<第2部:第10章 夏のエピソード(2):快速シーサイドライン号」> [片いなか・ハイスクール]
「片いなか・ハイスクール」連載第326回
<第2部:第10章 夏のエピソード(2):快速シーサイドライン号」>
片いなか線が主要幹線と繋がる乗換駅でわたし達は降りると、駅のコンコースにある待合所のベンチに座った。
「次の便でジョン達が来て、その次ので美女達が来て、その次のでアンザック達が来るから、みんな揃うのに1時間近くかかるわよ」
「こんなに警戒する必要あるのぉ~?」
クリスティンさんがそう言っているところで、C組連絡用チャットルームにミシェルさんからのメッセージが飛び込んできた。
・・(俺らの乗ってる電車に学年主任の先生が乗ってるのを発見した。注意されたし)・・
「ほーら、見なさい。全員一緒だったら見つかってるわ。ミシェル達だけなら隠れられるし、見つかっても彼らだけで遊びに行くならぜんぜん不思議に思われないわ」
カーラさんがわたしの肩にすり寄りながら
「悪知恵はユミちゃん並に働くのねえ」
と意地悪そうに笑った。
「悪知恵?酷い言われようね」
「この駅で先生が降りるなら、わたし達も気を付けないとですよ」
最後のアンザックさん達も到着し、次の乗り継ぎ電車のホームでC組のみんなは初めて顔を合わした。
「よう、みんな元気か?」
「見つかった人いないでしょうね?」
「リーダー、学年主任に声掛けられてたぞ」
「なに!余計なこと喋ってねえだろうな?」
「と、都会の本屋に行こうとしてるとこですって言っといたよ。ハハハハ」
「旅行鞄持ってか!アホかあんたは」
「な、何を言う!『そうか、そうか』って言って納得してたぞ!少し怪訝な顔してたけど」
「大丈夫か?つけられてはねぇだろうな」
突っ込まれまくるリーダーだが、つけられてる様子もないと分かると、いよいよ次の電車に乗ることになった。
「よーし。じゃあ乗り込むよー」
ハウルさんが先頭に立ってホームに入ってきた水色の電車に乗り込んだ。わたし達が乗ったのは快速シーサイド直通乗り入れ号。内陸と海岸部を結ぶ縦幹線を走って海の方へ向かい、海岸に出たら今度は海岸に沿って走るシーサイド線を行く電車だ。直通乗り入れなのでシーサイド線に乗り換えなくて済む便利な電車だった。シーサイド線は海沿いの観光地をいくつも結ぶ線なので、車内は海水浴装備の客がいっぱい乗っていた。
快速電車の中は、向かい合わせの4人掛けボックス席になっていたが、ほとんど埋まっていて、かろうじて1つ確保できた。
「レディファーストでいいのかしら?」
美女さんがアンザックさんに流し目で言うと
「も、もちろん。さあどうぞ」
とボックス席の入り口を開けた。
シャノンさんもさっさかボックス席に入り込むと、一緒に座る人を指名した。
「身体の小さい人なら3人いけるんじゃない?こいずみー、おいでー。あと一人はダーニャ」
わたしは遠慮して
「い、いえ、わたし大丈夫です」
と言ったが、
「途中で交代してもらうから、まずは座わちゃって」
とハウルさんに背中を押された。
「あと1っこは誰座る?」
「んとね、キャリー」
またもシャノンさんが指名した。
「いいの?」
「小型の私らの時じゃないと座れないよ?」
「へー、ちゃんと考えて指名してるんだ」
「あったりまえよ。私おねーさんだもん!」
小さい中でも一番小さいシャノンさんの正面が一番大きいキャリーさんになった。それでもやっぱり肩幅もあって足も長いキャリーさんは窮屈そうな感じだ。
「おねーさんのところに足乗せてもいいわよ」
シャノンさんが自分の膝の上をぽんと叩いた。キャリーさんは足を持ち上げ、くの字に曲がってはいるが、シャノンさんのもものところに乗っけて落ち着いた。その大きな足をまじまじと眺めたシャノンさんは、急ににやあっとすると、その足をコチョコチョしだした。
「ぶはあ!ぎゃはははは!何すんの!」
