<ダーニャの恋愛相談所(3)> [片いなか・ハイスクール]
「片いなか・ハイスクール」連載第29回
<ダーニャの恋愛相談所(3)>
その後、アロンはダーニャにしばらくちょっかいを出す。
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「ダーニャ、かばんにカギかけてるかー?」
アロンはダーニャのかばんをポンポンとたたいた。
「きゃー!やめてー!」
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体育のとき
「あれ、ノート持ってないの?どこに置いた?教室?更衣室?大丈夫かあ?取られないでくれよ」
「そんな四六時中肌身放さず持ってるわけないでしょ!」
-----
ダーニャの斜め後ろはアロンである。
ダーニャが席について黒いノートを広げていると、後ろからアロンが思わず声を上げた。
「うえ!あいつが依頼を?!」
「??!」
振り返るとアロンが自分の席で苦いものを口にしてまったような顔をしている。
「み、見えるの?そこから」
「視力、すごいいいんで・・」
パタン!とダーニャは勢いよく黒いノートを閉じた。
それ以来、ダーニャはノートを開く時、後方警戒が厳しくなった。
-----
そしてある日、ダーニャが自席でメモとろうと考えたその瞬間をアロンは逃さず、ペンケースをひょいと取り上げてくるくる回し始めた。
ダーニャはっと思う。
『こっ、これは、もしかして・・』
急に真っ赤な顔をすると、うつむきかげんに言い始めた。
「も、もしかしてアロン君・・私のことを?」
「え?」
「気を引こうとしている?このいたずらの数々は、好意の裏返し・・。そうならそうと言ってくれればいいのに」
アロンもカーッと赤くなる。
「ちっ、違うよ!」
しばしお互い赤い顔で向き合っていた。
囗を開いたのはアロンだ。
「ちょっと、やりすぎたな・・。いやその・・何も考えずにおもしろがってやっちまった。レソフィックが言った以上に俺子供だったな・・すまん。勇夫のこと言えねーや」
「え?違うの?・・もしその気なら・・OKしてもいいんだけど?」
アロンはもう少し大人になろうと思った。へたに間違い起こすと相手を不幸にし兼ねない。女の子は精神的に男よりずっと進んでいるのだ。
「わりい!」
アロンは手を合わせて謝った。
「そう・・。ちょっと期待しちゃった」
「お前、人の相談はともかく、自分はどうなのさ」
「ひ・み・つ。私もお客様かもねー」
その後しばらく経ったが、結局レソフィックのところには誰も来なかった。
待ちわびたレソフィックが疲れているのを見てアロンが
「俺がどうなったか聞いてやるよ」と言うと、
「まて、俺も行く」
というわけでアロンとレソフィックがダーニャのところへ行った。
「レソフィックがノイローゼになるぜ。いつくるかいつくるかーって気が抜けないらしいぞ」
「死刑囚ってこんな気持ちかな。なんか最近気になって寝れなくなってよ」
「あら、意外と繊細。メモっとこうかしら」
「やめてくれ」
「やっぱり本人に知られるのはよくなかったわね。次から気を付けよう。実は告白準備中ってことを知られてしまったとわかったら、依頼者の方が尻込みしちゃってね。断られちゃった。アロン君にも知られてしまって恥かしいって」
「なんだ、そうだったのか。ふー、釈放されたような気持ちだぜ。今夜はぐっすり寝れそうだ」
「悪かったわね、私の手際も悪くて」
「その子に言っといてくれよ。コソコソ隠れての恋愛じゃなくて、堂々と公にして恥ずかしくないようじゃなきゃ付き合う意味ないって」
「へえ、あいかわらず大人だなーお前は。言ってて恥ずかしくないか?」
「ま、お前が理解するのは10年先だな」
「じゃ勇夫は30年先かよ」
けたけたと3人は笑った。
「レソフィック君の考えもひとつだよね。でもそれが正解とは限らないし、すべてじゃない。あくまでも恋愛の考え方のひとつね」
「へえー、さすが恋愛相談所だな」
「だから恋は面白いんだって」
「そうかー。じゃ、その子にもうひとこと言っといてくれ。次がんばれって」
「ふふ、オッケー」
「で、お前自身はどうなの?」
レソフィックはまじめな顔をするとダーニャに聞いた。
ダーニャはしばらくレソフィックをじーっと見ると、
「・・・君ね、本気になったら言いに来て。からかってやるって目に書いてあるわよ」
「ええ!お見通し?!!」
ダーニャはニコッとすると黒いノートを抱えて
「ふふ、じゃあね」
とくるりときびつを返して去って行った。
「レソフィック、さっきのはからかったのかい?」
アロンが聞くと、うなずいた。そして、
「意外とすげーかもよ、あの恋愛相談所とやらは」
次回「俺の家は海賊(1)」へ続く!
