<学内ライブ(3):カーラの憂鬱> [片いなか・ハイスクール]
「片いなか・ハイスクール」連載第137回
<学内ライブ(3):カーラの憂鬱>
その授業が終わったところで、カーラは文化委員会室へ行く用事にレソフィックを付き合わせた。
「今度の学内ライブの参加者募集ポスターができたんだって。私掲示する係なんだけど、手伝ってくれる?」
「なんで俺が?」
「掲示物のことだし、レソフィック君、広報委員だからうってつけでしょ」
「学内ライブに広報委員は絡んでねえぜ。アロン付き合わせりゃいいのに」
「いいからいいから」
文化委員準備室に行くと、会議用テーブルの上にポスターが束ねてあった。
「10枚くらいしかないじゃん」
「各階に2枚ずつと、掲示板と、渡り廊下と・・そんなものかな貼るとこ」
「手伝うほどのものか?」
「ねえ。レソフィック君」
カーラはポスターの束を手にしながらレソフィックに首を向けた。
「アロン君と裕美子って、どんな関係?」
「関係?・・・席が隣同士とか、ハウルのグループで一緒に遊ぶ仲とか?・・そんなのカーラだってよく知ってるじゃないか。あ、あと小泉は生徒会管理の備品出庫係やってるから、安全委員のアロンはよく消耗品補充で一緒に行くよな」
「付き合ってる?」
「それはないと思うけど?そりゃ夏のおさななじみ事件で恋人同士を見事に演じてたけど、その後も特別会うとかしてないし・・・俺あいつの生活間近で見てるから、何かあれば気付くと思うけど」
「そう」
カーラは会議用の机に頬杖して椅子に座りこんでしまった。
「小泉は手伝っただけだって。おさななじみがいるってことにしようってのは俺が言い出したんだ。美女から逃げる口実でさ。あれが小泉だったってアロンも俺らには言ってくれりゃいいのによ・・。カーラ、気にしてたのか?」
「・・・あの2人、なんか普段から波長が合うっていうか・・・そんな気、しない?」
「そうか?カーラだってアロンといい感じじゃないか」
「ほんっとにそう思う?」
カーラは身を乗り出した。
「ま、まあ確かにぎくしゃくしてるのはよく見るけどさ・・・。カーラはアロンと一応ペアになって、いやじゃないんだろ?それだったらもっと甘えててもいい気がするんだけどなァ。アロンもその覚悟でいると思うし・・・ちょっと戸惑ってるんじゃないかな?」
カーラは身を引っ込めた。
「・・知ってる?展覧会でキャリーの絵を集めなきゃってとき、バスケ部は絵描くための時間を先生達に作ってもらったんだけど、本当に時間取って描いてるか、あの2人確かめに行ったんだって」
「あの行事は、カーラが責任者だろ?カーラはそれに誘われなかったのか?」
「誘うも何も、気になって自主的に見に行ったのよ。そしたら2人して合宿所の前でばったり合ったってことらしいわ。・・・待ち合わせするでもない・・けど、2人はよくそうやって交差するのよ・・」
「ハウルと勇夫が、取る行動同じになるようなもんか?それ誰に聞いたんだ?」
「アロン君本人」
「ふーん。隠してないってことは、何もないってことをカーラに伝えてるんだと思うけど。カーラだって普段はあんなコチコチしてねえんだから、普通に接すりゃまっとうだと思うけどな。なんであんな気遣ってるんだ?」
カーラは机にうつ伏せてしまった。
「わかんない・・彼の前ではいい子にしたいと思っちゃうし、でもそうすると言葉に詰まっちゃったり、動けなくなっちゃったり・・・」
「何をそんないい子ぶって・・ありのままでいいんじゃないの?」
カーラはキッとした。
「うそ!ありのままがいいなんて、ぜったいない!地のままがいいなんてあり得ない!」
「そ、そんなムキになるなって。・・・ははぁ、なんか失敗したことあるのか?」
カーラはぶすーっと口を尖らせた。
そのまましばらく黙っていたが、レソフィックを横目で見て口を開いた。
「昔、ちょっと付き合った人に『ありのままでいて』って言われたけど、2月ももたなかった。もうお前のわがまま聞いてられるかって・・」
レソフィックは苦笑いした。
「そりゃ・・節度はいるだろ」
レソフィックはカーラの向かいに座ると
「わがままって、どんなこと言ったのかしらないけど、ありのままでいるってのとはちょっと意味違うんじゃねえの?」
「・・・私、地はわがままし放題なのよ。心許しちゃうと、きっとひどいことする・・・」
