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<第2部:第10章 夏のエピソード(5):夕食前にシャワーです> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第329回
<第2部:第10章 夏のエピソード(5):夕食前にシャワーです>


「じゃあ、C組臨海学校、開校しまーす。1時間後に水着に着替えた状態で再びここの広場に集合。よろしくなー!」
「はーい」

荷物を下ろし身軽になると、いよいよ来たなという感じになった。臨海学校なんてジョンさんは言ってたけど、学校行事じゃないからみんな遊ぶ気満々だ。わたしこんなところに混ざってて大丈夫だろうか。

水着に着替えたみんなは、遊び道具を一杯抱えて、防波堤から海岸に降りる階段のうち宿に一番近いところから浜辺へ出た。ダリ・ビーチは7~8キロもある長い浜で、両端は岬。中央が真っ白な石英の砂の砂浜で、両端の岬に近い方は岩場のある磯になってる。宿はダリ・ビーチのほぼ真ん中だ。少し小さな突堤があって、そこに吹き溜まるように砂が積もるから、他の所より砂浜の厚みがある。広くなっているので、無料で使えるビーチバレーコートなんかがあった。

みんなは思い思いに波打ち際で遊んだり、泳ぐ人、砂でお城作る人、勇夫君のように銛を担いで漁に出る人と、それぞれの楽しみ方をした。
アロン君は最初ビーチバレーをやっていて、わたしとリーダーは審判をやらされた。
その後アロン君の側にはいつも美女さんがいて、わたしは近寄りづらくて、ビーチバレーをやった人にジュースの差し入れを配ったときくらいしかアロン君のところに行けなかった。アロン君には許嫁がいるというのに、美女さんも全然お構いなしな感じ。自信ある人ってすごいな。
わたしは髪を濡らすのが嫌なので、せいぜい膝下を水に浸けたくらいで、あとは砂浜で過ごした。リーダーが盛んに誘いに来たけど、リーダーもアンザックさん達に引っ張られて、ビーチの沖500mくらいに浮かぶ岩礁まで連れてかれたりして、戻ってきたらずいぶん疲れた様子だった。

こうした初日の昼間の出来事は、挿し絵もあるので、詳しくは第1部を読んで下さい。

<第1部 夏のエピソード後編(1):臨海学校開校!>

<第1部 夏のエピソード後編(2):美女の才能>


14章_1_01挿絵.jpg
絵はクリックすると少し大きく見れます

14章_1_021挿絵s.jpg




昼間、あれだけ泳いだりで遊んだりしたのに、宿の貸しコテージに戻ったみんなのほとんどはまだまだ元気一杯だった。一人を除いて。

部屋に入るなり、イザベルさんはバターンと音を立てて倒れ込んだ。

「さ、最低1時間は寝かせて・・」
「せめて着替えくらいした方がいいんじゃない?」
「いい。シャワーも着替えも後回し・・」

そう言うとイザベルさんは水着のままあっという間に寝息を立ててしまった。

「浜辺でもほとんどパラソルの下で寝てたのに」

シャノンさんがつんつん突っつくも起きない。

「1時間後に男子と集合して、夕飯の準備だからね。順番にシャワー行ってね。シャワールームは3人いっぺんに使えるわよ」

ハウルさんが早くも準備万端にタオルと着替えを抱えてシャワールームへ向かいつつ、みんなにアナウンスした。

「早く体に付いたこの塩っ気落としたいわ」

美女さんも大急ぎで支度してる。
ハウルさんが行くので、お付き人のようにいつもセットのクリスティンさんが慌ててパタパタしていると、ダーニャさんとキャリーさんが寄ってきた。

「ね、シャワー、一緒に行かない?」

クリスティンさん顔を上げると、珍しい顔ぶれに首を傾げた。

「あらぁ、珍しい。どういうお誘い?」
「べ、別にぃ?たまにはハウル以外とも交流してみない?なんて」

ダーニャさんは心なしか赤くなった顔でそう言うと、横のキャリーさんもこくこくと首を縦に振った。キャリーさんもなんだか緩んだ顔をしている。そこに準備の整ったシャノンさんがタオルと着替えを頭の上に乗せて横を通過しながら

