<夏のエピソード後編(6):水中騎馬戦> [片いなか・ハイスクール]
「片いなか・ハイスクール」連載第102回
<夏のエピソード後編(6):水中騎馬戦>
「作戦だけど、昼過ぎにみんなにお披めすることにしよう。1時に宿の裏手で落ち合うでいいかな。俺達は5分だけ会見してすぐその場を去る。俺と幼なじみは今日明日みんなとは別行動で懐かしい話に花を咲かせるってことにしてるから、会見が終わったら俺はもう引き上げるよ」
「わたしどこまで行けばいいんですか?」
「小泉はいなくなったらまずいからね。会見が終わったら宿の裏手まで戻るから、それでまたみんなと合流して。・・・なんか本当にこのためだけに付き合ってもらうようになっちゃって申し訳ないなあ・・今度どっかでたっぷりお礼するから」
「高くつきますよ」
メガネを直しながらいつものセリフである。
「偽装するうえでいくつかまだ問題が・・。髪濡れてた方がいいってことは水着のままがいいですよね?でも私の格好は知られてるでしょうから、水着隠すのに何か違う上着羽織るとかしないと」
「そっか・・。よし!水着買っちゃおう。行くぞ!」
「えー?これから買うんですか?」
「バイクなら店まですぐだって。乗って乗って」
椰子の木の下に止めてあったアロンのバイクで、2人はタンデムで近くのスーパーへ向かった。
----------
いったん2人はみんなのところに戻った。
戻ってみると、2つの馬が波打ち際で激しい騎馬戦をやっていた。帽子を取るなんてもんじゃなくて、落馬するまでつかみあっている。
「きゃー!」っと上にいたダーニャがシャノンに引きずり落とされた。
勇夫「つ、強えぇ!」
パウロ「これで5連勝だ」
ハウル「今度こそあたしが!」
騎乗のシャノンが見下ろしながら言う。
「ハウル、あなたもう3回負けてるじゃない。だめよ、あなたじゃ手ごたえないわ」
「くそー!」悔し涙のハウル。
「あたしにやらせてよ!」キャリーが進み出た。しかし馬をやってるミシェルがいやがった。
「お前でかくて重いから、下がもたねえよ」
「乙女に向かって重いからってのはなにさ!」
「だってクラスで一番でかいじゃん。バスケで鍛えて筋肉質だから実際重いだろ」
「誰?次。男でもいいよ」
するとクリスティンとカーラが向うからやってきたアロンと裕美子に気付いた。
「あら、アロン君、ユミちゃん」
「裕美子、どこ行ってたの?」
「迷っちゃって・・アロン君に救出されました」
「あれ?方向音痴だっけ?」
美女はアロンの方に語りかけた。
「アロン、いつ迎えに行くの?」
アロンはちょっとたじろいだが、仕掛けを信用するしかない。覚悟を決めた。
「もう間もなく・・かな。昼過ぎには連れてくるから」
「そう。いよいよ決戦ね」
すると裕美子は再び消える前振りを始めた。
「わたし、日向をふらつきすぎて疲れたみたい・・ちょっと休んでますね」
クリスティンが心配する。
「あら、大丈夫?」
「ええ、一眠りでもすればよくなると思います」
そう言うと裕美子は木陰のほうへ引き上げて行った。
騎馬戦はとうとう上に男のチャンが乗っかった。
「いいのかな、仮にも相手は女子だし・・小さなシャノンだし・・」
「遠慮不要よ、リーダ。私はハウルみたいに間違ってでも胸触らせたりはしないから」
「なっ!なぜそれを知っている!?」
既に心理戦の段階からリーダはシャノンに負けつつあった。
案の定、チャンはシャノンの腕に触れるのが精一杯で、シャノンに投げ飛ばされた。
「うっしゃー!」とシャノンはガッツポーズ
「なんなんだ、この強さは!」勇夫が目を丸くする。
「もうがまんならん!無理してでも私を担ぎなさい!男でしょ!」
キャリーが有無を言わさず馬どもにのしかかってきた。
「うげー!」
ジョンが悲鳴を上げる。
シャノン側の馬はアンザック、ウォルト、パウロである。
シャノンは馬の3人を呼び寄せた。
「馬!作戦を授けるわよ!」
「なんか俺ら家畜化されてんな」
ウォルトがぶつぶつ言うと、
「無駄口聞かない!」
とむちでぴしぴし叩かれた。
「いい?キャリーは長身を生かしてわたしを上からつかみに来るから。私の合図で突進して懐に飛び込むのよ」
塔のように高いキャリーと、申し訳なさ程度に馬の上にのっかているシャノンとの勝負が始まった。
キャリーがおたけびを上げる。
「いくよー!覚悟ー!」
シャノンは馬達の手綱を引いて抑え込んでいた。
「まだよ、まだよ、引き付けて!・・・いっけー!!」
バシバシ馬の頭をひっぱたく。
馬たちが突進した。「うりゃうりゃうりゃー!」
上からかぶさるようにやってきたキャリーの懐にシャノンは素早く飛び込むと、キャリーの腰を持ち上げるように行った。
シャノン「てーい!」
キャリー「うわあああ」
ばっしゃーん!!
キャリーの巨体が頭から海に飛び込んだ。
シャノン「うっしゃー!」
次回「夏のエピソード後編(7)::ユカリ」へ続く!
