＜７月のホタル鑑賞（２）:見学ツアー＞ [片いなか・ハイスクール]
「片いなか・ハイスクール」連載第80回
＜７月のホタル鑑賞（２）:見学ツアー＞
勇夫がアロンのところへ来た。
「アロン、近場でホタルいるところ知ってるんだって？」
「え！？もう知れわたってる。だれから聞いた？」
「ハウルからだけど」
「じゃあカーラ経由か」
カーラ達がやってきた。カーラは少し縮こまって申し訳なさそうにアロンに言った。
「ごめんね、ハウルに話したら大ごとになっちゃって・・」
「ハウル～？マジで？放送室行ってホタル見学ツアーの案内とか流してないだろうな」
「し、してない！させないわ、私がそんなこと！」
「掲示板に見学ツアー募集の張り紙があるって聞いたぞ」
「ハウル！あんたもうそんなことを？！」
「カーラ、またアロンの大ボラよ」
「うそなの？」
「へへっ。まあね」
「ひ、人が本気で申し訳ないと思ってきてるのに！」
「ごめんごめん。でも一瞬で数人に広まったじゃないか。秘密にしたいわけわかるだろ？」
「・・・ごめんなさい」
カーラはしゅんとしてしまった。
「しょうがねぇなぁ。ハウル、秘密守れるか？」
「もちろん！まかせて」ハウルは胸を張って即答する。
「ほんとか？今時点であと誰が知ってる？」
「ここにいるメンバーで全部よ」
だがハウルが横に目をやると、じっと様子を見ている裕美子がいた。
「あ・・」
アロンもそれに気付いた。さらにアロンはぐるりと周囲を一周する。他はいないようだ。
「わたし、邪魔ですか？」と裕美子は静かに聞いた。
クリスティンが裕美子を援護する。
「ユミちゃん、口固いから平気じゃない？こないだユミちゃん『鬼瓦せんべい』ってものすごく硬いおせんべいをおやつに持ってきてくれたんだけど、ユミちゃん平気で食べてたのよ」
「それは歯が丈夫なんじゃないの？それに物理的に固いのと口が固いのは違うと思うけど｣
「そっか」
クリスティンのわけのわからない話は横に置いといて、アロンは裕美子の方に向くと「リーダーに言うなよ」と念を押した。
「・・・わたしプライベートなことでリーダーとお話することないですよ」
するとハウルがリーダーの頼みごとを思い出した。
「そ、そんなこと言わずたまには会話してみたら？」
「え？」
アロンが止めにかかる。「ハウルー、これ以上広げたくないんだけど」
「ああ、そっか、ここではだめだ」
「？？」裕美子は何のことかさっぱりつかめない。
「いい？小泉、リーダー抜きだよ。リーダーが感づきそうになってもごまかしてくれる？」
「いいですよ」裕美子はあっさり答えた。
「よし、金曜の17時に自転車で学校に集合。夜遅くなってもいいな？家に着くの夜10時頃になるよ」
「そしたら、うちに泊ることにしておいで。試験勉強するってことでさ。実際泊っちゃってもいいし」
ハウルがそう言うと、勇夫が自分を指さしながら聞いた。
「俺も？」
「ばか？あんた。女の子だけに決まってるでしょ」
「ばかはねぇだろ！話の流れから俺らもかって思ってびっくりして聞いたんだ」
「思うな！」
喧嘩になりそうなのでクリスティンが止めに入った。「ハウル、怒こらせちゃだめよ。今、勇夫君は大切なアロン君とのパイプなんだから。ホタル連れってもらえなくなっちゃうわよ」
「だって、うぐぐぐ」
クリスティンがハウルの口をふさいだ。
「自転車で行くんだ」カーラはアロンに聞いた。
「歩くには遠いんだよね。自転車で30分はかかるよ。懐中電灯と虫除けスプレーもな。あとみんなお守り1個ずつ」
「なに？それ」ハウルが不思議がる。
「あそこお化け出るらしいんだよね～」
「ひ、ひえええええ～」クリスティンがかん高い声を出して悲鳴を上げた。しかし
「からかってますね」
と、どうやら裕美子には通用しないようだ。
「ジョーク、ジョーク。でもホタルの光は淡いから、ほんとに真っ暗な中で移動するからね」
「夕飯どうするの？食べるには早いし、食べてく時間もないし」食べることには抜けのないハウルである。
「途中でHighWayのサンドイッチでも買ってもってこうぜ」勇夫から提案が出た。
HighWayとはハンバーガー屋でさえも寄り付かないこの片田舎町に、なぜか１件フランチャイズ店として潰れずにいるサンドイッチ屋だった。パンに挟む中身を細かく指定できる店で、特に野菜類は近隣の畑で採れたものを使っていて旨いとの評判の店だ。
こうしてアロンの秘密のホタル鑑賞ポイントは、限られた仲間とはいえ見学ツアーになってしまった。
次回「７月のホタル鑑賞（３）:リーダーがいます」へ続く！
前回のお話「７月のホタル鑑賞（１）:２人で行けばよかったんじゃない？」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
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＜７月のホタル鑑賞（２）:見学ツアー＞
勇夫がアロンのところへ来た。
「アロン、近場でホタルいるところ知ってるんだって？」
「え！？もう知れわたってる。だれから聞いた？」
「ハウルからだけど」
「じゃあカーラ経由か」
カーラ達がやってきた。カーラは少し縮こまって申し訳なさそうにアロンに言った。
「ごめんね、ハウルに話したら大ごとになっちゃって・・」