「あんたら、クリスティンのおっぱい見たいんでしょ」

と一言。途端にぎくうっとしてひきつった笑顔でダーニャさんとキャリーさんが訳わかんない宇宙語で喋ってるかのような言い訳をまくし立てた。
一方クリスティンさんはいつものニコニコ顔を崩さずダーニャさん達に向き合う。

「そおかぁ、裸の交流ね。背中流しっことかするの?」
「え、え?そ、そんなことまでしちゃう?!」
「うふふふ。ダーニャちゃん、髪洗ってあげようか?ハウルがね、意外と髪洗うの上手なのよぉ。膝の上に頭乗せてね、ゆったりしながら丁寧に洗ってくれるの。気持ちいいのよぉー。あれ私もできるようにしたいの。でもね、私が同じことすると、お胸が顔に当たっちゃって邪魔だからいいって言われるのよねえ」

ダーニャさんとキャリーさんが顔を真っ赤にして「ひええ!」って引いてるんだか喜んでるんだか分からない顔をしてる。

「でも、ごめんねぇ。ここのシャワールーム、たしか一人用の大きさに仕切られてて、一緒には入れないと思うの。日本風の大浴場とかじゃないと、あれはできないわねぇ」

クリスティンさん、いったいどこでハウルさんとそんなことを・・。だいたいクリスティンさんとハウルさん、仲いいとはいえ、そんなこともしてんですか。

「キャリーさんもごめんねぇ。その鍛え上げられたら身体を洗ってあげたかったわねぇ。残念」
「ひゃ!」

あの大きなキャリーさんでさえ両手で体を覆って身を丸めた。いつも通りニコニコと変わらぬ顔で凄いこと言うクリスティンさん、一枚も二枚も上手だ。クリスティンさんは部屋のドアの方を見ると、ハウルさんに続いて美女さんとシャノンさんがもう行ってしまったことに気付き、

「よかったら一緒に行きましょうね?」

と逆にダーニャさんとキャリーさんを誘った。

「ひ、ひゃあ!」
「ど、どうか、お、お手柔らかに!」




わたしは髪が濡れると髪の質が変わってしまうので、それを知られたくないからみんなとはシャワー行かないよう、一人部屋を出た。夕食の食材を事前に見ておこうという言い訳もある。

ここの宿は自炊だった。食材の買い出しはアロン君や勇夫君達がやってくれることになっていて、彼らがメインにお肉を焼いてくれると言ってた。なので他の物は女の子側で作ることになり、適当に材料買っておくから適当に考えて作ってと頼まれてたのだ。
材料もわからないところで作れるかって美女さんが突っ込んだので、最低限お肉の付け合わせの野菜サラダの材料だけは買っておくよう言付けてある。後は本当に当地のお店の棚見て買うことになってた。

女子が泊まってる方のコテージには、男子が泊まってる方のより大きなキッチンがあった。企業の保養所になってただけあって、大人数の食事を用意できるよう大きな冷蔵庫やお鍋、バーベキューコンロなども完備されてて、調味料も自由に使える。前に泊まった人達の余った食材でダメになってない物も残っていて、ずいぶん潤沢な食材があることも分かった。

「これだけあればいろいろ作れそうですね」

ただ冷蔵庫に沢山のビールが入ってたのが気になった。これ、残り物じゃなくて、今回アロン君達が買い揃えたのよね。リーダー、許可するかしら。




キッチンを見終わって廊下を戻っていてると、シャワー2番手のクリスティンさん達が戻ってくるところだった。ダーニャさんとキャリーさんは、湯に当たったのとは違うような顔の赤みを帯びていたけど、まさか本当に背中流しっことかしたのかしら。

