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<校外展覧会絵画展(6):行かずして風景を描く> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第130回
<校外展覧会絵画展(6):行かずして風景を描く>


スケッチ大会の翌日から、バスケの練習試合で来れなかったキャリーと、都合で不参加だったアンザックのフォローが始まった。

アンザックは次の休みに描いてきたが、キャリーは難物。というのは、10月1日に行われた練習試合でライバルA校に負けてしまい、次の練習試合で取り返すとチームがむきになって練習を始めたのだ。人一倍負けず嫌いのキャリーもすごい燃えようで、練習後は疲れて絵どころではない。
回収の責任は展覧会実行委員、特に責任者である文化委員のカーラにのしかかってきた。


「キャリー、とてもポタ山なんか行く余裕なさそうだわ。どうしよう・・」

悩んでるカーラに、アロンと裕美子がいろいろと考え始めた。
「行かずして描く方法か・・・」
「キャリーさんの分担のところの景色を写真撮ってきましょう。その写真見てなら、家でも描けるんじゃないでしょうか」
「そっか。大きめにプリントすりゃいいんだよな」
一緒にいたチャンもその案に賛成した。
「さすが裕美子さん!それで行きましょう。今日天気いいから、学校終わったら撮ってこよう」
「ダーニャの案のおかげで、題材で悩まないのが救いね。でもカメラ今ないでしょう?一度家に帰らないと」
「みんなで行く必要はないんじゃないか?俺、家帰ったらバイクでさっと行って撮ってくるよ」

そしてアロンはカーラを見た。

「カーラも、行く?」
「え?でも私のうちポタ山とは方向逆だから、遠回りになっちゃうし・・・」
「そっか。カーラの家、日の出台だっけ。俺ん家から見るとポタ山と真逆だね。いいよ、そしたら俺一人でささっとやってくるから」

うつむいてるカーラを見て、アロンは
『あんまバイク乗るのは好きじゃないのかな?』
と思いをめぐらせた。

一方、カーラは言ってしまった後にしまったと思った。
『せっかくまた誘われたのに、遠回りしてでも連れて行ってと言えばよかった!これじゃアロン君を嫌ってるみたいじゃない』
アロンの背中に手を伸ばしかけては引っ込め、後悔の念でそのままうなだれてしまった。

その様子をじっと見ていた裕美子、ふぅっ、とため息をつくと、アロンに向かって言った。
「・・バイクなら行ったり来たりもそんな手間じゃないんじゃないですか?」
アロンは裕美子の方を見た。
「ま、そうだね」
裕美子は続ける。
「カーラさんは責任者ですから、アロン君が間違ったところ撮ってこないようにしないと」
アロンはカーラの方に顔を向けた。
カーラも今度は逃すまいと返事した。
「し、心配だからやっぱり私も行くわ」

裕美子はさらに続けた。
「アロン君、それで写真撮ったらその後すぐカメラ屋に来てください。写真プリントしてキャリーさんところへみんなで届けに行きましょう」
チャンもそれにうなずいた。
「うん、キャリーのところに届けて催促するのは実行委員全員の責任だからな。みんなで言った方が説得力あるし。俺と裕美子さんはカメラ屋で待ってるよ」
「そうだね、そんな段取りでいくか。じゃあカーラ、帰ったらすぐそっち行くから」
「わ、わかった」
カーラは裕美子に肩を寄せると小声で言った。
「ユミちゃん、ありがとね」
「?なんですか?」


次回「校外展覧会絵画展(7):再びポタ山」へ続く!

前回のお話「校外展覧会絵画展(5):美女は諦めてない」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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TSO

xml_xslさん、ヒロさん、HAtAさん、くうかさん、やまさん、あすぱいさん、dorobouhigeさん、ケンケン@さん、K-STYLEさん、たくさんのniceありがとうございます。

この小説って全体を通してスーパーマンてのはいなくって、何かあるとすぐ周りに相談して助け舟を出してもらってる。
コンセプトにした覚えはないけど、最後までそんなです。自分を振り返ってみると、ぜんぜんしてないことです。助けてもらいたい反動なんでしょうか。
by TSO (2010-10-11 14:38) 

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