<スキー旅行(10):カラオケ大会> [片いなか・ハイスクール]
「片いなか・ハイスクール」連載第189回
<スキー旅行(10):カラオケ大会>
さて、ウォーミングアップということで、ゲレンデの片隅でC組メンバが集まって美女の歌を盛り上げていたら、いつの間にか周囲に人が集まってきて、ゲストハウス前のディスコ集団とは別の集団ができあがってきた。それはみるみる膨れ上がり、知らない連中が「カラオケ使って歌ってもらおうぜ」と、美女を引っ張っていってしまった。
美女も気分が乗ってきていたのでやる気になり、ゲレンデに自然発生していた集団がカラオケ大会の準備をしていたところになだれこんできた。強引にカラオケの機械を占拠しそうなのでクリスティンが心配する。
「美女さん、無理にやっちゃだめよー」
そこでレソフィックが機転を利かせた。カーラを呼び寄せる。
「カーラ、出場券を早いとこ美女に渡しちゃって。スタッフに頼んでこのまま歌わせちゃおう」
「わ、わかった。レソフィック君、一緒に来て」
「1杯あおってくか?カーラ」
レソフィックが片いなかビバレッジのカクテルを指した。
「も、もうお酒は卒業!いいから早く!」
2人はカラオケスタッフのところに飛び込むと説得工作を始めた。
「彼女、カラオケの抽選にも当たってるから、ちょっと順番入れ替えて歌わさせてください」
「お願いしますよ。今みんな乗ってきていい感じだから、この勢いで始めちゃおうよ。いいっしょ?」
と周囲の勢いをそのまま使って強引に勧めた。しかしスタッフもそのノリは判っていた。
「いいんじゃないか?やっちまおう」
「司会者さん、彼女の歌の後に入ってください」
「ええ?原稿のセリフがぜんぜん使えなくなっちゃうよ」
「プロだろう。それくらい現場に合わせろ」
裏方が慌しく動き回り始めたそのころ、美女は1番手にステージへ上がってきた。というか、周りが手拍子して、歌いながらノリノリの状態で壇上に登場である。
「曲何かけるんだい?」
スタッフがレソフィックに聞く。
「え?そ、そりゃ・・・なんだろ」
「と、とにかくいいからマイク渡しちゃいましょう!」
カーラがマイクを持って美女に駆け走った。完全にスタッフの一員である。
美女はマイクを受け取ると、カラオケの曲なんか流さず、なんと手拍子に乗ったまま2曲続けて歌ってしまった。
そして歌い終えると、
「新年までもうわずか、この勢いで今年を乗り切るよー!」
うおおおおー!
と、絶好調に盛り上げてカラオケ大会1番手の大役を果たした。
シャノンがぱちぱちと拍手して迎える。
「美女、すごーい!」
ジョンやミシェルも拍手している。
「いやー、よかった」
「最高に盛り上げたぜ!」
寒空なのにうっすら額に汗して美女が
「ま、こんなもんよ!」
と高ぶったままの声で答えた。
ところが、本来のカラオケ大会になったところで、次出場者はなんとじいさんだった。
じいさん、周りの喧騒などまったく意に介さず、しっかりわが道を行く。
妙に暗い曲をチョイスしたあげく、しゃがれた声で自分の世界に入って行った。
雪原が静まる・・・。
暗いイントロから歌い始めて数秒でレソフィックがのど自慢の鐘一つを鳴らした。
スタッフが速攻でじいさんを引きずり下ろす。
すっかり出番のないわれらが主人公は、雪原で単なる一観衆になっていた。
アロンが裕美子につぶやいた。
「年寄りのおっちゃんにはかわいそうだけど、空気読んでほしかったな~」
「それにしても美女さん、すごかったですね」
次回「スキー旅行(11):A Happy New Year!」へ続く!
