<球技大会(4):ご指名> [片いなか・ハイスクール]
「片いなか・ハイスクール」連載第150回
<球技大会(4):ご指名>
チャンが濡らしたタオルを持って戻ってきた。
「裕美子さん!大丈夫ですか!」
裕美子のそばに駈け付くとチャンはそれで裕美子の顔を拭いた。
「いたい!」
「ご、ごめん!大丈夫?」
気が焦っていたせいか力を込めてしまったようだ。チャンは一瞬ためらったが、今度は慎重に拭いた。
まだ血は止まってない。
「うわ・・、ゆ、裕美子さん、血液型は?」
「・・・輸血の必要はありません」
慌て気味のリーダーに対し、裕美子は至って冷静である。アロンも怪我には慣れっ子だった。
「小泉、タオルで傷のところ強く圧迫して。こすらないように、押さえつけるんだ。止血だよ。リーダー、医務室連れてこう」
アロンはリーダーにも手伝ってもらおうと声を掛けた。
が、裕美子がアロンの服の袖を握った。
「アロン君・・・連れてって」
ご指名である。
真っ白になるリーダー。アロンも呆けた顔でリーダーの方を見て、しばらく2人して見つめ合ってしまった。
「と、いうことだ・・。小泉、立てる?」
アロンは1人で裕美子をかかえる。
「おーい元彼ぇ、イザベルくにゃくにゃだよー。どうやって運んだらいいんだ?」
と向こうではウォルトが引き起こすだけで苦労していた。
「おぶってでも、担いででもいいんだよ!元彼ってのやめてくれ!」
てこずっているのにアロンがいらつきそうになったところでレソフィックが見かねて抱き上げた。
「ウォルト、行くぞ!」
イザベルを抱き抱えたレソフィックをウォルトが追う。
クリスティンがタオルと消毒薬を抱えてそれに着いて行った。
怪我人2人と付き添い4人がばたばたと医務室に向かう姿を、ぼーぜんと立ちすくむリーダーが見送っていた。
「こ、今度、応急処置の講習受けなきゃ・・」
裕美子はメガネがなくてよく見えないのに加えて足が少しふらついている。
一方イザベルを抱えるレソフィックは校舎に入るところの段差で、先に校舎に入ったウォルトへイザベルを渡した。
「これが王子様だっこだ、やってみ」
「俺は王様だから、運ぶのは家来の仕事なんだけどなー」
とブツブツ言いながらもウォルトはイザベルを受け取った。
「クリスティン、俺達は先に医務室へ行って、保険の先生を呼び出して受け入れ準備だ」
「は、はい!」
レソフィックとクリスティンは医務室へ走って行った。
医務室に着くと怪我人2人はすぐベッドへ寝かされ、意識のないイザベルから先に先生は確認に入った。
「気を失っているだけと思うけど、頭打ったか何かした?」
「わたしの上に倒れたから頭は打ってないと思います・・」
元気なく裕美子が答える。
「体力ないからね、この子は。疲労も加わってんでしょ」
続いてアルコール脱脂綿で裕美子の顔を拭いて確認。血はほぼ止まったらしい。傷は浅いようだ。
「大丈夫、大きな傷じゃないわ。ガーゼ当てときましょう」
「本当に大丈夫なのかよ?仮にも女の子の顔だぞ。跡残らねえだろうな」
アロンはしっかりもう一歩先まで心配する。
裕美子は鏡を受け取ると、傷を確認していた。
「ありがとう、アロン君。いいよ、これくらいの傷。1cmもないですから」
「とにかくあなたの方が頭打ってるみたいだし、しばらくそこで休みなさい」
次回「球技大会(5):本番試合の行方は?」へ続く!