前回のお話「ダーニャの恋愛相談所(2)」
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その後、アロンはダーニャにしばらくちょっかいを出す。
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「ダーニャ、かばんにカギかけてるかー?」
アロンはダーニャのかばんをポンポンとたたいた。
「きゃー!やめてー!」
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体育のとき
「あれ、ノート持ってないの?どこに置いた?教室?更衣室?大丈夫かあ?取られないでくれよ」
「そんな四六時中肌身放さず持ってるわけないでしょ!」
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ダーニャの斜め後ろはアロンである。
ダーニャが席について黒いノートを広げていると、後ろからアロンが思わず声を上げた。
「うえ!あいつが依頼を?!」
「??!」
振り返るとアロンが自分の席で苦いものを口にしてまったような顔をしている。
「み、見えるの?そこから」
「視力、すごいいいんで・・」
パタン!とダーニャは勢いよく黒いノートを閉じた。
それ以来、ダーニャはノートを開く時、後方警戒が厳しくなった。
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そしてある日、ダーニャが自席でメモとろうと考えたその瞬間をアロンは逃さず、ペンケースをひょいと取り上げてくるくる回し始めた。
ダーニャはっと思う。
『こっ、これは、もしかして・・』
急に真っ赤な顔をすると、うつむきかげんに言い始めた。
「も、もしかしてアロン君・・私のことを?」
「え?」
「気を引こうとしている?このいたずらの数々は、好意の裏返し・・。そうならそうと言ってくれればいいのに」
アロンもカーッと赤くなる。
「ちっ、違うよ!」
しばしお互い赤い顔で向き合っていた。
囗を開いたのはアロンだ。
「ちょっと、やりすぎたな・・。いやその・・何も考えずにおもしろがってやっちまった。レソフィックが言った以上に俺子供だったな・・すまん。勇夫のこと言えねーや」
「え?違うの?・・もしその気なら・・OKしてもいいんだけど?」
アロンはもう少し大人になろうと思った。へたに間違い起こすと相手を不幸にし兼ねない。女の子は精神的に男よりずっと進んでいるのだ。
「わりい!」
アロンは手を合わせて謝った。
「そう・・。ちょっと期待しちゃった」
「お前、人の相談はともかく、自分はどうなのさ」
「ひ・み・つ。私もお客様かもねー」
その後しばらく経ったが、結局レソフィックのところには誰も来なかった。
待ちわびたレソフィックが疲れているのを見てアロンが
「俺がどうなったか聞いてやるよ」と言うと、
「まて、俺も行く」
というわけでアロンとレソフィックがダーニャのところへ行った。
「レソフィックがノイローゼになるぜ。いつくるかいつくるかーって気が抜けないらしいぞ」
「死刑囚ってこんな気持ちかな。なんか最近気になって寝れなくなってよ」
「あら、意外と繊細。メモっとこうかしら」
「やめてくれ」
「やっぱり本人に知られるのはよくなかったわね。次から気を付けよう。実は告白準備中ってことを知られてしまったとわかったら、依頼者の方が尻込みしちゃってね。断られちゃった。アロン君にも知られてしまって恥かしいって」
「なんだ、そうだったのか。ふー、釈放されたような気持ちだぜ。今夜はぐっすり寝れそうだ」
「悪かったわね、私の手際も悪くて」
「その子に言っといてくれよ。コソコソ隠れての恋愛じゃなくて、堂々と公にして恥ずかしくないようじゃなきゃ付き合う意味ないって」
「へえ、あいかわらず大人だなーお前は。言ってて恥ずかしくないか?」
「ま、お前が理解するのは10年先だな」
「じゃ勇夫は30年先かよ」
けたけたと3人は笑った。
「レソフィック君の考えもひとつだよね。でもそれが正解とは限らないし、すべてじゃない。あくまでも恋愛の考え方のひとつね」
「へえー、さすが恋愛相談所だな」
「だから恋は面白いんだって」
「そうかー。じゃ、その子にもうひとこと言っといてくれ。次がんばれって」
「ふふ、オッケー」
「で、お前自身はどうなの?」
レソフィックはまじめな顔をするとダーニャに聞いた。
ダーニャはしばらくレソフィックをじーっと見ると、
「・・・君ね、本気になったら言いに来て。からかってやるって目に書いてあるわよ」
「ええ!お見通し?!!」
ダーニャはニコッとすると黒いノートを抱えて
「ふふ、じゃあね」
とくるりときびつを返して去って行った。
「レソフィック、さっきのはからかったのかい?」
アロンが聞くと、うなずいた。そして、
「意外とすげーかもよ、あの恋愛相談所とやらは」
次回「俺の家は海賊(1)」へ続く!
前回のお話「ダーニャの恋愛相談所(2)」
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