前回のお話「スキー旅行(9):カウントダウンイベント」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
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<スキー旅行(10):カラオケ大会>
さて、ウォーミングアップということで、ゲレンデの片隅でC組メンバが集まって美女の歌を盛り上げていたら、いつの間にか周囲に人が集まってきて、ゲストハウス前のディスコ集団とは別の集団ができあがってきた。それはみるみる膨れ上がり、知らない連中が「カラオケ使って歌ってもらおうぜ」と、美女を引っ張っていってしまった。
美女も気分が乗ってきていたのでやる気になり、ゲレンデに自然発生していた集団がカラオケ大会の準備をしていたところになだれこんできた。強引にカラオケの機械を占拠しそうなのでクリスティンが心配する。
「美女さん、無理にやっちゃだめよー」
そこでレソフィックが機転を利かせた。カーラを呼び寄せる。
「カーラ、出場券を早いとこ美女に渡しちゃって。スタッフに頼んでこのまま歌わせちゃおう」
「わ、わかった。レソフィック君、一緒に来て」
「1杯あおってくか?カーラ」
レソフィックが片いなかビバレッジのカクテルを指した。
「も、もうお酒は卒業!いいから早く!」
2人はカラオケスタッフのところに飛び込むと説得工作を始めた。
「彼女、カラオケの抽選にも当たってるから、ちょっと順番入れ替えて歌わさせてください」
「お願いしますよ。今みんな乗ってきていい感じだから、この勢いで始めちゃおうよ。いいっしょ?」
と周囲の勢いをそのまま使って強引に勧めた。しかしスタッフもそのノリは判っていた。
「いいんじゃないか?やっちまおう」
「司会者さん、彼女の歌の後に入ってください」
「ええ?原稿のセリフがぜんぜん使えなくなっちゃうよ」
「プロだろう。それくらい現場に合わせろ」
裏方が慌しく動き回り始めたそのころ、美女は1番手にステージへ上がってきた。というか、周りが手拍子して、歌いながらノリノリの状態で壇上に登場である。
「曲何かけるんだい?」
スタッフがレソフィックに聞く。
「え?そ、そりゃ・・・なんだろ」
「と、とにかくいいからマイク渡しちゃいましょう!」
カーラがマイクを持って美女に駆け走った。完全にスタッフの一員である。
美女はマイクを受け取ると、カラオケの曲なんか流さず、なんと手拍子に乗ったまま2曲続けて歌ってしまった。
そして歌い終えると、
「新年までもうわずか、この勢いで今年を乗り切るよー!」
うおおおおー!
と、絶好調に盛り上げてカラオケ大会1番手の大役を果たした。
シャノンがぱちぱちと拍手して迎える。
「美女、すごーい!」
ジョンやミシェルも拍手している。
「いやー、よかった」
「最高に盛り上げたぜ!」
寒空なのにうっすら額に汗して美女が
「ま、こんなもんよ!」
と高ぶったままの声で答えた。
ところが、本来のカラオケ大会になったところで、次出場者はなんとじいさんだった。
じいさん、周りの喧騒などまったく意に介さず、しっかりわが道を行く。
妙に暗い曲をチョイスしたあげく、しゃがれた声で自分の世界に入って行った。
雪原が静まる・・・。
暗いイントロから歌い始めて数秒でレソフィックがのど自慢の鐘一つを鳴らした。
スタッフが速攻でじいさんを引きずり下ろす。
すっかり出番のないわれらが主人公は、雪原で単なる一観衆になっていた。
アロンが裕美子につぶやいた。
「年寄りのおっちゃんにはかわいそうだけど、空気読んでほしかったな~」
「それにしても美女さん、すごかったですね」
次回「スキー旅行(11):A Happy New Year!」へ続く!
前回のお話「スキー旅行(9):カウントダウンイベント」
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あいか5drrさん、くぼたんさん、kuzeさん、bitさん、あすぱいさん、HAtA.さん、ケンケン@さん、xml_xslさん、niceありがとうございます。
by TSO (2011-03-12 23:22)