボンボン、大きかっただけにすごい効き目」
裕美子がほぼ100%アルコールによる真っ赤な顔で、
「ずるいです~、いつもお酒の力借りて・・・。ちゃんと自力でできるようにならなきゃダメです・・・寝ても、いいですか?」
と言うと、ハウルに寄りかかって寝てしまった。
ハウルが一つ残っていたそのお菓子を取り出した。
直径5cm近くある。箱にはアルコール度90%のテキーラ入り特製チョコレートボンボン、製造メーカーは片いなかビバレッジと書いてある。
ハウルはみんなを見回した。みんな赤い顔してる。裕美子に至っては寝てる。
「午後の授業、どうしよっか」
次回「校外展覧会絵画展(1):展覧会委員」へ続く!
前回のお話「改めてカップルで(5):そしてみんな合流」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
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<アロンの誕生日:カーラのプレゼント>
9月22日の朝。
チャンはいつもかなり早く登校している。ところが教室に行くとすでに裕美子とアロンがいた。
「ま、この『ユカリ』さんがわたしからの誕生日プレゼントです」
「面白かった。ありがとう」
何やらアロンがやや赤い顔で驚きから覚めたような顔をしている。
「あれ?2人ともどうしたんだい?」
しかし裕美子が手に持っているチェックボードを見てチャンは気付いた。
「あ!今日安全巡視だっけ、しまったあ!また小泉さんにやらせちゃった」
「今日はそれでよかったかも」
アロンがちょっと照れたように言う。
「もう終わりましたよ」
裕美子がチャンに向き直って言った。
「今日アロン誕生日なんだよな。それで覚えとこうと思ってたのに・・すっかり忘れてた!」
「人の誕生日で覚えとこうってのが無理だったんじゃねぇの?」
アロンはそう言うと裕美子の方を見て、
「でも、おかげで小泉に一発芸を誕生日プレゼントに見せてもらったし・・・」と言った。
「へぇ。小泉さん、そんなことするんですか?どんな芸?」
なぜかアロンが慌てて答えた。というのはその一発芸は例のおさななじみの真似だったからだ。
「ああ、いやいや大したことないんだ。『かくしげ』なんてね」
そう言って片手を上にあげて、もう片方の手で脇の下を押さえた。
「そ、そんな下品なことしません」
その日のお昼。ハウルといつものお仲間達は一緒に昼食を取っていた。
食べ終わったところでハウルが小脇に抱えていたバッグをごそごそしながら、みんなに向かってにやにやすると、
「へへー。今日はデザート持ってきたよ。特別製だよ」
と言いだした。
「わあ、うれしい、デザート?」
クリスティンが目を輝かせる。
「カーラにちょっと景気付けにね」
急に名前を言われてカーラは顔を上げた。
「私に?どういうこと?」
「誕プレ、あげるんでしょ?まだあげてないよね」
一方アロン達は、売店の激しい争奪戦からようやく勝ち取ったサンドイッチなどを、外のベンチで食べていた。
食べ終わったころ、カーラが一人でやってきた。
「アロンくーん、ちょっと来て」
「?」
カーラは立ち上がったアロンの手を取ると、向こうへ引っ張っていった。それを見てレソフィックが首をかしげた。
「おんやぁ?カーラらしくないぞ。またドーピングされてないか?」
「なんじゃ?そりゃ」
勇夫やレソフィックが見えなくなるまで離れると、木陰の下まで行って立ち止まった。カーラはくるりと振り向くと
「・・はい、これ」
と包装された箱を差し出した。
「なあに、それ」
「ん?開けてみて」
「開けていいの?」
かさかさと包装をとると紙の箱があって、それを開けるとマグカップが出てきた。
「あ、マグカップだ」
「・・こないだ教室で使うカップ、割っちゃったんだよね。それ、あげる」
「え?これくれるの?なんで?」
「今日・・お誕生日なんだよね?アロン君」
「え?なんで知ってんの?」
「みんなのプロファイルためてる人いるから・・」
『みんなの?ダーニャかな?』
アロンは思い当たる人を思い浮かべていると
「私の誕生日には素敵なプレゼントもらったから、そのお返し・・・。つまんないお誕生日プレゼントでごめんね・・」
と言ってカーラがすっとアロンの目の前に近付いてきた。
「あのときの感動のお返しには程遠いけど・・これで許してね・・」
カーラはアロンのマグカップを持つ腕に出を添えると、かかとを上げて身長差約10cmを埋めた。
そしてそのまま顔を寄せると・・・
「!」
なんとカーラ、唇にキスをした!
