<バレンタイン(4):生殺しの儀式> [片いなか・ハイスクール]
東日本大震災被災地がんばれ!
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「片いなか・ハイスクール」連載第223回
<バレンタイン(4):生殺しの儀式>
夜。レソフィックの部屋。
アロンと裕美子は、レソフィックや勇夫達と夕食を食べた。
テレビなど見つつ食後のお茶しながらだべっていたら、裕美子が立ち上がった。
「わたしそろそろ部屋戻ります」
レソフィックがなんだか残念そうに見上げて聞いた。
「もういっちゃうの?」
「宿題たくさん出てたからやらないと」
「小泉だったらすぐ終わっちゃうんじゃないの?」
「わたし寝るの早いから、今からやってちょうどいいんです」
「アロンいいなあ。小泉がやったの写せばいいんだもんな」
そう言った勇夫は裕美子にメガネ越しに睨まれた。
「見せませんよ。答え合わせならやってもいいけど」
じっと睨まれた勇夫は汗をかいて引き下がった。
「き、厳しいなあ」
「それじゃごちそうさまでした」
ぺこっと頭を下げると行ってしまった。
レソフィックがアロンににじり寄ってきた。
「あいつ、部屋ではどうなの?」
「大して変わんないよ。あんなだよ」
「風呂から出たら、パンティーにシャツ羽織っただけとかで出てきたりするの?」
「し、しないよ、そんなこと。パジャマ着てるよ」
「セクシーで責めるタイプじゃなさそうだよな。で、どんなとき淫らになるの?」
「ならねって。いつだってあんな感じだよ」
「・・・なんだアロン、もしかしてまだ進展なし?」
「あのな。裕美子の親公認で預かってるって状態なんだから。変なことできるわけないだろ」
「黙ってりゃわかんないんじゃないの?」
「万が一、俺の親に知れたとき殺される」
質問しまくるレソフィックに、勇夫はテレビを見ているふりをして聞き耳を立てている。
「それに、そういうことは裕美子のタイミングでってことにしてんだよ」
「ふーん」
しげしげとアロンを眺めるレソフィック。
「結構生殺し状態なんだな」
いい加減テレビも見飽きて、アロンも自分の部屋に帰ってきた。
テーブルのところで宿題をやっているらしい裕美子が顔を上げた。
「おかえりなさい。早かったですね」
「大して面白いテレビでもなかったし、途中でやめた。俺も宿題やろう」
「わたし、もうすぐ終わります」
「え?もう?」
「終わったら、先お風呂いいですか?」
「うん」
アロンがノートなど開いて宿題をやる準備が整ったころには、裕美子は宿題だけでなく軽く予習まで終わらせたようである。そして着替えなどを持ってお風呂へ行こうとしていた。
アロンが目でそれを追っていた。
「なんですか?」
「え?・・いやあ、裕美子がパンツにシャツ羽織っただけで出てくる姿、想像してみたり・・」
「・・は、はあ?」
「す、するわけねーよな」
「あたりまえです」
裕美子は脱衣所へ歩いていった。
学校いたときから今まで相変わらず起伏の乏しい態度の裕美子だったが、脱衣所に入るところで振り向くと、今日一番の普通の人らしい表情を見せた。ちょっと恥ずかしそうに赤い顔をしたのだ。
「そ、それに、そろそろアノ日になるから」
そう言うとパタンと脱衣所のドアを閉めた
「アノ日?そ、そっか。そうすると裕美子が来て、もう一月近くになるんだな」
裕美子はのんびり1時間近くお風呂に入っていた。
アロンも宿題が終わった頃、裕美子は出てきた。もちろん、きちんとパジャマ姿である。
「終わった?」
「うん。いいタイミングだね。もしかして終わる頃見計らって出てきた?」
「はい」
恐ろしい読みである。
「それじゃ、俺も入るか」
宿題を片付けて、着替えなど持って行こうとしたら、裕美子に服の裾を掴まれて引き止められた。
「わたし多分、先に寝ちゃってるから。・・・おやすみのキス、して?」
今日一番の甘い声としぐさだった。やればできるじゃんかと言うような普通の女の子の態度である。
アロンが真っ赤になった。
「わかった」
「あ、アロン君そのまま・・」
立ち上がった裕美子はアロンの胸に手を置いて顔を近付けた。
ふわぁっとお風呂上りのいいにおいが漂ったと思うと、やさしく唇が触れた。
そしてきゅっと一瞬アロンの胸に頭を押し付けて抱きついたと思うと、まるでそよ風が通り過ぎたようにもう裕美子は離れている。
同棲までしてるにしてはそっけない1日を送っている2人であるが、1日の最後だけは、裕美子がキスをねだる。
とはいってもこんな具合である。
「おやすみなさい」
「お、おやすみ」
寝る前の甘い儀式は、思春期の男の子にとってかえってもやもやさせるものであった。
「やっぱり、生殺し?」
次回「バレンタイン(5):彼女は能面?」へ続く!
