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<第2部:第9章 宿探しと美女の告白と許嫁(6):美女の告白> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第322回
<第2部:第9章 宿探しと美女の告白と許嫁(6):美女の告白>


最近裕美子はお昼をハウル達と一緒に取っている。この日も誘われて学食に行った。
窓の方に空いてた席を確保しようとしたら、クリスティンが

「あ、ちょっと待ってて」

と脇に逸れていった。

「クリスティンどうしたの?」

カーラが目で追っていくと、クリスティンは観葉植物に囲まれて見通しの悪そうな一角に行った。そこには今着いたばかりらしいアロン、勇夫、レソフィックがいた。そして彼らを連れて戻ってきた。

「へへ、誘っちゃったぁ」

ニコニコ顔を向けられ、カーラがぽんとほっぺたを赤くした。

「ホタル鑑賞も一緒にした仲だし、いいよねぇ」
「こないだ連れてってやったお礼に、なんか奢ってくれんのか?」

ホタル鑑賞ツアーの引率者はアロンだったのに、さも自分が主宰のように勇夫が出てきた。

「んなコトあるわけないじゃん。遊んであげたんだから感謝されこそすれ・・うぐぐぐぐ」

またきな臭くなりそうなことを言い出しそうなので、カーラがハウルの口を塞いだ。

「奢る事はできないけど、また遊ぼうねって言ったのよ。うふふふ」

口を塞がれたハウルに代わってクリスティンが答えた。

「あんなのでよけりゃ」
「いいんじゃねぇ?」

アロンとレソフィックはさほど深く思慮することもなく返事した。

「今日は裕美子も学食の食べるの?」
「はい。お弁当ではありませんので」
「先行ってきていいよ。俺ら席取っとくから」
「ありがと!ささっと行ってくるね」

女子が先に食事を取りに行った。

ささっと行ってくると言ったハウルがまたサラダバーのところで時間をかけているので、ハウル以外が戻ってきたところで男子が取りに行った。
男子が戻ってくると、勇夫のプレートに女子、特にハウルの目が釘付けになった。

「そ、それどうやったの?」

勇夫のサラダは、皿の直径の2倍くらいにコールスローが広がって乗っかっていた。

「勇夫!ちょっとそれご主人様に見せなさい!」
「はあ?誰がご主人様だ?」

ハウルは勇夫の席の隣に移動すると、勇夫を押し出しそうなほどくっついてまじまじとそのサラダを観察し始めた。

「ええー?ああ、なるほど。硬いレタスの葉で器を広げて、その上に乗せてるんだ。すごい方法じゃん、へー見直したわー」

ハウルがキラキラした目を勇夫に注いだ。

「へへん。家で飯作るときに実験してるからな。日頃の鍛錬の賜物ってやつよ。なんならこの技使う許可与えてもいいぞ」
「うんうん、使う使う。アンタやっぱ私の僕として見込んだだけのことはあるわー」
「誰がしもべだ!」

アロンとカーラが呆れた目線を投げ返した。

「勇夫のこれを褒める奴がいるとは・・」
「またハウルがパワーアップしちゃうじゃない。やだもうー、恥ずかしくって一緒にいらんないよ」





少し食が進んだ頃、クリスティンはカーラの様子を伺った。カーラは皿に目を落としてもくもくと食べてる。窓の外に目を移すと、木陰の下のベンチでサンドイッチを食べている人がいた。しばしその様子を見た後、口を開いた。