くすぐられてキャリーさんは反射的に足を伸ばしてしまい、それがわたしのお腹を蹴ってしまった。当たったところがよかったようでさして痛くもなかったが、キャリーさんは大慌てでわたしのところに謝りに来た。
「わああ!裕美子大丈夫?!シャノンばかあ!蹴っちゃたじゃない!」
「大丈夫です。痛くなかったです」
「こいずみ、鉄人・・」
シャノンさんが驚愕の表情をわたしに向けた。
「当たりどころがよかっただけですよ?」
「こいずみ、キャリーの殺人キックを跳ね返した!」
「だ、だから、そんなんじゃないですよ?」
「殺人キックじゃなーい!」
シャノンさんは冗談なんだか本気で言ってるのかわからなくて困る。そこにダーニャさんが手を伸ばしてきて、わたしのお腹をさすった。それは心配してというよりは、何かを確かめるような撫で方だった。
「あっ、無駄なお肉なくって意外と引き締まってる」
「ほんと?どれどれ」
「どれどれ」
「いやあ、みんなして触らないでくださいー」
「ふーん。美女は?美女は?」
「ちょっとシャノン、ひゃははは、アンタ触り方変よ」
アンザックさんが目をギラつかせて
「お、俺も!」
と言うが早いか、ハウルさんのチョップが額に入り、皆まで言う前にパウロさんの所に倒れた。
「美女も隙がないね」
と、わたしの膝の上を越えて絶世の美女さんのお腹を変な風にこねくり回してたシャノンさんは、わたしの膝の上に乗ったまま、元々おへそを出した服装で腹筋もりもりが見えてるのキャリーさんを通り越して、わたしの左横のダーニャさんで目を止めた。
「え?だ、だめ!あたしは・・!」
これまた拒否する間もなくシャノンさんの手がむんずとダーニャさんのお腹を掴んだ。
「ひぃっ!」
引きつったダーニャさんを、お腹掴んだまま固まったシャノンさんが見上げた。
「・・・ダーニャ、背低いから小型だと思ったら」
「い、言わないで!」
「失敗したわ!これならイザベルに座ってもらった方が広かったかも!」
「いゃあああ!」
わたしの膝の上でシャノンさんとダーニャさんの揉み合いが始まった。いい加減にしなさいと、キャリーさんが長い手を伸ばして二人を止める。
美女さんが不機嫌そうな顔で
「せっかく座ったのに、ぜんぜん落ち着かないわ」
と言った。
『あわわ、怒らせちゃった』
わたしはビクついてしまった。しかし美女さんと一番仲いいダーニャさんがちょっかい出すと笑顔で答えてたので、本当に怒ってしまったのではないみたいだ。
よかった。
「ダーニャ、水着平気なの?」
「シャルロットまでそいうこと言う!平気だもん、ちゃんと着れたから。事前に確かめてあるんだからね」
「ならいいけど」
「言っとくけど、気にしてたのお腹じゃなくて上の方だからね。成長してんだよ」
「わかったわかった。セパレートだからって上だけとか下だけ買い替えるってのも難しいもんねえ。1年でモデルチェンジしちゃうし」
「あの、す、すみません。ダーニャさんの水着って、セパレートなんですか?」
わたしは思わず聞いてしまった。ハウルさん達との移動の時、みんなの水着のことが話題になったのだけど、その時みんなビキニタイプの水着だと知った。ダーニャさんはなんとなくワンピースかなと思っていたので、心配になって聞いてしまったのだ。
も、もしかして、みんなセパレート?
「そうよ?裕美子さん違うの?」
「はい・・。わたしはワンピースです。デニムのズボンも履いて・・」
「あらもったいない。スマートそうな体してるのに」
「い、いえ、たぶん成長してないだけです」
「私もセパレートだよ!」
シャノンさんが胸を張った。
「ほら、こんな成長とは無縁そうな人もそうなのに」
「成長してるよ!それにこいずみより胸おっきいから!」
「あはは・・」
わたしは赤くなってしまった。よかった、こんな話、アロン君に聞かれなくて。・・他の男の子なら聞かれてもいいのかっていうと、そんなことないんだけど・・。
次回「第2部:第10章 夏のエピソード(3):特急の通過を待ってます」へ続く!
