<そして再び仲間(2):ご報告> [片いなか・ハイスクール]
「片いなか・ハイスクール」連載第162回
<そして再び仲間(2):ご報告>
裕美子はジュースを買って戻ってくると、アロンの向かいに座った。
その後は他愛のない話に花を咲かせていると、いつの間にか時間は10時45分。
ふいに
「楽しそうね」
と背後から声をかけられた。
振り向くとニヤニヤしながらハウルが立っていた。
「なんか、とってもいい雰囲気だったよ」
その横にはクリスティンもいた。
「なんだハウルだけじゃないのか」とアロン。
「ユミちゃん、メガネとって、髪型までちょっと変えておしゃれしてる。そろそろ本気モードのユミちゃんが見れそうね、ふふ」
クリスティンは楽しそうである。
「ハウルの悪い癖でさ、2,3分前に着いたんだけど、しばらく様子をうかがおうなんて言って、観察しちゃったわよ」
クリスティンの後ろから現れたのはカーラだった。
「カーラさん!」
「おめでと、裕美子」
「カーラさん、いいの?」
「いいもなにも・・・。全然かなわなかったわ。次の日にはあなたアロン君に告白しちゃうし、その後も数は少ないけどピンポイントでぐっとアピールするし。けがして医務室連れてってもらったり、極めつけにミシェルの前でアロン君に抱きついたのにはまいったなあ。私のできないこと、みんな持ってるんだもの。普段からあなた達なんか波長が合うしさ。だから選ばれて当然だったんだよ。」
「カーラさん、ありがとう」
裕美子はカーラに抱きついてしまった。
「いいよいいよ。私も裕美子を見習わなきゃね」
「はい、応援してます」
カーラが気持ちよくこの事態を受け入れてくれたことで、アロンもほっとした。
「俺からも、ありがとうカーラ。小泉が友達なくしそうだってすごく落ち込んでたから心配してたんだけど、カーラの寛大さに感謝するよ」
「3日間泣き崩れたけどね。でももう平気よ」
「涙には悲しみの物質を流す効果があるんだってよ。だから泣くのは悪いことじゃないんだ。いっぱい泣いたおかげだね」
ハウルもアロンの向かい側に座って頬杖すると、もう片方の手でアロンを指差しながら言った。
「大体アロン、結婚相手探してんじゃあるまいし、もっとかる~く付き合ってよ、女の子とさー。何人泣かしてんのよ」
「そ、そんな何人もいないだろ」
「お友達としてお付き合いするのはそんな垣根高くないですよね。でも彼氏彼女となるとやけに慎重ていうか・・」
あせるアロンの顔を裕美子が横から覗き込む。
すると今度はクリスティンが裕美子に問いかけた。
「そうそう、ユミちゃんいつからアロン君のことを?ぜんぜん言ってくれないんだもん。わかんなかった」
裕美子はうつむいて赤くなってしまった。代わりにアロンが答えた。
「聞いて驚くな。はっきり聞いてないけど、たぶん入学式だ」
「えー!?」
「それはずいぶん年季がはいってること・・」
「本当に?」
裕美子がうつむいたまま、こくっとうなずく。
「じゃあもう一目惚れだったんだ。すてき」と憧れのまなざしのクリスティン。
「アロンの隣に座ってるのも偶然じゃなかったりしてねー」とカーラが何気に言った。
はっとしばらくみんなが黙る。
「も、もしかして・・?」
ハウルが恐る恐る聞く。
無言の裕美子。監禁されて事情聴取を受けているみたいだ。
「選んだ?あの席を」
「・・・」
「あたしらに隠し事なしよ!」
ハウルが叫ぶ。ヘッドロックしようとしていた。
「ごめんなさいー!選びました、アロン君の横の席が出るまで座席カード選びました!」
唖然とするみんな。目が点である。
「ユミちゃん、意外と悪女だわ」とクリスティン。
「カーラ、これくらいやらないと取れないのよ、彼氏って」とハウル。
「まじめにくじ引きしてた私は馬鹿だった・・」とカーラは額に手をして天を仰ぐ。