前回のお話「バレンタイン(3):リーダーにも」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
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「片いなか・ハイスクール」連載第223回
<バレンタイン(4):生殺しの儀式>
夜。レソフィックの部屋。
アロンと裕美子は、レソフィックや勇夫達と夕食を食べた。
テレビなど見つつ食後のお茶しながらだべっていたら、裕美子が立ち上がった。
「わたしそろそろ部屋戻ります」
レソフィックがなんだか残念そうに見上げて聞いた。
「もういっちゃうの?」
「宿題たくさん出てたからやらないと」
「小泉だったらすぐ終わっちゃうんじゃないの?」
「わたし寝るの早いから、今からやってちょうどいいんです」
「アロンいいなあ。小泉がやったの写せばいいんだもんな」
そう言った勇夫は裕美子にメガネ越しに睨まれた。
「見せませんよ。答え合わせならやってもいいけど」
じっと睨まれた勇夫は汗をかいて引き下がった。
「き、厳しいなあ」
「それじゃごちそうさまでした」
ぺこっと頭を下げると行ってしまった。
レソフィックがアロンににじり寄ってきた。
「あいつ、部屋ではどうなの?」
「大して変わんないよ。あんなだよ」
「風呂から出たら、パンティーにシャツ羽織っただけとかで出てきたりするの?」
「し、しないよ、そんなこと。パジャマ着てるよ」
「セクシーで責めるタイプじゃなさそうだよな。で、どんなとき淫らになるの?」
「ならねって。いつだってあんな感じだよ」
「・・・なんだアロン、もしかしてまだ進展なし?」
「あのな。裕美子の親公認で預かってるって状態なんだから。変なことできるわけないだろ」
「黙ってりゃわかんないんじゃないの?」
「万が一、俺の親に知れたとき殺される」
質問しまくるレソフィックに、勇夫はテレビを見ているふりをして聞き耳を立てている。
「それに、そういうことは裕美子のタイミングでってことにしてんだよ」
「ふーん」
しげしげとアロンを眺めるレソフィック。
「結構生殺し状態なんだな」
いい加減テレビも見飽きて、アロンも自分の部屋に帰ってきた。
テーブルのところで宿題をやっているらしい裕美子が顔を上げた。
「おかえりなさい。早かったですね」
「大して面白いテレビでもなかったし、途中でやめた。俺も宿題やろう」
「わたし、もうすぐ終わります」
「え?もう?」
「終わったら、先お風呂いいですか?」
「うん」
アロンがノートなど開いて宿題をやる準備が整ったころには、裕美子は宿題だけでなく軽く予習まで終わらせたようである。そして着替えなどを持ってお風呂へ行こうとしていた。
アロンが目でそれを追っていた。
「なんですか?」
「え?・・いやあ、裕美子がパンツにシャツ羽織っただけで出てくる姿、想像してみたり・・」
「・・は、はあ?」
「す、するわけねーよな」
「あたりまえです」
裕美子は脱衣所へ歩いていった。
学校いたときから今まで相変わらず起伏の乏しい態度の裕美子だったが、脱衣所に入るところで振り向くと、今日一番の普通の人らしい表情を見せた。ちょっと恥ずかしそうに赤い顔をしたのだ。
「そ、それに、そろそろアノ日になるから」
そう言うとパタンと脱衣所のドアを閉めた
「アノ日?そ、そっか。そうすると裕美子が来て、もう一月近くになるんだな」
裕美子はのんびり1時間近くお風呂に入っていた。
アロンも宿題が終わった頃、裕美子は出てきた。もちろん、きちんとパジャマ姿である。
「終わった?」
「うん。いいタイミングだね。もしかして終わる頃見計らって出てきた?」
「はい」
恐ろしい読みである。
「それじゃ、俺も入るか」
宿題を片付けて、着替えなど持って行こうとしたら、裕美子に服の裾を掴まれて引き止められた。
「わたし多分、先に寝ちゃってるから。・・・おやすみのキス、して?」
今日一番の甘い声としぐさだった。やればできるじゃんかと言うような普通の女の子の態度である。
アロンが真っ赤になった。
「わかった」
「あ、アロン君そのまま・・」
立ち上がった裕美子はアロンの胸に手を置いて顔を近付けた。
ふわぁっとお風呂上りのいいにおいが漂ったと思うと、やさしく唇が触れた。
そしてきゅっと一瞬アロンの胸に頭を押し付けて抱きついたと思うと、まるでそよ風が通り過ぎたようにもう裕美子は離れている。
同棲までしてるにしてはそっけない1日を送っている2人であるが、1日の最後だけは、裕美子がキスをねだる。
とはいってもこんな具合である。
「おやすみなさい」
「お、おやすみ」
寝る前の甘い儀式は、思春期の男の子にとってかえってもやもやさせるものであった。
「やっぱり、生殺し?」
次回「バレンタイン(5):彼女は能面?」へ続く!
前回のお話「バレンタイン(3):リーダーにも」
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by TSO (2011-07-31 19:49)