「ハウル～？マジで？放送室行ってホタル見学ツアーの案内とか流してないだろうな」
「し、してない！させないわ、私がそんなこと！」
「掲示板に見学ツアー募集の張り紙があるって聞いたぞ」
「ハウル！あんたもうそんなことを？！」
「カーラ、またアロンの大ボラよ」
「うそなの？」
「へへっ。まあね」
「ひ、人が本気で申し訳ないと思ってきてるのに！」
「ごめんごめん。でも一瞬で数人に広まったじゃないか。秘密にしたいわけわかるだろ？」
「・・・ごめんなさい」
カーラはしゅんとしてしまった。
「しょうがねぇなぁ。ハウル、秘密守れるか？」
「もちろん！まかせて」ハウルは胸を張って即答する。
「ほんとか？今時点であと誰が知ってる？」
「ここにいるメンバーで全部よ」
だがハウルが横に目をやると、じっと様子を見ている裕美子がいた。
「あ・・」
アロンもそれに気付いた。さらにアロンはぐるりと周囲を一周する。他はいないようだ。
「わたし、邪魔ですか？」と裕美子は静かに聞いた。
クリスティンが裕美子を援護する。
「ユミちゃん、口固いから平気じゃない？こないだユミちゃん『鬼瓦せんべい』ってものすごく硬いおせんべいをおやつに持ってきてくれたんだけど、ユミちゃん平気で食べてたのよ」
「それは歯が丈夫なんじゃないの？それに物理的に固いのと口が固いのは違うと思うけど｣
「そっか」
クリスティンのわけのわからない話は横に置いといて、アロンは裕美子の方に向くと「リーダーに言うなよ」と念を押した。
「・・・わたしプライベートなことでリーダーとお話することないですよ」
するとハウルがリーダーの頼みごとを思い出した。
「そ、そんなこと言わずたまには会話してみたら？」
「え？」
アロンが止めにかかる。「ハウルー、これ以上広げたくないんだけど」
「ああ、そっか、ここではだめだ」
「？？」裕美子は何のことかさっぱりつかめない。
「いい？小泉、リーダー抜きだよ。リーダーが感づきそうになってもごまかしてくれる？」
「いいですよ」裕美子はあっさり答えた。
「よし、金曜の17時に自転車で学校に集合。夜遅くなってもいいな？家に着くの夜10時頃になるよ」
「そしたら、うちに泊ることにしておいで。試験勉強するってことでさ。実際泊っちゃってもいいし」
ハウルがそう言うと、勇夫が自分を指さしながら聞いた。
「俺も？」
「ばか？あんた。女の子だけに決まってるでしょ」
「ばかはねぇだろ！話の流れから俺らもかって思ってびっくりして聞いたんだ」
「思うな！」
喧嘩になりそうなのでクリスティンが止めに入った。「ハウル、怒こらせちゃだめよ。今、勇夫君は大切なアロン君とのパイプなんだから。ホタル連れってもらえなくなっちゃうわよ」
「だって、うぐぐぐ」
クリスティンがハウルの口をふさいだ。
「自転車で行くんだ」カーラはアロンに聞いた。
「歩くには遠いんだよね。自転車で30分はかかるよ。懐中電灯と虫除けスプレーもな。あとみんなお守り1個ずつ」
「なに？それ」ハウルが不思議がる。
「あそこお化け出るらしいんだよね～」
「ひ、ひえええええ～」クリスティンがかん高い声を出して悲鳴を上げた。しかし
「からかってますね」
と、どうやら裕美子には通用しないようだ。
「ジョーク、ジョーク。でもホタルの光は淡いから、ほんとに真っ暗な中で移動するからね」
「夕飯どうするの？食べるには早いし、食べてく時間もないし」食べることには抜けのないハウルである。
「途中でHighWayのサンドイッチでも買ってもってこうぜ」勇夫から提案が出た。
HighWayとはハンバーガー屋でさえも寄り付かないこの片田舎町に、なぜか１件フランチャイズ店として潰れずにいるサンドイッチ屋だった。パンに挟む中身を細かく指定できる店で、特に野菜類は近隣の畑で採れたものを使っていて旨いとの評判の店だ。
こうしてアロンの秘密のホタル鑑賞ポイントは、限られた仲間とはいえ見学ツアーになってしまった。
次回「７月のホタル鑑賞（３）:リーダーがいます」へ続く！
前回のお話「７月のホタル鑑賞（１）:２人で行けばよかったんじゃない？」
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Ainoさん、ケンケン＠さん、dorobouhigeさん、くうかさん、niceありがとうございます。
うーん、自分の体験でネタ起こししてる・・NASA S.とおんなじだワ。
（本家にレポートが載ってるはず）
今年も見に行きたいなあ。
by TSO (2010-05-17 23:14)
モカさん、xml_xslさん、eternityさん、タッチおじさんさん、niceありがとうございます。
昨日はグロッキで予約更新のみでした。それにもかかわらずたくさんのご訪問ありがとうございます。
モカさん、xml_xslさん、eternityさんは初めましてですね。
どうやってここにたどり着くんですかね～。不思議です。気に入ってくれたらまたいらしてください、よろしくお願いしまーす。
あ、SUBWAYのクーポン！TSOんとこは皆大好きなんですよー。サイパンのSUBWAYは野菜の切り方が大雑把でしたネ。小説のHighWayはもちろんこれの・・・
by TSO (2010-05-19 22:26)