<第2部:第7章 隣町への買い物(1):安全巡視> [片いなか・ハイスクール]
「片いなか・ハイスクール」連載第300回
<第2部:第7章 隣町への買い物(1):安全巡視>
だいぶ前回のお話し「リーダー告白失敗」から間が空きましたが、物語は前回の翌日から始まります。
(前回のお話しを忘れちゃった方はぜひもう一度目読み返していただけると、すんなり繋がると思います。)
リーダーが裕美子に告白するのを失敗した翌日。
いつものようにホームルームぎりぎりにアロンが登校してくると、そこへ向かってリーダーが歩いてきた。隣の席の裕美子は真っ先に立ち上がるとリーダーにぺこっと頭を下げて謝った。
「き、昨日は、すみませんでした。失礼なこと、言っちゃって・・」
アロンは何事だ?と様子の分からない顔をして頭を下げてる裕美子を見た。
リーダーは少し顔を赤らめると、ややばつの悪そうに照れたような笑顔を返し、
「ああ、も、問題ありません。気にしてませんから。ははは」
と返答すると、アロンの方に向き直って、
「君、まだ今月の安全巡視やってないみたいだぞ。期日までに終わらせろよ」
と先ほどとは違って威厳を保った調子で言った。
「あん?安全巡視?」
「まさか、忘れたわけじゃないだろうな」
そこにドジ担任がガラッとドアを開けて入ってきた。
「おりゃー!席につけ席に!!」
チャンは注意をさらに促すようにピッとアロンを指差すと、自席に戻っていった。
「安全巡視?・・あれか、巡視カードとやらに丸つけて出すやつ」
そして机の中をごそごそして大き目のカード状のものを取り出すと、丸をつけ始めた。
アロンを見てた裕美子は、慌てたように上半身を跳ね上げた。
『ちょっ!巡視しないで丸つけてる!』
思わず手を伸ばしてアロンの二の腕の服を掴む。
「み、見回り、してないじゃないですか」
しまったというような顔をこっちに向けた。提出先の生徒会の人間が横にもいたことを忘れてたみたいだ。
ひとまずドジ先生のいる教壇の方を指差して前を向けさせ、この続きはホームルームの後にした。
ホームルームが終わり、ドジ先生が教室を出て行った。
すかさずアロンの方をちらりと見る。
既に丸が付いたらしい安全巡視カードを持っているが、まさか今更、提出先たる生徒会委員の裕美子がこれを受け取るとは思っていまい。
「・・もしかして、先月もそのように?」
へへへっと笑ってる。かわいい・・。だ、だけど、これはいけないことだわ。
「あ、あのですね・・・」
これから注意しようとしているのに、好きな人を前にしてこっちの顔が火照ってきた。
ツンデレならここでそれを隠すように思いっきり強気で文句言うんだろうが、感情があまり表に出ないというキャラの裕美子は、実際の気持ちとはかけ離れて、つんとすることもなければ、恥ずかしそうにすることもなく、どもってはいるがなんとなく事務的な口調で言った。
「ちゃ、ちゃんと見回ってから記しつけてもらわないと、困ります。何かあったとき責められちゃうのは、あなたですよ。せ、生徒会委員としても、連帯責任があります。そのままでは、受け取れません」
「すんません」
「わ、わたしも・・・あの、付き合うから、い、いつやるか、決めましょう」
「え?!」
「放課後か・・ううん、時間かかるものじゃないし、朝ちょっと早く来てやりましょう」
「でも、わりーよ。俺の係りのことなのに」
「わ、悪いと思うなら・・、そんなずる無しで、期日までに忘れずやっていただけてれば、わたしもこんな事言わないで済むんですが・・・」
『本当は、そうじゃないんだけど・・』
「す、すんません」
「じゃあ、明日の朝にでもさっそく」
「あ、朝か。起きられっかなあ」
「先日レソフィックさんの家で、朝ちゃんと目覚ましてましたよね。寝起きはそんな悪そうじゃないみたいでしたが・・」
秘密を知られた子供のように、少し赤くなって・・・かわいい、アロン君・・
「あ、明日じゃなくて、今度の金曜の朝でいいか?」
金曜がまだ期日前な事を確認すると、裕美子は頷いた。
「わかりました。今度の金曜の朝、7時45分に、教室で」
「お、起きられっかなあ」
「・・・女の子、待たせるようなこと、しちゃいけませんですよ・・」
「し、仕事じゃなけりゃぁなー」
次回「第2部:第7章 隣町への買い物(2):放課後のお誘い」へ続く!