前回のお話「第2部:第10章 夏のエピソード(1):海へ出発」
対応する第1部のお話「第1部:第14章 夏のエピソード後編(1):臨海学校開校!」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
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久々の片いなか・ハイスクールです。
いっぱい加筆して、いまだこの章書き終わってません。(^^;
更新に穴が開くかも・・
※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。
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<第2部:第10章 夏のエピソード(2):快速シーサイドライン号」>
片いなか線が主要幹線と繋がる乗換駅でわたし達は降りると、駅のコンコースにある待合所のベンチに座った。
「次の便でジョン達が来て、その次ので美女達が来て、その次のでアンザック達が来るから、みんな揃うのに1時間近くかかるわよ」
「こんなに警戒する必要あるのぉ~?」
クリスティンさんがそう言っているところで、C組連絡用チャットルームにミシェルさんからのメッセージが飛び込んできた。
・・(俺らの乗ってる電車に学年主任の先生が乗ってるのを発見した。注意されたし)・・
「ほーら、見なさい。全員一緒だったら見つかってるわ。ミシェル達だけなら隠れられるし、見つかっても彼らだけで遊びに行くならぜんぜん不思議に思われないわ」
カーラさんがわたしの肩にすり寄りながら
「悪知恵はユミちゃん並に働くのねえ」
と意地悪そうに笑った。
「悪知恵?酷い言われようね」
「この駅で先生が降りるなら、わたし達も気を付けないとですよ」
最後のアンザックさん達も到着し、次の乗り継ぎ電車のホームでC組のみんなは初めて顔を合わした。
「よう、みんな元気か?」
「見つかった人いないでしょうね?」
「リーダー、学年主任に声掛けられてたぞ」
「なに!余計なこと喋ってねえだろうな?」
「と、都会の本屋に行こうとしてるとこですって言っといたよ。ハハハハ」
「旅行鞄持ってか!アホかあんたは」
「な、何を言う!『そうか、そうか』って言って納得してたぞ!少し怪訝な顔してたけど」
「大丈夫か?つけられてはねぇだろうな」
突っ込まれまくるリーダーだが、つけられてる様子もないと分かると、いよいよ次の電車に乗ることになった。
「よーし。じゃあ乗り込むよー」
ハウルさんが先頭に立ってホームに入ってきた水色の電車に乗り込んだ。わたし達が乗ったのは快速シーサイド直通乗り入れ号。内陸と海岸部を結ぶ縦幹線を走って海の方へ向かい、海岸に出たら今度は海岸に沿って走るシーサイド線を行く電車だ。直通乗り入れなのでシーサイド線に乗り換えなくて済む便利な電車だった。シーサイド線は海沿いの観光地をいくつも結ぶ線なので、車内は海水浴装備の客がいっぱい乗っていた。
快速電車の中は、向かい合わせの4人掛けボックス席になっていたが、ほとんど埋まっていて、かろうじて1つ確保できた。
「レディファーストでいいのかしら?」
美女さんがアンザックさんに流し目で言うと
「も、もちろん。さあどうぞ」
とボックス席の入り口を開けた。
シャノンさんもさっさかボックス席に入り込むと、一緒に座る人を指名した。
「身体の小さい人なら3人いけるんじゃない?こいずみー、おいでー。あと一人はダーニャ」
わたしは遠慮して
「い、いえ、わたし大丈夫です」
と言ったが、
「途中で交代してもらうから、まずは座わちゃって」
とハウルさんに背中を押された。
「あと1っこは誰座る?」
「んとね、キャリー」
またもシャノンさんが指名した。
「いいの?」
「小型の私らの時じゃないと座れないよ?」
「へー、ちゃんと考えて指名してるんだ」
「あったりまえよ。私おねーさんだもん!」
小さい中でも一番小さいシャノンさんの正面が一番大きいキャリーさんになった。それでもやっぱり肩幅もあって足も長いキャリーさんは窮屈そうな感じだ。
「おねーさんのところに足乗せてもいいわよ」
シャノンさんが自分の膝の上をぽんと叩いた。キャリーさんは足を持ち上げ、くの字に曲がってはいるが、シャノンさんのもものところに乗っけて落ち着いた。その大きな足をまじまじと眺めたシャノンさんは、急ににやあっとすると、その足をコチョコチョしだした。
「ぶはあ!ぎゃはははは!何すんの!」