前回のお話「球技大会(3):裕美子負傷!」
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<球技大会(4):ご指名>
チャンが濡らしたタオルを持って戻ってきた。
「裕美子さん!大丈夫ですか!」
裕美子のそばに駈け付くとチャンはそれで裕美子の顔を拭いた。
「いたい!」
「ご、ごめん!大丈夫?」
気が焦っていたせいか力を込めてしまったようだ。チャンは一瞬ためらったが、今度は慎重に拭いた。
まだ血は止まってない。
「うわ・・、ゆ、裕美子さん、血液型は?」
「・・・輸血の必要はありません」
慌て気味のリーダーに対し、裕美子は至って冷静である。アロンも怪我には慣れっ子だった。
「小泉、タオルで傷のところ強く圧迫して。こすらないように、押さえつけるんだ。止血だよ。リーダー、医務室連れてこう」
アロンはリーダーにも手伝ってもらおうと声を掛けた。
が、裕美子がアロンの服の袖を握った。
「アロン君・・・連れてって」
ご指名である。
真っ白になるリーダー。アロンも呆けた顔でリーダーの方を見て、しばらく2人して見つめ合ってしまった。
「と、いうことだ・・。小泉、立てる?」
アロンは1人で裕美子をかかえる。
「おーい元彼ぇ、イザベルくにゃくにゃだよー。どうやって運んだらいいんだ?」
と向こうではウォルトが引き起こすだけで苦労していた。
「おぶってでも、担いででもいいんだよ!元彼ってのやめてくれ!」
てこずっているのにアロンがいらつきそうになったところでレソフィックが見かねて抱き上げた。
「ウォルト、行くぞ!」
イザベルを抱き抱えたレソフィックをウォルトが追う。
クリスティンがタオルと消毒薬を抱えてそれに着いて行った。
怪我人2人と付き添い4人がばたばたと医務室に向かう姿を、ぼーぜんと立ちすくむリーダーが見送っていた。
「こ、今度、応急処置の講習受けなきゃ・・」
裕美子はメガネがなくてよく見えないのに加えて足が少しふらついている。
一方イザベルを抱えるレソフィックは校舎に入るところの段差で、先に校舎に入ったウォルトへイザベルを渡した。
「これが王子様だっこだ、やってみ」
「俺は王様だから、運ぶのは家来の仕事なんだけどなー」
とブツブツ言いながらもウォルトはイザベルを受け取った。
「クリスティン、俺達は先に医務室へ行って、保険の先生を呼び出して受け入れ準備だ」
「は、はい!」
レソフィックとクリスティンは医務室へ走って行った。
医務室に着くと怪我人2人はすぐベッドへ寝かされ、意識のないイザベルから先に先生は確認に入った。
「気を失っているだけと思うけど、頭打ったか何かした?」
「わたしの上に倒れたから頭は打ってないと思います・・」
元気なく裕美子が答える。
「体力ないからね、この子は。疲労も加わってんでしょ」
続いてアルコール脱脂綿で裕美子の顔を拭いて確認。血はほぼ止まったらしい。傷は浅いようだ。
「大丈夫、大きな傷じゃないわ。ガーゼ当てときましょう」
「本当に大丈夫なのかよ?仮にも女の子の顔だぞ。跡残らねえだろうな」
アロンはしっかりもう一歩先まで心配する。
裕美子は鏡を受け取ると、傷を確認していた。
「ありがとう、アロン君。いいよ、これくらいの傷。1cmもないですから」
「とにかくあなたの方が頭打ってるみたいだし、しばらくそこで休みなさい」
次回「球技大会(5):本番試合の行方は?」へ続く!
前回のお話「球技大会(3):裕美子負傷!」
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takemoviesさん、xml_xslさん、翡翠さん、bitさん、HAtAさん、kuzeさん、むじん君運転の中いつもniceありがとうございます。
今まで控えてきた裕美子ですが、実は結構大胆?
これからも攻勢が続きます。(^^)
by TSO (2010-11-23 13:46)
K-STILEさん、niceありがとうございます。
ビブラム 5本指シューズさん、mbtさん、コメントいただいてますが、本サイトコンテンツの内容とは無関係のようなので申し訳ありませんが削除させていただきます。
by TSO (2010-12-01 23:06)