前回のお話「第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(19):リーダー告白失敗」
対応する第1部のお話「第1部:第10章 リーダー相談する(1):リーダーの相談」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
Copyright(c) 2009-2013 TSO All Rights Reserved
この後、
「第1部:第10章 リーダー相談する(1):リーダーの相談」
と
「第1部:第10章 リーダー相談する(2):カーラもついでに」
と続くのですが、第1部の話を知らないか忘れちゃった方、話の全容を把握したい方は、ぜひこちらにも目を通していただけたらと思います。
あえてリーダー達の根回しを知らずに、裕美子と同じ視点だけで読み進めるというのもアリです。そういう方は本第2部第7章が終わったところで第1部第10章を読んでいただければと思います。
※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。
ぽちっと応援してください。
<第2部:第7章 隣町への買い物(1):安全巡視>
だいぶ前回のお話し「リーダー告白失敗」から間が空きましたが、物語は前回の翌日から始まります。
(前回のお話しを忘れちゃった方はぜひもう一度目読み返していただけると、すんなり繋がると思います。)
リーダーが裕美子に告白するのを失敗した翌日。
いつものようにホームルームぎりぎりにアロンが登校してくると、そこへ向かってリーダーが歩いてきた。隣の席の裕美子は真っ先に立ち上がるとリーダーにぺこっと頭を下げて謝った。
「き、昨日は、すみませんでした。失礼なこと、言っちゃって・・」
アロンは何事だ?と様子の分からない顔をして頭を下げてる裕美子を見た。
リーダーは少し顔を赤らめると、ややばつの悪そうに照れたような笑顔を返し、
「ああ、も、問題ありません。気にしてませんから。ははは」
と返答すると、アロンの方に向き直って、
「君、まだ今月の安全巡視やってないみたいだぞ。期日までに終わらせろよ」
と先ほどとは違って威厳を保った調子で言った。
「あん?安全巡視?」
「まさか、忘れたわけじゃないだろうな」
そこにドジ担任がガラッとドアを開けて入ってきた。
「おりゃー!席につけ席に!!」
チャンは注意をさらに促すようにピッとアロンを指差すと、自席に戻っていった。
「安全巡視?・・あれか、巡視カードとやらに丸つけて出すやつ」
そして机の中をごそごそして大き目のカード状のものを取り出すと、丸をつけ始めた。
アロンを見てた裕美子は、慌てたように上半身を跳ね上げた。
『ちょっ!巡視しないで丸つけてる!』
思わず手を伸ばしてアロンの二の腕の服を掴む。
「み、見回り、してないじゃないですか」
しまったというような顔をこっちに向けた。提出先の生徒会の人間が横にもいたことを忘れてたみたいだ。
ひとまずドジ先生のいる教壇の方を指差して前を向けさせ、この続きはホームルームの後にした。
ホームルームが終わり、ドジ先生が教室を出て行った。
すかさずアロンの方をちらりと見る。
既に丸が付いたらしい安全巡視カードを持っているが、まさか今更、提出先たる生徒会委員の裕美子がこれを受け取るとは思っていまい。
「・・もしかして、先月もそのように?」
へへへっと笑ってる。かわいい・・。だ、だけど、これはいけないことだわ。
「あ、あのですね・・・」
これから注意しようとしているのに、好きな人を前にしてこっちの顔が火照ってきた。
ツンデレならここでそれを隠すように思いっきり強気で文句言うんだろうが、感情があまり表に出ないというキャラの裕美子は、実際の気持ちとはかけ離れて、つんとすることもなければ、恥ずかしそうにすることもなく、どもってはいるがなんとなく事務的な口調で言った。
「ちゃ、ちゃんと見回ってから記しつけてもらわないと、困ります。何かあったとき責められちゃうのは、あなたですよ。せ、生徒会委員としても、連帯責任があります。そのままでは、受け取れません」
「すんません」
「わ、わたしも・・・あの、付き合うから、い、いつやるか、決めましょう」
「え?!」
「放課後か・・ううん、時間かかるものじゃないし、朝ちょっと早く来てやりましょう」
「でも、わりーよ。俺の係りのことなのに」
「わ、悪いと思うなら・・、そんなずる無しで、期日までに忘れずやっていただけてれば、わたしもこんな事言わないで済むんですが・・・」
『本当は、そうじゃないんだけど・・』
「す、すんません」
「じゃあ、明日の朝にでもさっそく」
「あ、朝か。起きられっかなあ」
「先日レソフィックさんの家で、朝ちゃんと目覚ましてましたよね。寝起きはそんな悪そうじゃないみたいでしたが・・」
秘密を知られた子供のように、少し赤くなって・・・かわいい、アロン君・・
「あ、明日じゃなくて、今度の金曜の朝でいいか?」
金曜がまだ期日前な事を確認すると、裕美子は頷いた。
「わかりました。今度の金曜の朝、7時45分に、教室で」
「お、起きられっかなあ」
「・・・女の子、待たせるようなこと、しちゃいけませんですよ・・」
「し、仕事じゃなけりゃぁなー」
次回「第2部:第7章 隣町への買い物(2):放課後のお誘い」へ続く!
前回のお話「第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(19):リーダー告白失敗」
対応する第1部のお話「第1部:第10章 リーダー相談する(1):リーダーの相談」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
Copyright(c) 2009-2013 TSO All Rights Reserved
この後、
「第1部:第10章 リーダー相談する(1):リーダーの相談」
と
「第1部:第10章 リーダー相談する(2):カーラもついでに」
と続くのですが、第1部の話を知らないか忘れちゃった方、話の全容を把握したい方は、ぜひこちらにも目を通していただけたらと思います。
あえてリーダー達の根回しを知らずに、裕美子と同じ視点だけで読み進めるというのもアリです。そういう方は本第2部第7章が終わったところで第1部第10章を読んでいただければと思います。
※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。
ぽちっと応援してください。
にほんブログ村 |
にほんブログ村 |
にほんブログ村 |
☆☆ 災害時 安否確認 ☆☆
訪問・nice返しありがとうございます。
私のブログでは、コーヒー豆の試飲キャンペーンを開催中です。
抽選で5名様に無料でコーヒー豆(挽くことも可能)
をプレゼント中です。ご参加お待ちしています。
by chokou (2013-12-07 12:42)
chokouさん、ぼんぼちぼちぼちさん、yamさん、mahimahiさん、やってみよう♪さん、ネオ・アッキーさん、bitさん、有城佳音さん、青竹さん、いっぷくさん、niceありがとうございます。
chokouさん、コメントありがとうございます。またおいでください。ウチはコーヒー挽く道具がないのですり鉢で擂ったことがありますが、凄い大変でした。でも立つ香りは最高~
by TSO (2013-12-14 22:46)