<夏のエピソード後編(2):美女の才能> [片いなか・ハイスクール]
「片いなか・ハイスクール」連載第98回
<夏のエピソード後編(2):美女の才能>
「シャルロット、日焼け止めクリームかして」
ダーニャが美女に言った。
「いいわよ。えっと、どこやったかな」
するとパウロが
「日焼けしたくなかったら上に何か羽織ればいいじゃんか。カーラみたいに」
カーラは水着の上にパーカーを着ていた。
「それじゃつまんないでしょ。せっかくの若いピチピチの体なんだから、アピールしなきゃ」
「男子もその方がうれしいんじゃないの?あったよ日焼け止めクリーム」
確かに美女はモデルのごとき長い手足をして、出るなり引っ込むなり、隠すのはもったいないボディバランスである。横のダーニャはもう少し肉付きがいいが、健康的な体はもちろん何も隠す必要などない。
カーラは口を一文字に結んでやや頬を赤らめながら、脱いでやろうかと思ってパーカーに手をかけたが、
「カーラ、またソバカス増えちゃうわよ。日差し強いからやめときなよ」
と、同じくパーカーを着たままのクリスティンが言った。しかしそのクリスティンを見ると、パーカーでは隠し切れない巨大な胸がむしろ全容を見せないことで一段と色気を醸し出している。
「世の中不公平だわ!」
当り散らされたクリスティンだった。しかしカーラとて日本人から見れば十分にうらやましいボリュームは持っている。クリスティンが突出しすぎているだけである。
そんな目のやり場に困るような景色に本当に困ったかどうかは判らないが、パウロがジョンに話題を向けた。
「ジョンは肌が黒いから、日焼けあんまり気にしなくていいんだな。モデルなのに」
「そんなことないぜ。これでも多少負担はあるから使ってるよ。メーカーから試供品でいいのもらってるんだ。適度にむらなく日焼けして、必要以上に焼かないっていうサンオイルと日焼け止めのあいのこみたいなやつ。
カーラ、そこの鞄の上にある日焼け止めクリーム取ってくれない?ついでに背中塗ってくれよ」
カーラはジョンの荷物から突き出ているクリームの瓶を取ると、
「どれ。背中向けなさいよ」
と言って、ジョンの背中をばちばち叩くようにクリームを塗りたくった。
「いていて!もっと丁寧にやってくれよ!」
それを聞いたアロンがカーラに言った。
「へー。そんないいやつなの?俺にも塗ってくれる?」
「え?!ア、アロン君も?」
むらだらけのジョンの背中をそのままにして、恥ずかしげにアロンの方に向くと、カーラはそのまま固まってしまった。
「どどど、どこ塗るの?ささ、さわっちゃっていいの?」
「はあ?」
おい、さっき遠慮なくジョンに塗ってなかったか?
するとその隙を突いて、美女が自分のクリームをアロンの胸に塗りだした。
「うわわ!」
「あたしの塗ってあげる~」
「あ!びっ美女!あ、アロン君はこれが使いたいの!」
「なによ、塗る気あったの?でももう塗っちゃったわよ」
「変な手つきで塗るな!く、くすぐってえ!そもそも前は自分でできる!」
アンザックが飛び起きた。
「つっ、次俺な!」
「カーラに塗ってもらいなよ」
「自分でどうぞ!!」
どすっとカーラはジョンのサンオイルをアンザックの前の砂に突き立てた。
そのトゲトゲした空気にクリスティンが「あわわわ」と横に開いて困った口に手を当てている。アロンもさすがに空気を感じて取り繕いに入った。
「カーラ、せ、背中にそっちの塗ってよ。美女のと効果比べてみるからさ」
あらかたアロンの前側を塗った美女は、少し余ったのを自分の胸の辺りに塗りながら言った。
「背中こんがり、前は白くてって、おかしなことになるわよ」
「その逆よりはいいじゃんか」
「あはは、おもしろいね。どうなるかやってみれば。どうぞ?」
美女に促されたカーラだが、面白くなさそうな顔をしている。クリスティンが小突いた。「アロン君繋いどかなきゃ。まだ美女さんに決まってないのよ」
そう言われて渋々とアロンのところに来た。
「・・・じゃ、塗ります」
美女もなんだか悪い雰囲気が気に入らず、気分を変えようと立ち上がると、海の方へ向いた。
左の手のひらで太ももの横をたたきながらリズムを取ると、海に向かって歌い始めた。
歌い始めてすぐ、みんなが美女の方に向き直った。
なんという透き通る声だろう。ちょっときつめの性格とは裏腹に、やさしさがあふれ、耳で聞くというより、頭の中心で感じる歌声だ。
歌い終わった時、みんなが美女を見てた。
「なあに、どうしたの?」
クリスティンが感激してる。
「美女さん、歌、すごいお上手ですねえ!」
逃げ回ってばかりいたアロンでさえ
「聞き入っちゃった。体の芯に響くっていうか、すごいね」
ジョンも感心する。
「美女、それはなんか才能感じるぜ。いやあ、気持ちよかった」
ダーニャがまだ余韻にひたりながらコメントした。
「バラード歌わせると涙が出そうになるのよね。シャルロットはバンドでボーカリストなのよ」
アンザックが納得する。
「バンドでボーカルかあ。そりゃぜったいやってしかるべきだよ!」
美女はアロンに向かって投げかけた。
「どう?惚れ直した?」
「え?それとこれは別。そう簡単にはいかないよ。でも、歌はすごいと思ったよ。そこは文句なく認めるよ」
次回「夏のエピソード後編(3):美女の才能2」へ続く!
