＜７月のホタル鑑賞（４）:脈あるのかしら＞

「片いなか・ハイスクール」連載第82回
＜７月のホタル鑑賞（４）:脈あるのかしら＞


裕美子先頭にぞろぞろと女子軍団が店に入っていった。
ちょうど注文が終わったところだったリーダーがそれに気付いた。
「あ、小泉さん。カーラやハウルも」
クリスティンがなんかぎこちないあいさつをした。「こ、こんばんは、リーダー。お夕食？」

「夜食用のを買ってるんだ。来週、期末試験だからね、今夜遅くまで勉強するだろうし」
「いいよ、そんなやらなくたって。そうすりゃここで会うことも・・うぐぐぐ」
ハウルが余計なことを言いそうだったので、すかさずクリスティンが遮った。さすが慣れたものである。

「え？ところでみんなは？」
「これからみんなで、ハウルのうちで勉強するんだ、ははは。それで夕食をね」とカーラ。
「そうかあ。がんばるねみんな」

と言ってるその向うで裕美子がすさまじい量の注文を始める。
それを聞いたリーダーが唖然としていた。
カーラが苦し紛れな言い訳をする。「ハウルったら馬鹿みたいに食べるのよね、あははは」
「ぜ、全部あたしのにするかあ！」
しかしここも裕美子は動じず「ハウルさんのおうちの人の分ですよ」とさらりと無理ない説明をした。


「あ、そうかあ！」

リーダーのみならず女の子たちも納得。
女の子達までうなずいた様子にリーダーは「？？」である。
「いやいや、うふふふ」とますます変な笑いのクリスティンだった。


ぞろぞろと店の外に出るとリーダーが
「途中まで送ろうか。たぶん同じ方向だよね」と言った。
クリスティンが困ったように断る。
「い、いやあダイジョブですよ、ね？・・」

みんながためらってる間に、裕美子は躊躇せず自転車にまたがると
「この先の酒屋でジュースとかも買わないとだから。さよならリーダー」
とシャーっとすごいスピードで行ってしまった。
「わあ、裕美子まってえ！」
と大慌てで追いかける女の子達。

砂煙が去った後、ぽつりと取り残されたのは一番先に店にいたリーダーだけだった。
遠まきに見ていたアロン達も、
「酒屋だって、行くぞ」
と追っかけていった。


酒屋の前でみんな合流した。女の子達は裕美子を除いてみんな息を切らせている。
「裕美子、あんた機転の良さったらないわ」とハウルが言うと、クリスティンとカーラも
「ある意味、ハウル並みにすごいというか・・」
「流れを支配するあたり？頭いい人はこれだから・・」

そこにアロン達も追いついてきた。
「なんか、うまくまいたみたいだね」
「リーダー、脈あるのかしら・・」
ハウルがかなり心配気な顔でクリスティンに向って言った。
「ほんとね」
「？、何のことですか？」このやりとりを裕美子は解せないようである。
「いえいえ、なんでも。それで？ここからどう行くの？」カーラはごまかして話を先に進めた。
「ポコ山の裏の方まで行くよ。荷物はレソフィックに預けちゃって」とアロン。
「あいよー、現地までデリバリーするよー」レソフィックがバイクの脇に立って言った。
「楽でいいわあ。それでバイクなの？」とハウルがサンドイッチの入った袋を渡す。
「そしたらレソフィック、さっき言った東屋までな」
「あいよー。でも一人で先に行ってもつまんないから、自転車軍団についてくよ」
「牽かないでくれよ。じゃあ、出発」


次回「７月のホタル鑑賞（５）:あなたも私を探して」へ続く！

前回のお話「７月のホタル鑑賞（３）:リーダーがいます」
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タグ：片いなか ラブコメ ハイスクール ホタル狩り 学園ラブコメ

コメント 2

xml_xslさん、HAtAさん、ケンケン＠さん、くうかさん、niceありがとうございます。みなさん人を惹きつける作品を手がけてる方ばかりで恐れ多い限りです。m(_ _)m
見てみればえらいペースでnice300行ってるですね。時間見つけて記念イラストまた描くべえ。
by TSO (2010-05-20 22:41) 

やまさん、ヒロさん、Ａｉｎｏさん、ｎｉｃｅありがとうございます。
by TSO (2010-05-22 20:26)