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<過去との決別(1):レイ・サクラギ> [片いなか・ハイスクール]

東日本大震災被災地がんばれ!


彼ら彼女らの高校1年を綴る「片いなかハイスクール」第1期もいよいよ最後の章まできました。
アロンを主人公として始まったこの物語も、最初の頃からは想像もつかない人が彼女になり、でも2人はこれまでとってもうまくやってきました。
そこに大きな影が迫ります。

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「片いなか・ハイスクール」連載第237回
<過去との決別(1):レイ・サクラギ>


3月8日 月曜日

期末試験も終わった翌週。
消化授業を受けるだけとなって、分校はすっかり気の緩んだ生徒達であふれかえっていた。
3学期が終わるまで一月もないというこんな時期に、本校から転入生がA組へやってきた。
名前はレイ・サクラギ。
見た目はなかなかの美形であるが、ちょっと目線の冷たい感じのする女子であった。


A組の男子は早速レイを取り囲んでいた。女子も意味心身と寄って来る。

「なんでこんな時期に転入なんてしてきたんですか?」
「親の都合でね、引越しが来月まで待てなかったの。期末考査はまではなんとかいさせてもらったけど、後はもうどうせ放っておいても来月から分校通うんだし、こっちの人達と早めに顔合わせる分には構わないでしょうから、3学期どうでもいいような時期だけど、転入したの。同じ学校内の異動だから簡単だしね」
「でもあっちの友達もびっくりでしょう?」
「本校に転校してきたのも3学期からだから、それほどでも」
「そんなに引越しが多いの?」
「このところちょっとね」


2時限と3時限の間の休み。校庭を眺めていたレイは、ある女の子を見てはっとした。

「あの子、だあれ?」
「どれ?・・ああ、C組の小泉さんじゃない?」
「・・・小泉?」
「ええ。彼女、3学期の初めの実力テストで1番取ったのよ。本校との総合順位でも1番だったのよね」
「知ってる。本校でも分校に1番取られたって話題になってた」

『・・・・同姓同名かと思ってたけど、まさかあの小泉だったとは・・』

「小泉さんて、まじめそうだもんね」
「でもスポーツも結構できるのよね。秋の球技大会のバレー部門てB組が優勝したけど、あのとき小泉さん怪我だかなんだったかで出れなかったからC組調子悪くって、小泉さん出てたら優勝候補だったのよね。練習試合にまだ出れてたときC組とB組ってすごい僅差だったんでしょう?あたしらA組はぜんぜんかなわなかったし」
「それにさ、あのアロン君を彼氏にしてるんだよね。ちょっとびっくりな組み合わせよね」
「そうそう、あの活発なアロン君とでしょ?」
「小泉さん、まだ中学生みたいなのに、釣り合うのかなあ」
「どうせすぐ別れちゃうよって思ってたんだけど。仲いいのよね」
「なんかくやしいなあ」
「ふーん、彼氏もいるんだ」



放課後、レイはアロンに接触を試みた。

裕美子はアロンと一緒に帰ると思いきや、この日アロンは道場の春季合宿の準備で道場に寄ることになっていたので、裕美子は先に帰ってしまった。アロンが一人というのをかえって好都合とみたレイは廊下で呼び止めた。
「私はA組のレイ・サクラギ。あなた小泉裕美子のカレシ?」
「そうだけど・・A組?初めてみる顔だな。裕美子とは知り合い?」
「知らないのは無理ない。転校してきたばっかりなの。私は小泉の中学の同級生よ」
「へえー、裕美子と同じ中学の人は初めてだよ。友達だったのかい?」

レイは口元に冷たい笑いを蓄えた。

「友達?小泉にそんな人いるわけないじゃない。あなた小泉の中学時代を知ってる?」
「え?いや、あんまり聞いたことないな」
「ふん、そうでしょうね。あなた小泉のこと、どれだけ知っているの?小泉に本当に愛されてると思う?」

『なんだこいつ・・裕美子のことよく思ってないのか?なんかきな臭い感じがするぞ』

「相思相愛だと思ってるけど?」
「ふーん・・。そんなんじゃ小泉は本当に心を許してなんかいないわよ。何でも打ち解けて話してくれていると思う?よそよそしさを感じることはない?」

『さすが中学時代の同級。裕美子の核心を突いてくるぜ。こいつはあぶねぇ』

「まあ普通の子とは違うところがたくさんある人だと思うけど。そんな不思議も魅力のひとつじゃないの?」
「そんな表面的なところに魅力なんか感じてるんじゃ、あなた達長続きしそうにないわね」
「ず、ずいぶん初対面にしては失礼な奴だな。やきもちか?」
「ほほほ。甘いね、あんた。あの小泉が心を許すと思う?はっきり言うわ。小泉は隠している。本当の自分をね。そこが魅力なんて言ってたって、いつまで経っても小泉は本当のことなんて言ってくれないし、聞き取ることだってできっこないわ」
「おまえなんなんだ?!裕美子の中学時代がなんだってんだ?」
「ふふん。いずれあなたは小泉から離れたくなるわよ。それか小泉の方から去って行くかもね」

レイはいうだけ言うとくるりときびつを返し、冷たい笑いをちらりとみせて去っていった。



その日の夜。
とある家の部屋で電話をしている女子高生がいた。
レイだった。
レイは中学の同級と電話で話をしていた。

「小泉を見つけたわよ。私の転校先、分校にいたわ。それも生意気にもカレシとやらまで作ってるのよ」
・・(その彼氏、小泉の中学時代を知ってるの?)・・
「知ってるわけないじゃん。だから彼氏なんて言ってられるのよ。」
・・(どうするの?ばらす気?)・・
「当然でしょ。生意気な、ぶっ潰してやるわ」
・・(さすがレイね)・・


次回「過去との決別(2):異常反応」へ続く!

前回のお話「牛丼騒動(6):玄関でばったり」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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