「そーでしょう?!だからあの時わたしぶちまけっていったんじゃん!はっ。アロン、お前らレソフィックと勇夫!」
「もう、報告会終わりでいい?」
形勢が悪くなってきたのでアロンは逃げに入り始めた。
「どうりで並んでると思った。悪人~」
「ハウル、もう締めにしようよ。お二人はこれからデートでしょ?」
クリスティンが気を利かせる。
ぱんぱんとカーラが手をたたいた。
「それじゃ、アロン君。正式に報告を。まだ聞いてないよ、あなたの口から。そして誓いの言葉を」
「そうだっけ?あー、おほん。幼なじみ事件から大事(おおごと)になってかれこれ・・(指折り数えて)4ヶ月。皆様のご支援あって私アロンと小泉裕美子はめでたくカップルになることができました。ありがとうございました。これからもご支援よろしく。で、何?誓いって」
「汝この女を一生幸せにすると誓いますか?」
「け、結婚したわけじゃねえよ!」
ハウルがアロンの肩をぽんぽんたたいた。
「あんたの無茶高い理想にあう女の子なんかもう出てくるわけないじゃん。一生裕美子つかんどいたほうがいいって!」
「なんだそれ。いいよ、好きである限り幸せになるよう努力します。これでいいだろ?」
それを聞いてカーラとクリスティンがはしゃいだ。
「わー、じゃあ誓いのキッスを」
「キッスキッス」
「いいって!」
急にガタっと裕美子が椅子から立ち上がった。
「アロン君、逃げよう!」
アロンは裕美子に手を引っ張られると、2人は猛ダッシュでコーヒー屋を脱出した。
「あー、ちょっと、新郎新婦~」
「逃げちゃった」
次回「そして再び仲間(3):初デート」へ続く!
前回のお話「そして再び仲間(1):待ち合わせ」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
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<そして再び仲間(2):ご報告>
裕美子はジュースを買って戻ってくると、アロンの向かいに座った。
その後は他愛のない話に花を咲かせていると、いつの間にか時間は10時45分。
ふいに
「楽しそうね」
と背後から声をかけられた。
振り向くとニヤニヤしながらハウルが立っていた。
「なんか、とってもいい雰囲気だったよ」
その横にはクリスティンもいた。
「なんだハウルだけじゃないのか」とアロン。
「ユミちゃん、メガネとって、髪型までちょっと変えておしゃれしてる。そろそろ本気モードのユミちゃんが見れそうね、ふふ」
クリスティンは楽しそうである。
「ハウルの悪い癖でさ、2,3分前に着いたんだけど、しばらく様子をうかがおうなんて言って、観察しちゃったわよ」
クリスティンの後ろから現れたのはカーラだった。
「カーラさん!」
「おめでと、裕美子」
「カーラさん、いいの?」
「いいもなにも・・・。全然かなわなかったわ。次の日にはあなたアロン君に告白しちゃうし、その後も数は少ないけどピンポイントでぐっとアピールするし。けがして医務室連れてってもらったり、極めつけにミシェルの前でアロン君に抱きついたのにはまいったなあ。私のできないこと、みんな持ってるんだもの。普段からあなた達なんか波長が合うしさ。だから選ばれて当然だったんだよ。」
「カーラさん、ありがとう」
裕美子はカーラに抱きついてしまった。
「いいよいいよ。私も裕美子を見習わなきゃね」
「はい、応援してます」
カーラが気持ちよくこの事態を受け入れてくれたことで、アロンもほっとした。
「俺からも、ありがとうカーラ。小泉が友達なくしそうだってすごく落ち込んでたから心配してたんだけど、カーラの寛大さに感謝するよ」
「3日間泣き崩れたけどね。でももう平気よ」