前回のお話「夏のエピソード後編(1):臨海学校開校!」
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<夏のエピソード後編(2):美女の才能>
「シャルロット、日焼け止めクリームかして」
ダーニャが美女に言った。
「いいわよ。えっと、どこやったかな」
するとパウロが
「日焼けしたくなかったら上に何か羽織ればいいじゃんか。カーラみたいに」
カーラは水着の上にパーカーを着ていた。
「それじゃつまんないでしょ。せっかくの若いピチピチの体なんだから、アピールしなきゃ」
「男子もその方がうれしいんじゃないの?あったよ日焼け止めクリーム」
確かに美女はモデルのごとき長い手足をして、出るなり引っ込むなり、隠すのはもったいないボディバランスである。横のダーニャはもう少し肉付きがいいが、健康的な体はもちろん何も隠す必要などない。
カーラは口を一文字に結んでやや頬を赤らめながら、脱いでやろうかと思ってパーカーに手をかけたが、
「カーラ、またソバカス増えちゃうわよ。日差し強いからやめときなよ」
と、同じくパーカーを着たままのクリスティンが言った。しかしそのクリスティンを見ると、パーカーでは隠し切れない巨大な胸がむしろ全容を見せないことで一段と色気を醸し出している。
「世の中不公平だわ!」
当り散らされたクリスティンだった。しかしカーラとて日本人から見れば十分にうらやましいボリュームは持っている。クリスティンが突出しすぎているだけである。
そんな目のやり場に困るような景色に本当に困ったかどうかは判らないが、パウロがジョンに話題を向けた。
「ジョンは肌が黒いから、日焼けあんまり気にしなくていいんだな。モデルなのに」
「そんなことないぜ。これでも多少負担はあるから使ってるよ。メーカーから試供品でいいのもらってるんだ。適度にむらなく日焼けして、必要以上に焼かないっていうサンオイルと日焼け止めのあいのこみたいなやつ。
カーラ、そこの鞄の上にある日焼け止めクリーム取ってくれない?ついでに背中塗ってくれよ」
カーラはジョンの荷物から突き出ているクリームの瓶を取ると、
「どれ。背中向けなさいよ」
と言って、ジョンの背中をばちばち叩くようにクリームを塗りたくった。
「いていて!もっと丁寧にやってくれよ!」
それを聞いたアロンがカーラに言った。
「へー。そんないいやつなの?俺にも塗ってくれる?」
「え?!ア、アロン君も?」
むらだらけのジョンの背中をそのままにして、恥ずかしげにアロンの方に向くと、カーラはそのまま固まってしまった。
「どどど、どこ塗るの?ささ、さわっちゃっていいの?」
「はあ?」
おい、さっき遠慮なくジョンに塗ってなかったか?
するとその隙を突いて、美女が自分のクリームをアロンの胸に塗りだした。
「うわわ!」
「あたしの塗ってあげる~」
「あ!びっ美女!あ、アロン君はこれが使いたいの!」
「なによ、塗る気あったの?でももう塗っちゃったわよ」
「変な手つきで塗るな!く、くすぐってえ!そもそも前は自分でできる!」
アンザックが飛び起きた。
「つっ、次俺な!」
「カーラに塗ってもらいなよ」
「自分でどうぞ!!」
どすっとカーラはジョンのサンオイルをアンザックの前の砂に突き立てた。
そのトゲトゲした空気にクリスティンが「あわわわ」と横に開いて困った口に手を当てている。アロンもさすがに空気を感じて取り繕いに入った。
「カーラ、せ、背中にそっちの塗ってよ。美女のと効果比べてみるからさ」
あらかたアロンの前側を塗った美女は、少し余ったのを自分の胸の辺りに塗りながら言った。
「背中こんがり、前は白くてって、おかしなことになるわよ」
「その逆よりはいいじゃんか」
「あはは、おもしろいね。どうなるかやってみれば。どうぞ?」
美女に促されたカーラだが、面白くなさそうな顔をしている。クリスティンが小突いた。「アロン君繋いどかなきゃ。まだ美女さんに決まってないのよ」
そう言われて渋々とアロンのところに来た。
「・・・じゃ、塗ります」
美女もなんだか悪い雰囲気が気に入らず、気分を変えようと立ち上がると、海の方へ向いた。
左の手のひらで太ももの横をたたきながらリズムを取ると、海に向かって歌い始めた。
歌い始めてすぐ、みんなが美女の方に向き直った。
なんという透き通る声だろう。ちょっときつめの性格とは裏腹に、やさしさがあふれ、耳で聞くというより、頭の中心で感じる歌声だ。
歌い終わった時、みんなが美女を見てた。
「なあに、どうしたの?」
クリスティンが感激してる。
「美女さん、歌、すごいお上手ですねえ!」
逃げ回ってばかりいたアロンでさえ
「聞き入っちゃった。体の芯に響くっていうか、すごいね」
ジョンも感心する。
「美女、それはなんか才能感じるぜ。いやあ、気持ちよかった」
ダーニャがまだ余韻にひたりながらコメントした。
「バラード歌わせると涙が出そうになるのよね。シャルロットはバンドでボーカリストなのよ」
アンザックが納得する。
「バンドでボーカルかあ。そりゃぜったいやってしかるべきだよ!」
美女はアロンに向かって投げかけた。
「どう?惚れ直した?」
「え?それとこれは別。そう簡単にはいかないよ。でも、歌はすごいと思ったよ。そこは文句なく認めるよ」
次回「夏のエピソード後編(3):美女の才能2」へ続く!
前回のお話「夏のエピソード後編(1):臨海学校開校!」
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HAtAさん、xml_xslさん、c_yuhkiさん、ヒロさん、ケンケン@さん、copperさん、niceありがとうございます。
予告通り挿絵ありません。前回がんばりすぎちゃいました。(--;
期末試験シーズンにつき4コマも一休みで
す。
by TSO (2010-06-29 23:59)