すると向うの茂みの影から
「わあ!!」
と驚く聞きなれた声が・・この声はハウルだ。
その声の方に向くと、カーラといつもいる連中、ハウル、クリスティン、裕美子が覗いていた。
「な、なんだおまえら!」
「じ、じゃね。アロン君」
カーラはその集団の方へすごいスピードで走って行くと、みんなをど突いて引っ張っていった。
アロンは唇に手をやる。
「あ、甘!それとアルコールの匂い。ウイスキーボンボンか何か、食ったな。・・・それでカーラの奴、キスなんか・・・」
アロンは赤い顔をしてマグカップを見た。
「酔った勢いでこれも買ったのかな・・?」
みんなを引き連れたカーラ。真っ赤な顔をしている。3分の1はアルコール、残りは恥ずかしさである。
「ハ、ハウル!いつも悪趣味だっての!なんで覗いてんのよ!」
「い、いやあ、驚いたなあ。でもよかったじゃん。ね?」
クリスティンに同意を求める。クリスティンも赤い顔をしている。こちらは3分の1は恥ずかしさ、残りがアルコールである。
「ハウルの持ってきたボンボン、大きかっただけにすごい効き目」
裕美子がほぼ100%アルコールによる真っ赤な顔で、
「ずるいです~、いつもお酒の力借りて・・・。ちゃんと自力でできるようにならなきゃダメです・・・寝ても、いいですか?」
と言うと、ハウルに寄りかかって寝てしまった。
ハウルが一つ残っていたそのお菓子を取り出した。
直径5cm近くある。箱にはアルコール度90%のテキーラ入り特製チョコレートボンボン、製造メーカーは片いなかビバレッジと書いてある。
ハウルはみんなを見回した。みんな赤い顔してる。裕美子に至っては寝てる。
「午後の授業、どうしよっか」
次回「校外展覧会絵画展(1):展覧会委員」へ続く!
前回のお話「改めてカップルで(5):そしてみんな合流」
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☆☆ 災害時 安否確認 ☆☆
ひっさびさの片いなか・ハイスクールの更新です。
できたてほやほやのイラスト(マンガ?)を入れて。
(時間かかってこれかよというつっこみは・・聞こえないふりします)
カーラちゃん、がんばりました!と思ったら、またドーピングですか。
裕美子も文句言ってますが、のちのちひっかかることになります。
それにしてもいい学校ですね。この子達、停学にならないんでしょうか。
by TSO (2010-09-18 23:12)
nice!&コメント♡ありがとうございました~♪とっても感謝です~ღ(*'-')ღ
by ほちゃ (2010-09-19 00:58)
今回はドキドキの展開でしたね^^
イラストが気合入ってるので、臨場感バッチリでした(o^-')b
テキーラ入りのチョコレートボンボンが笑えました(笑)
by ケンケン@ (2010-09-19 19:14)
こんばんにゃ(・∀・)/
とってもとってもステキな回でした~(゜∀゜*)
ドーピングとはいえ、カーラちゃんがんばったにゃ(・∀・)b
お約束ながらみんなしてのぞいてるのが(>∀<)ひゃっほう!
そしてそして、片いなかビバレッジ(゜∀゜)キタコレ!
と、とてつもないボンボン(テキボン?)なのです~
イラストもいっぱいで、とっても楽しめました~
次回もたのしみ(*・◇・*)~♪
by K-STYLE (2010-09-20 21:53)
ほちゃさん、xml_xslさん、いっぷくさん、ツナさん、ヒロさん、ケンケン@さん、HAtAさん、K-STYLEさん、niceありがとうございます。
ほちゃさん、コメントありがとうございます。
「なに見てんだコノヤロ」って蜂さんに反応しちゃいました。また訪問させていただきますー。
ケンケン@さん、コメントありがとうございます。
イラストの挿入位置はちょっと凝りましたかねー(当社比)。雰囲気が伝わったみたいでよかったです。
かっぱちゃん、コメントありがとうです。
片いなかビバレッジ、とんでもない会社なのです~。
楽しめましたか。それはそれはとってもうれしいです(^^)
でもイラスト添えるのは大変ですにゃ。そんなわけでしばらく文章だけのアップになりそうです。m(_ _)m
by TSO (2010-09-20 23:48)
モルディブTシャツさん、niceありがとうございます。
さて密かに過去記事でネタ公開なんかしてみます。今回は「片いなかビバレッジ」についてです。
このとんでもない会社が小説に登場したのは2010/9/5公開の連載第122回<改めてカップルで(4):3人に効き目バッチリ>です。
そして連載第124回<アロンの誕生日:カーラのプレゼント>でハウルのボンボンとして再登場したわけですが、執筆順でいうと124回の方がずっと前に書きあがっていて、122回を含む「改めてカップルで」の章は最近書き足した物語なのです。でも書き足した中に登場した「片いなかビバレッジ」がすごく面白くて、単なるハウルのお土産だったボンボンを「片いなかビバレッジ」製としたのは122回を書いた後のことでした。
このネタは使えるというわけで、その他にも執筆済みのところで「片いなかビバレッジ」製と書き加えられたところがあります。この先出てきたときは「おお、これかぁ」と思い出していただければと思います。
by TSO (2010-09-24 00:19)