「学食のメニューも飽きましたね。たまにはお弁当にして外で食べましょうか」

クリスティンが窓の方に向いているのを見て、アロンも外に目をやった。空は雲ひとつない青空だった。

「外で食うのいいねえ。それだけで飯がうまくなるもんな」

クリスティンは室内に目を戻すと、

「カーラ、お弁当作ってみたら?」

とカーラの方を向いて言った。ちらっと目線を上げたカーラと目が合ったところで、

「ついでにアロン君の分も」

と付け加えた。
カーラは口に入れようとしていたジャガイモをポロリと落っことして

「ええ?!」

とびっくりした。
するとレソフィックが皮肉をにじませて言った。

「お前ら、食う専門じゃなかったっけ?作れんのかよ?」

女の子で一番食うハウルが真っ先に反論した。

「いつぞやか作ってあげたじゃん」

いつぞやとはレソフィックの家で広報記事作りをしたときのことだろう。

「あれ、小泉だろ作ったの」

アロンが即行で突っ込んだ。

「みんなでよ、みんな!」

ハウルが抵抗するが、そんなの聞こえないかのようにアロンは裕美子の方に向いた。

「特別なやつかと思ったら、俺らもよく使ってるパスタソースがベースだったんだよね。あれがあんなに変貌するなんて驚きだったなあ」

すると、いつも無表情なのに、珍しく裕美子が照れているのが見てとれた。それでもまだハウルは抵抗する、

「すごいでしょ。私も作るのに加わってるのよ」
「だからお前はせいぜい食器運びくらいにだろ」

レソフィックが再びハウルを突っぱねたところで、照れ隠しか、裕美子が元のお弁当に話を戻した。

「でもお弁当は大変ですよ。ピクニック行くとかでそれ用に作るならともかく、学校のお昼ご飯のために毎日つくるのは慣れが必要です」

きっかけ作りをしたかっただけのクリスティンはちょっと焦った。話自体がなくなっちゃったら元も子もない。ハウルにもアイコンタクトを送ると、この辺はツーカーの2人、すぐ通じ合った。

「毎日やろうってわけじゃなくて、たまによ、たまに。気分転換だって」
「買ったものでもいいじゃん。あした天気よかったら外でお昼食べよー。いいよね?いいね?いいわね?」

半ば押し付けるようなハウルだったが、もともと野外好きのアロン、「俺、いいよ」とすぐ同意した。
「わ、わたしも」とカーラも賛同する。
裕美子は食後のお茶を飲みながら考えた。

『気分転換に外でお弁当か。緩い授業しかないときだし、少し早起きしてみんなでつまめるものでも作ってこうかな。でもそれこそピクニック行くみたいよねえ』

学校のお弁当ごときにちょっと楽しみ過ぎかなと思ったところで、もう一人はしゃぎだしたのがいた。

「わーい、バーベキューだ」

勇夫だった。さすがに火を熾して何か調理し出したら学校も見逃してくれないだろう。すぐレソフィックがたしなめた。

「そりゃちょっと違うぞ。その道具持ってきたら、ドジ担任に没収されるぞ」

しかしクリスティンはすごい期待する顔になって身を乗り出して勇夫に尋ねた。

「そういう道具も持ってるんですか?」
「まかせろ。俺ら3人で道具は揃ってる」
「今度、やりましょうよ」
「いいよ。なあ」

勇夫はレソフィックとアロンの方に振り返った。2人は顔を見合わせると、ため息をついた。

「学校じゃなくて、どっか河原とかでな」
「あ?河原?おーし、夏休み入ったらどっかでやってやるよ」
「ほんとう?勇夫くーん、ぜったいよぉー」

盛り上がっているところに突如ダーニャが現れた。

「アロン君、ちょっといい?来てもらいたいんだけど」

アロンの肩がびくっ!と上がった。声の方へ振り向いてダーニャだと確認すると、引きつった笑顔で

「ど、どこへ?」

と聞いた。

「会いたいって人がいるの。早く早く」

ダーニャはアロンの腕を引っ張って席を立たせた。アロンはあまり行きたくないようだったが、ぐいぐいと引っ張るダーニャにほとんど抵抗できずにどこかへ連れてかれてしまった。4人の女の子はキョトンとした目でその様子を目で追っていった。
食堂から見えなくなったところで

「なにあれ?」

とハウルが振り返りながら言った。すると勇夫とレソフィックが顔を突き合わせ、

「とうとう来たか」
「来たな」

と相槌を打った。

「何が来たの?」

カーラがレソフィックに問いかける。

「告白だ。アロンに」
「ええ?ダーニャが?!」

カーラがびっくりして聞き返した。びっくりしたのはカーラだけじゃない。裕美子も前のめりになった。しかしレソフィックの返答に一同はもっとびっくりした。

「違う。美女だ」
「ええええー?!」


次回「第2部:第9章 宿探しと美女の告白と許嫁(7):許嫁」へ続く!

前回のお話「第2部:第9章 宿探しと美女の告白と許嫁(5):宿を探せ(5)」


対応する第1部のお話「第1部:第13章 夏のエピソード前編(3):とうとう来た!」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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対応する第1部第13章「夏のエピソード前編(3):とうとう来た!」と同じ場面ですが、少し前から始まりました。第1部では挿絵も入ってましたね。改めて載せますとこんなのでした。


13章_3_011挿絵s.jpg

13章_3_012挿絵s.jpg

13章_3_021挿絵s.jpg

13章_3_022挿絵s.jpg

クリックすると大きくなります?

裕美子ちゃんはこの頃まで脇役なので、挿絵でも意図的に魅力半減させてます。(^^;



※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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by TSO (2014-08-28 20:43) 

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