「あんな胸くっつけてたら、あたしバスケできないわ・・。あら、小泉さん。どこ行くの?」

首タオルを掴んで喋るキャリーさん、わたしから見ると天井の方から声が届いた。

「あ、あの、夕食の食材何買ってあるのか確認しに。今のうち見ておかないと、メニュー考える時間もあまりないですから」
「買った連中に責任取らせりゃいじゃん」

頬を膨らましてダーニャさんはプンプンと言う。

「でも、それ食べるのもわたし達ですし・・」
「あれ絶対男子共が女子力試してると思うのよね。陰謀よ陰謀」

クリスティンさんは対照的にふんわりとニコニコ顔でダーニャさんに返答した。

「ユミちゃん料理上手だから大丈夫よぉ。ユミちゃんに考えてもらえば安心よ」
「小泉さん料理上手なんだ。へえー。でもシャワーまだでしょ?早く行かないと時間なくなっちゃうよ?」
「あ、もう見終わったところです。これからシャワー行ってきます」
「ごめんね、私も手伝うけど、料理あんまできるわけじゃないから、作るものはお任せしちゃうわ。シャルロット手伝わせるといいよ。彼女は結構料理できるから」
「そ、そうなんですか?それはちょっと期待しちゃいます」
「じゃあユミちゃん、頼むねえ」
「はい」

部屋に戻っていく三人を見送った。




わたしは個別行動を取ってたし、イザベルさんは寝てるしで、カーラさんは一人寂しくシャワーに行ってた。わたしがシャワールームに着いた頃にはもう出た後だった。というか、そういうタイミングを狙ってたんだけど。

「遅いよ、ユミちゃん。どこにいたの?」

下着姿で髪にドライヤー当ててたカーラさんが心なしかむくれたように言った。

「ご、ごめんなさい。キッチンに食材見に行ってて・・」
「そんな事だと思ったわ。でも料理できる人、あたしも含めてほとんどいないから、ユミちゃん頼りだもんねえ。悪いね」
「うん・・。いいんですよ。こんな事くらいしか役に立てないし」
「そんなことないよ、大きな事だよお。いつも感謝してるんだよ?また一品何か教えてもらおうかな」

わたしへ向けたカーラさんの笑顔を見て、仲間として迎え入れられている事に、旅行に参加してよかったと思った。
でも、ちょっと見てて恥ずかしい。お風呂上がりの下着姿のカーラさんがすごく色っぽくて・・・。同い年なのに、身体のどこ見てもわたしなんかよりずっと立派で、見てはいけないと思いつつ、つい目がいってしまう。いいなあ。こんななら男の子も黙ってないよねぇ。・・・カーラさんでこれだったら、アロン君を誘惑中の美女さんなんかもっと・・・

「なーに?。じろじろ見ちゃって」
「あ!ご、ごめんなさい!」

いそいそと脱衣籠の所に行った。

「あ、あの、お料理、手伝ってくださいね。また簡単ですぐできるの、ありますから」
「わかった、オッケー」

水着の一部のデニムのズボンを脱いでると、もう服を着終わったカーラさんが、意味もなく髪をパタパタタオルで拭きながらわたしを見てるのに気付いた。

「な、なんでしょう」
「さっき見られてたから、あたしも・・」
「ええ?は、裸は見てないです!」
「いいじゃない、女同士なんだし」
「やだ、ハウルさんみたいなこと言わないでください。わたしのなんか見てもつまんないし・・」
「ふふ~ん、ユミちゃんはその微妙なとこが不思議に色っぽいのよ」
「やぁっ」

水着の上からバスタオルで体を隠してしまった。

「カ、カーラさんいなくなるまで、脱ぎません」

あはははは。
カーラさんはからからと笑った。

「ご飯食べられなくなっちゃうわ」

そう言ってシャワールームから出て行った。
出てったところで、本当にいなくなったか、そーっとドア開けて廊下まで確認してしまった。
うん。いません。

女の子同士でも、へんなじゃれ合いあるんだなぁ。体に変化が出てきた頃からはもう同級生とまともに付き合うことなかったから、こういうの慣れない。
・・・よく、広報の記事作りの時、男の人の家で雑魚寝なんてできたなあ。

さあ、イザベルさんが起きてくる前にさっさとシャワー浴びないと。


次回「第2部:第10章 夏のエピソード(6):中庭で夕食です(1)」へ続く!

前回のお話「第2部:第10章 夏のエピソード(4):ダリ・ビーチで露店に寄ってます」


対応する第1部のお話「第1部:第14章 夏のエピソード後編(1):臨海学校開校!」
 「第1部:第14章 夏のエピソード後編(2):美女の才能」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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インターネット環境をいろいろいじってまして、更新が遅くなってしまいました。
今回は少しお色気なお話も。クリスティンちゃん、動じませんね~。


※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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