前回のお話「夏のエピソード後編(5):5分だけおさななじみ」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
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<夏のエピソード後編(6):水中騎馬戦>
「作戦だけど、昼過ぎにみんなにお披めすることにしよう。1時に宿の裏手で落ち合うでいいかな。俺達は5分だけ会見してすぐその場を去る。俺と幼なじみは今日明日みんなとは別行動で懐かしい話に花を咲かせるってことにしてるから、会見が終わったら俺はもう引き上げるよ」
「わたしどこまで行けばいいんですか?」
「小泉はいなくなったらまずいからね。会見が終わったら宿の裏手まで戻るから、それでまたみんなと合流して。・・・なんか本当にこのためだけに付き合ってもらうようになっちゃって申し訳ないなあ・・今度どっかでたっぷりお礼するから」
「高くつきますよ」
メガネを直しながらいつものセリフである。
「偽装するうえでいくつかまだ問題が・・。髪濡れてた方がいいってことは水着のままがいいですよね?でも私の格好は知られてるでしょうから、水着隠すのに何か違う上着羽織るとかしないと」
「そっか・・。よし!水着買っちゃおう。行くぞ!」
「えー?これから買うんですか?」
「バイクなら店まですぐだって。乗って乗って」
椰子の木の下に止めてあったアロンのバイクで、2人はタンデムで近くのスーパーへ向かった。
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いったん2人はみんなのところに戻った。
戻ってみると、2つの馬が波打ち際で激しい騎馬戦をやっていた。帽子を取るなんてもんじゃなくて、落馬するまでつかみあっている。
「きゃー!」っと上にいたダーニャがシャノンに引きずり落とされた。
勇夫「つ、強えぇ!」
パウロ「これで5連勝だ」
ハウル「今度こそあたしが!」
騎乗のシャノンが見下ろしながら言う。
「ハウル、あなたもう3回負けてるじゃない。だめよ、あなたじゃ手ごたえないわ」
「くそー!」悔し涙のハウル。
「あたしにやらせてよ!」キャリーが進み出た。しかし馬をやってるミシェルがいやがった。
「お前でかくて重いから、下がもたねえよ」
「乙女に向かって重いからってのはなにさ!」
「だってクラスで一番でかいじゃん。バスケで鍛えて筋肉質だから実際重いだろ」
「誰?次。男でもいいよ」
するとクリスティンとカーラが向うからやってきたアロンと裕美子に気付いた。
「あら、アロン君、ユミちゃん」
「裕美子、どこ行ってたの?」
「迷っちゃって・・アロン君に救出されました」
「あれ?方向音痴だっけ?」
美女はアロンの方に語りかけた。
「アロン、いつ迎えに行くの?」
アロンはちょっとたじろいだが、仕掛けを信用するしかない。覚悟を決めた。
「もう間もなく・・かな。昼過ぎには連れてくるから」
「そう。いよいよ決戦ね」
すると裕美子は再び消える前振りを始めた。
「わたし、日向をふらつきすぎて疲れたみたい・・ちょっと休んでますね」
クリスティンが心配する。
「あら、大丈夫?」
「ええ、一眠りでもすればよくなると思います」
そう言うと裕美子は木陰のほうへ引き上げて行った。
騎馬戦はとうとう上に男のチャンが乗っかった。
「いいのかな、仮にも相手は女子だし・・小さなシャノンだし・・」
「遠慮不要よ、リーダ。私はハウルみたいに間違ってでも胸触らせたりはしないから」
「なっ!なぜそれを知っている!?」
既に心理戦の段階からリーダはシャノンに負けつつあった。
案の定、チャンはシャノンの腕に触れるのが精一杯で、シャノンに投げ飛ばされた。
「うっしゃー!」とシャノンはガッツポーズ
「なんなんだ、この強さは!」勇夫が目を丸くする。
「もうがまんならん!無理してでも私を担ぎなさい!男でしょ!」
キャリーが有無を言わさず馬どもにのしかかってきた。
「うげー!」
ジョンが悲鳴を上げる。
シャノン側の馬はアンザック、ウォルト、パウロである。
シャノンは馬の3人を呼び寄せた。
「馬!作戦を授けるわよ!」
「なんか俺ら家畜化されてんな」
ウォルトがぶつぶつ言うと、
「無駄口聞かない!」
とむちでぴしぴし叩かれた。
「いい?キャリーは長身を生かしてわたしを上からつかみに来るから。私の合図で突進して懐に飛び込むのよ」
塔のように高いキャリーと、申し訳なさ程度に馬の上にのっかているシャノンとの勝負が始まった。
キャリーがおたけびを上げる。
「いくよー!覚悟ー!」
シャノンは馬達の手綱を引いて抑え込んでいた。
「まだよ、まだよ、引き付けて!・・・いっけー!!」
バシバシ馬の頭をひっぱたく。
馬たちが突進した。「うりゃうりゃうりゃー!」
上からかぶさるようにやってきたキャリーの懐にシャノンは素早く飛び込むと、キャリーの腰を持ち上げるように行った。
シャノン「てーい!」
キャリー「うわあああ」
ばっしゃーん!!
キャリーの巨体が頭から海に飛び込んだ。
シャノン「うっしゃー!」
次回「夏のエピソード後編(7)::ユカリ」へ続く!
前回のお話「夏のエピソード後編(5):5分だけおさななじみ」
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xml_xslさん、norimiさん、HAtAさん、c_yuhkiさん、ケンケン@さん、dorobouhigeさん、寿パパさん、niceありがとうございます。
入学式のころにはポニテにしていたキャリーさん、ショートヘアになってます。またシリアスなキャリー側に対し、ウォルトがいるせいかシャノン側がコミカルに見えます。
by TSO (2010-07-16 21:18)