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<第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(3):黒板消しを壊した人たち> [片いなか・ハイスクール]

東日本大震災被災地がんばれ!


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「片いなか・ハイスクール」連載第283回
<第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(3):黒板消しを壊した人たち>


生徒会から教室に戻ると、そこにはアロンと勇夫とハウルがいて、モップと雑巾で教室を拭いているところだった。3人は裕美子を認めると、へら~っとばつの悪そうな笑みを浮かべた。
裕美子がじいっと勇夫とハウルをメガネ越しに睨んでいると、その前にずいっと体を出してきたのはリーダー。それも目を三角にして怒ってる。

「お前ら!黒板消しで遊んだって、なにやったんだー!」
「うわああ!」
「発狂したー!」

壊した当事者でないアロンが横から出てくると、ハウル達に代わって説明した。


「教室の掃除するとき、ハウルが箒の柄で勇夫を叩くもんだから、勇夫が黒板消しを手に取ってその攻撃を受け止めてさ。勇夫がうまく受け止めるもんだからハウルが調子に乗って、ムキになって攻撃を仕掛けて、勇夫もそれをことごとく受け止めて、そしたら箒の柄がちょっと裂けてささくれ立ってて、黒板消しの布がそれに引っかかって、2人が無理やり引っ張り合って、そしてとうとう黒板消しが空中分離して・・」

もう十分とばかりに片手を前に出してリーダーが遮った。

「もう在庫品がないらしいじゃないか!それをだめにして!」

裕美子が机の上に人差し指をツーッと這わす。

「それで黒板消しを教室内でぱんぱん叩いたものだから、教室中にチョークの粉が降り積もってるんですね・・」

そこにはきれいに1本のシュプールが描かれていた。積もっている量もかなりのものである。黒板消しにはいったい何年分の粉が蓄積されてたんだろう。しかも教室じゅうまんべんなく行き渡っているということは、どんだけ走り回りながら激しくやってたんだか・・・。
小学校のようなその光景を想像しようかと思ったが、アホらしくてやめた。
運悪く教室に残ってた人は大丈夫だろうか。今頃気管支炎になってるんじゃないだろうか。

「だけどよ、黒板消しを俺に放ってよこしたのはアロンだぞ」

それは初耳だわ。

裕美子の首が少しだけ回ってアロンの方に向いた。目線の先のアロンはじろりと大きなメガネに睨まれた。

「・・言いにくそうにしてたのは、馬鹿らしい理由で壊れたからだけじゃなくて、自分も絡んでたからなんですね・・」
「うわあ!ご、ごめん!!だから悪いと思って、こうやってこいつらと教室拭いてるんじゃないか~」

自分達のやったことをさらっと一言で言われたハウルが、勇夫に向かって呟く。

「馬鹿らしい理由だって・・」
「そ、そもそもハウルが箒なんぞで俺をポカポカやるからじゃねえか」
「掃除しないで遊んでばかりいるからでしょ!」

また言い合っている2人をリーダーが机を叩いて制止した。

「理由はどうであれ、2人とも同罪だ!アロンも共犯者だな!」
「うえええ」

裕美子は3人の前へ1歩出てくると、

「反省してもらうついでに、お三方にやってもらいたいことがあります」

と言って、紙を1枚ぺらりと机の上に広げた。それは学校の校舎の見取り図だった。

「防災委員アロン君のお仕事のひとつ、安全巡視の一環として、学校中にある黒板消しの状態を調べてください。アロン君はご存知の通り、もう備品倉庫に黒板消しは1つしか在庫残ってません。でも今はチョークを使った黒板の使用頻度は少なくて、もうそれほど消耗するような備品でもありません。実際最後に補充したのも12年前でした。ただ、それだけ古いものを今でも使っているということかもしれません」
「ははぁ・・。それでもうそろそろやばそうなのがいくつあるか、疲弊具合を調べろって訳か。黒板消しの在庫補充をいくつにするか参考にしようってんだな?痛んでるのがたくさんあれば、近々壊れて交換にくる可能性が高いから、たくさん買っとかないとってことだ」

またアロン君、すぐわたしの意図を汲み取ってくれて・・。勘がいいんだな。

「・・そう。もしかすると補充しなくていいって事になるかもしれない」
「なるほどお!ペナルティにもなり、しかも備品管理係にも役立つ訳ですね。さすが小泉さん、すばらしい提案だ!」

リーダーが絶賛する。
そのリーダーを眉をしかめながら横目で見上げてから、ハウルは校舎の見取り図を手に取った。

「頭のいい人って、何でそういう面倒なことすぐ思いつくのかな。それで、これはどうするの?」
「それを持って調査に回って、そこに黒板消しの存在有り無しと程度を書き入れて、わたしに提出してください。来月入庫品の注文に間に合うように、今月の20日までにお願いします」

チャンはうんうんと首を縦に振っていた。

「的確な指示だ。さすが小泉さん。君ら、いつやるかここで決めておきたまえ」
「ちぇー。ハウル、いつやるよ」

そう言って勇夫がハウルに口を尖らす。

「えー?暇になった日の放課後じゃだめぇ?」
「ハウルさん。各教室にC組の人が入ることを事前に知らせておかなければならないので、日にちは決めてください」
「あーん。裕美子ってきびしい人ねえ」
「君らがルーズなだけだ!ほれ、カレンダー!」

教壇の中にあった卓上カレンダーが突き出され、3人は生徒会委員に追い詰められる一方だった。


次回「第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(4):黒板消しの予約在庫」へ続く!

前回のお話「第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(2):黒板消しの実在庫」


対応する第1部のお話「第1部:第9章 レソフィックの広報記事」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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別の方の更新で手一杯で、こっちに手が回らず、更新が遅れてしまいました。
皆様のところへのご訪問も後ほどゆっくり回らさせていただきます。

※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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