「そうなのか?でもハウル達といるときや、今俺にこうやって話し掛けてるのや、ぜんぜん変じゃないぜ?それがわがままじゃいけないと思っていつものカーラがあるなら何も問題ないよ。そのまんまアロンと接すりゃいいんじゃん」
ずいぶん突っ込んだことを話してしまったと気付き、カーラは少し顔を赤らめた。
「レソフィック君、話しやすいわね・・」
レソフィックはちょっとふん反り返って座り直した。
「そうだろ。俺、尋問係に向いてるんだ」
「たぶん、あなたにはいい子にしようって気がないからだけだと思う」
「うへ!きっつ。・・でもそんなくらいの調子ならアロンもぜんぜん平気だよ。いい子ぶる必要ないって。小泉もカーラには遠慮してるふうだしさ」
この言葉にカーラは目をつり上げた。
「裕美子が遠慮?私が遠慮してたのよ、おさななじみに。イコール裕美子に!」
『うわー、怒ってる』
レソフィックもカーラの心境に少し触れて驚いた。
「あの子、自分を、自分の気持ち隠してる。・・わかってて隠してる」
カーラの険しい顔を見てレソフィックもことの重大さを感じ取った。ここまでこじれてるとは・・
次回「学内ライブ(4):美女に引っ立てられる」へ続く!
前回のお話「学内ライブ(2):男子の反応」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
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<学内ライブ(3):カーラの憂鬱>
その授業が終わったところで、カーラは文化委員会室へ行く用事にレソフィックを付き合わせた。
「今度の学内ライブの参加者募集ポスターができたんだって。私掲示する係なんだけど、手伝ってくれる?」
「なんで俺が?」
「掲示物のことだし、レソフィック君、広報委員だからうってつけでしょ」
「学内ライブに広報委員は絡んでねえぜ。アロン付き合わせりゃいいのに」
「いいからいいから」
文化委員準備室に行くと、会議用テーブルの上にポスターが束ねてあった。
「10枚くらいしかないじゃん」
「各階に2枚ずつと、掲示板と、渡り廊下と・・そんなものかな貼るとこ」
「手伝うほどのものか?」
「ねえ。レソフィック君」
カーラはポスターの束を手にしながらレソフィックに首を向けた。
「アロン君と裕美子って、どんな関係?」
「関係?・・・席が隣同士とか、ハウルのグループで一緒に遊ぶ仲とか?・・そんなのカーラだってよく知ってるじゃないか。あ、あと小泉は生徒会管理の備品出庫係やってるから、安全委員のアロンはよく消耗品補充で一緒に行くよな」
「付き合ってる?」
「それはないと思うけど?そりゃ夏のおさななじみ事件で恋人同士を見事に演じてたけど、その後も特別会うとかしてないし・・・俺あいつの生活間近で見てるから、何かあれば気付くと思うけど」
「そう」
カーラは会議用の机に頬杖して椅子に座りこんでしまった。
「小泉は手伝っただけだって。おさななじみがいるってことにしようってのは俺が言い出したんだ。美女から逃げる口実でさ。あれが小泉だったってアロンも俺らには言ってくれりゃいいのによ・・。カーラ、気にしてたのか?」
「・・・あの2人、なんか普段から波長が合うっていうか・・・そんな気、しない?」
「そうか?カーラだってアロンといい感じじゃないか」
「ほんっとにそう思う?」
カーラは身を乗り出した。
「ま、まあ確かにぎくしゃくしてるのはよく見るけどさ・・・。カーラはアロンと一応ペアになって、いやじゃないんだろ?それだったらもっと甘えててもいい気がするんだけどなァ。アロンもその覚悟でいると思うし・・・ちょっと戸惑ってるんじゃないかな?」
カーラは身を引っ込めた。
「・・知ってる?展覧会でキャリーの絵を集めなきゃってとき、バスケ部は絵描くための時間を先生達に作ってもらったんだけど、本当に時間取って描いてるか、あの2人確かめに行ったんだって」
「あの行事は、カーラが責任者だろ?カーラはそれに誘われなかったのか?」
「誘うも何も、気になって自主的に見に行ったのよ。そしたら2人して合宿所の前でばったり合ったってことらしいわ。・・・待ち合わせするでもない・・けど、2人はよくそうやって交差するのよ・・」
「ハウルと勇夫が、取る行動同じになるようなもんか?それ誰に聞いたんだ?」