くすぐられてキャリーさんは反射的に足を伸ばしてしまい、それがわたしのお腹を蹴ってしまった。当たったところがよかったようでさして痛くもなかったが、キャリーさんは大慌てでわたしのところに謝りに来た。
「わああ!裕美子大丈夫?!シャノンばかあ!蹴っちゃたじゃない!」
「大丈夫です。痛くなかったです」
「こいずみ、鉄人・・」
シャノンさんが驚愕の表情をわたしに向けた。
「当たりどころがよかっただけですよ?」
「こいずみ、キャリーの殺人キックを跳ね返した!」
「だ、だから、そんなんじゃないですよ?」
「殺人キックじゃなーい!」
シャノンさんは冗談なんだか本気で言ってるのかわからなくて困る。そこにダーニャさんが手を伸ばしてきて、わたしのお腹をさすった。それは心配してというよりは、何かを確かめるような撫で方だった。
「あっ、無駄なお肉なくって意外と引き締まってる」
「ほんと?どれどれ」
「どれどれ」
「いやあ、みんなして触らないでくださいー」
「ふーん。美女は?美女は?」
「ちょっとシャノン、ひゃははは、アンタ触り方変よ」
アンザックさんが目をギラつかせて
「お、俺も!」
と言うが早いか、ハウルさんのチョップが額に入り、皆まで言う前にパウロさんの所に倒れた。
「美女も隙がないね」
と、わたしの膝の上を越えて絶世の美女さんのお腹を変な風にこねくり回してたシャノンさんは、わたしの膝の上に乗ったまま、元々おへそを出した服装で腹筋もりもりが見えてるのキャリーさんを通り越して、わたしの左横のダーニャさんで目を止めた。
「え?だ、だめ!あたしは・・!」
これまた拒否する間もなくシャノンさんの手がむんずとダーニャさんのお腹を掴んだ。
「ひぃっ!」
引きつったダーニャさんを、お腹掴んだまま固まったシャノンさんが見上げた。
「・・・ダーニャ、背低いから小型だと思ったら」
「い、言わないで!」
「失敗したわ!これならイザベルに座ってもらった方が広かったかも!」
「いゃあああ!」
わたしの膝の上でシャノンさんとダーニャさんの揉み合いが始まった。いい加減にしなさいと、キャリーさんが長い手を伸ばして二人を止める。
美女さんが不機嫌そうな顔で
「せっかく座ったのに、ぜんぜん落ち着かないわ」
と言った。
『あわわ、怒らせちゃった』
わたしはビクついてしまった。しかし美女さんと一番仲いいダーニャさんがちょっかい出すと笑顔で答えてたので、本当に怒ってしまったのではないみたいだ。
よかった。
「ダーニャ、水着平気なの?」
「シャルロットまでそいうこと言う!平気だもん、ちゃんと着れたから。事前に確かめてあるんだからね」
「ならいいけど」
「言っとくけど、気にしてたのお腹じゃなくて上の方だからね。成長してんだよ」
「わかったわかった。セパレートだからって上だけとか下だけ買い替えるってのも難しいもんねえ。1年でモデルチェンジしちゃうし」
「あの、す、すみません。ダーニャさんの水着って、セパレートなんですか?」
わたしは思わず聞いてしまった。ハウルさん達との移動の時、みんなの水着のことが話題になったのだけど、その時みんなビキニタイプの水着だと知った。ダーニャさんはなんとなくワンピースかなと思っていたので、心配になって聞いてしまったのだ。
も、もしかして、みんなセパレート?
「そうよ?裕美子さん違うの?」
「はい・・。わたしはワンピースです。デニムのズボンも履いて・・」
「あらもったいない。スマートそうな体してるのに」
「い、いえ、たぶん成長してないだけです」
「私もセパレートだよ!」
シャノンさんが胸を張った。
「ほら、こんな成長とは無縁そうな人もそうなのに」
「成長してるよ!それにこいずみより胸おっきいから!」
「あはは・・」
わたしは赤くなってしまった。よかった、こんな話、アロン君に聞かれなくて。・・他の男の子なら聞かれてもいいのかっていうと、そんなことないんだけど・・。
次回「第2部:第10章 夏のエピソード(3):特急の通過を待ってます」へ続く!
前回のお話「第2部:第10章 夏のエピソード(1):海へ出発」
対応する第1部のお話「第1部:第14章 夏のエピソード後編(1):臨海学校開校!」
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久々の片いなか・ハイスクールです。
いっぱい加筆して、いまだこの章書き終わってません。(^^;
更新に穴が開くかも・・
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