「涙には悲しみの物質を流す効果があるんだってよ。だから泣くのは悪いことじゃないんだ。いっぱい泣いたおかげだね」
ハウルもアロンの向かい側に座って頬杖すると、もう片方の手でアロンを指差しながら言った。
「大体アロン、結婚相手探してんじゃあるまいし、もっとかる~く付き合ってよ、女の子とさー。何人泣かしてんのよ」
「そ、そんな何人もいないだろ」
「お友達としてお付き合いするのはそんな垣根高くないですよね。でも彼氏彼女となるとやけに慎重ていうか・・」
あせるアロンの顔を裕美子が横から覗き込む。
すると今度はクリスティンが裕美子に問いかけた。
「そうそう、ユミちゃんいつからアロン君のことを?ぜんぜん言ってくれないんだもん。わかんなかった」
裕美子はうつむいて赤くなってしまった。代わりにアロンが答えた。
「聞いて驚くな。はっきり聞いてないけど、たぶん入学式だ」
「えー!?」
「それはずいぶん年季がはいってること・・」
「本当に?」
裕美子がうつむいたまま、こくっとうなずく。
「じゃあもう一目惚れだったんだ。すてき」と憧れのまなざしのクリスティン。
「アロンの隣に座ってるのも偶然じゃなかったりしてねー」とカーラが何気に言った。
はっとしばらくみんなが黙る。
「も、もしかして・・?」
ハウルが恐る恐る聞く。
無言の裕美子。監禁されて事情聴取を受けているみたいだ。
「選んだ?あの席を」
「・・・」
「あたしらに隠し事なしよ!」
ハウルが叫ぶ。ヘッドロックしようとしていた。
「ごめんなさいー!選びました、アロン君の横の席が出るまで座席カード選びました!」
唖然とするみんな。目が点である。
「ユミちゃん、意外と悪女だわ」とクリスティン。
「カーラ、これくらいやらないと取れないのよ、彼氏って」とハウル。
「まじめにくじ引きしてた私は馬鹿だった・・」とカーラは額に手をして天を仰ぐ。
「そーでしょう?!だからあの時わたしぶちまけっていったんじゃん!はっ。アロン、お前らレソフィックと勇夫!」
「もう、報告会終わりでいい?」
形勢が悪くなってきたのでアロンは逃げに入り始めた。
「どうりで並んでると思った。悪人~」
「ハウル、もう締めにしようよ。お二人はこれからデートでしょ?」
クリスティンが気を利かせる。
ぱんぱんとカーラが手をたたいた。
「それじゃ、アロン君。正式に報告を。まだ聞いてないよ、あなたの口から。そして誓いの言葉を」
「そうだっけ?あー、おほん。幼なじみ事件から大事(おおごと)になってかれこれ・・(指折り数えて)4ヶ月。皆様のご支援あって私アロンと小泉裕美子はめでたくカップルになることができました。ありがとうございました。これからもご支援よろしく。で、何?誓いって」
「汝この女を一生幸せにすると誓いますか?」
「け、結婚したわけじゃねえよ!」
ハウルがアロンの肩をぽんぽんたたいた。
「あんたの無茶高い理想にあう女の子なんかもう出てくるわけないじゃん。一生裕美子つかんどいたほうがいいって!」
「なんだそれ。いいよ、好きである限り幸せになるよう努力します。これでいいだろ?」
それを聞いてカーラとクリスティンがはしゃいだ。
「わー、じゃあ誓いのキッスを」
「キッスキッス」
「いいって!」
急にガタっと裕美子が椅子から立ち上がった。
「アロン君、逃げよう!」
アロンは裕美子に手を引っ張られると、2人は猛ダッシュでコーヒー屋を脱出した。
「あー、ちょっと、新郎新婦~」
「逃げちゃった」
次回「そして再び仲間(3):初デート」へ続く!
前回のお話「そして再び仲間(1):待ち合わせ」
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by TSO (2010-12-25 20:10)