「アロン君本人」
「ふーん。隠してないってことは、何もないってことをカーラに伝えてるんだと思うけど。カーラだって普段はあんなコチコチしてねえんだから、普通に接すりゃまっとうだと思うけどな。なんであんな気遣ってるんだ?」
カーラは机にうつ伏せてしまった。
「わかんない・・彼の前ではいい子にしたいと思っちゃうし、でもそうすると言葉に詰まっちゃったり、動けなくなっちゃったり・・・」
「何をそんないい子ぶって・・ありのままでいいんじゃないの?」
カーラはキッとした。
「うそ!ありのままがいいなんて、ぜったいない!地のままがいいなんてあり得ない!」
「そ、そんなムキになるなって。・・・ははぁ、なんか失敗したことあるのか?」
カーラはぶすーっと口を尖らせた。
そのまましばらく黙っていたが、レソフィックを横目で見て口を開いた。
「昔、ちょっと付き合った人に『ありのままでいて』って言われたけど、2月ももたなかった。もうお前のわがまま聞いてられるかって・・」
レソフィックは苦笑いした。
「そりゃ・・節度はいるだろ」
レソフィックはカーラの向かいに座ると
「わがままって、どんなこと言ったのかしらないけど、ありのままでいるってのとはちょっと意味違うんじゃねえの?」
「・・・私、地はわがままし放題なのよ。心許しちゃうと、きっとひどいことする・・・」
「そうなのか?でもハウル達といるときや、今俺にこうやって話し掛けてるのや、ぜんぜん変じゃないぜ?それがわがままじゃいけないと思っていつものカーラがあるなら何も問題ないよ。そのまんまアロンと接すりゃいいんじゃん」
ずいぶん突っ込んだことを話してしまったと気付き、カーラは少し顔を赤らめた。
「レソフィック君、話しやすいわね・・」
レソフィックはちょっとふん反り返って座り直した。
「そうだろ。俺、尋問係に向いてるんだ」
「たぶん、あなたにはいい子にしようって気がないからだけだと思う」
「うへ!きっつ。・・でもそんなくらいの調子ならアロンもぜんぜん平気だよ。いい子ぶる必要ないって。小泉もカーラには遠慮してるふうだしさ」
この言葉にカーラは目をつり上げた。
「裕美子が遠慮?私が遠慮してたのよ、おさななじみに。イコール裕美子に!」
『うわー、怒ってる』
レソフィックもカーラの心境に少し触れて驚いた。
「あの子、自分を、自分の気持ち隠してる。・・わかってて隠してる」
カーラの険しい顔を見てレソフィックもことの重大さを感じ取った。ここまでこじれてるとは・・
次回「学内ライブ(4):美女に引っ立てられる」へ続く!
前回のお話「学内ライブ(2):男子の反応」
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こんばんは~
話しがだいぶややこしくなってきましたね(笑)
アロンとカーラはせっかくいいとこまで行ってたのに、
まだまだそう簡単にはいかないんですね^^;
と言うか、アロンと裕美子がくっつく展開もアリでしょうか(≧∇≦)
by ケンケン@ (2010-10-16 18:04)
ケンケン@さん、takemoviesさん、dorobouhigeさん、bitさん、kuzeさん、niceありがとうございます。
ケンケン@さん、いつもコメントありがとうございます。
おっしゃる通りこのグループ、意外やまとまりそうで、なかなかまとまりませんね。
いろいろ想像掻き立ててもらってるみたいで書いてる甲斐があります。
読者皆さんの反応が見えるのはうれしいですね。それにつられて書き換えちゃったりとか・・。ケンケン@さんはじめ、コメント書いてくださる方には本当に感謝しています。
by TSO (2010-10-16 22:07)
HAtAさん、niceありがとうございます。
マロンさん、えーちゃんaaaさん、お久しぶりです。niceありがとうございます。
最近お久しな方からniceが来て、見てもらってるんだなってうれしく思います。引き続きよろしくです~(^^)/
by TSO (2010-10-16 23:41)
ヒロさん、あすぱいさん、xml_xslさん、天葉輝 蒼武さん、niceありがとうございます。
天葉輝 蒼武さんはじめまして。絵が描ける方はうらやましいですねー。
お互い創作がんばりましょう。
by TSO (2010-10-17 20:34)