<クリスマスと誕生日とNew Year(3):クリスマスパーティー> [片いなか・ハイスクール]
「片いなか・ハイスクール」連載第176回
<クリスマスと誕生日とNew Year(3):クリスマスパーティー>
ダイニングテーブルの上は大騒ぎだった。
カーラが麺棒で薄く伸ばした生地に、クリスティンとハウルが具をトッピングしている。
「裕美子、1枚目できたー!」
「はい。じゃあオーブンに入れますね」
女の子達はあらかじめこねて寝かしておいた生地を持ってきてピザを作ってたのだ。
「ねえハウル、まだトッピングする材料ぜんぜん減ってないわよ」
「ほんとだ。でもさっきのも結構豪華に乗せたつもりだったけど・・・もしかしてピザって原価低い?」
「そうね。ここにある材料だって、そんなにかかってないもんね」
「しまったーっ!今までピザ屋につぎ込んできたのはなんだったの?!」
「はいハウル、次の土台伸ばしたよ」
「カーラ、これずいぶんいびつじゃない?」
「む、難しいのよまん丸にするの」
裕美子がオーブンにピザを入れてセットした横で、もっと大きなオーブンに張り付いていたのはアロンと勇夫だった。
「だいぶ焼けてきたぞ。あと20分くらいかな?」
「そうだな」
「裕美子が料理付好きったって、こんな立派なオーブン持ってるなんてすごいね」
「わたしが備え付けたわけじゃないです。お母さんです」
「料理好きはお母さんゆずりかあ」
「アロン君達もすごいですよね。七面鳥まるごとなんて」
「チキンではやったことあるんだけど、ターキーでは初めてだから、失敗しないといいけど」
「これは下ごしらえで半分は決まったようなものですから。大丈夫ですよ」
「小泉に言ってもらえると心強いな、アロン」
「うん」
そこへレソフィックがグラスを持ってやってきた。
「まあまあ旦那ども。ターキー焼きあがるまでこのワイルドターキーでも飲んで待てや」
「お、いいの持ってきたな。アメリカンバーボン」
「ちょ、ちょっとレソフィックさん、それまたお酒?だめですよ」
「まあまあ、今日は無礼講ってことで」
「・・・ここわたしの家ですから。暴れたりしたら追い出すかもしれないですよ」
「え、小泉ってそんな怖い人?」
そしてできあがった料理がずらずらと並べられ、盛大にお食事が始まった。
「こりゃすげぇ。食い切れねえぞ」
大食いの勇夫でさえこう言うほどである。
「裕美子、おうちの人も呼んできたら?」
ハウルがそう言うと、すかさずクリスティンがしゅぱっと右手を上げて立ち上がった。
「ひろき君!ひろき君呼びましょう!」
「いいんですか?じゃ、声かけてみます」
裕美子がお母さんとひろきを連れてくると、クリスティンが目をキラキラさせてまた立ち上がった。
「ひろき君、こっちこっち!クリスお姉さんの横どうぞ」
クリスティンの横にいたレソフィックが苦笑いする。
「クリスティンの頭から俺は一掃されたみたいだな」
「え?あああっ、レソフィック君!あ、お母さんお母さん!こちらどうぞ」
クリスティンは裕美子のお母さんをレソフィックの横に指名した。
「悪いわねぇ、呼んでもらっちゃって。こんなに若い人に囲まれるなんて初めてよ。ここいいの?」
「どうぞどうぞ。この人熟女の相手なら任せろ、ですから。ひろき君はこっちね(ハート)」
クリスティンの暴走に裕美子が引きつりそうである。
「ピザもターキーのグリルもむちゃくちゃ旨いね。ユミねえの周りはいつもご馳走だらけだなあ」
ひろきもがっつり食ったところでクリスティンが切り出した。
「ね、そろそろケーキ食べない?ひろき君も食べるよねえ」
「甘いものは別腹よね。勇夫、手伝ってくれる?」
ハウルが珍しく冷所に置いておいたケーキを取りに行った。まあ当然戻ってきたときは勇夫だけがかついでたわけだが、とにかくでっかいケーキだった。
「バースデーケーキよ~、裕美子」
「ええ?!」
「裕美子のためにわざわざ用意したの?」
裕美子のお母さんも驚いた。
「そ、そんなにしてもらうのは・・心苦しいです」
「遠慮なしよ~」
ハウルがにこにこすると、カーラが気を利かせた。
「気が引くっていうなら、これクリスマスケーキでもあるから。安心して」
するとハウル、
「そうそう、クリスマスケーキ。裕美子のところだけバースデーバージョンにするから。どの辺がいい?ここ?」
そういうとローソクを取り出して
「16歳よね~。ちょっと幼なく見えるけど、一応もう大人の体になりつつあるはずだから。あとで私確認しとくよ。アロンよかったねえ」
と言いながらブスブスとローソクを立てはじめた。アロンが止めに入る。
「いや、いくらなんでも一切れに16本全部立てるなよ。穴だらけになっちゃうぞ。ほれみい!これおまえ食え!」
一個所だけ針千本状態になった。
「くすっ。いいですよそれで。ありがとうございます」
「でもこれはひどくないか?」
アロンは文句言うが、裕美子はかえって楽しんでいるようだ。
「いいじゃないですか、ハウルさんらしくって」
「寛大ねえ。火、着ける?」
カーラが先の細長いライター「点火人(TENKABITO)」を取り出した。
「ひろき君、電気消せる?」
「うん」
部屋の電気が消され、大きなケーキの一角だけにロウソクが乱立する妙な光景だが、ハッピーバースデーが歌われ、裕美子がロウソクを吹き消した。
わーっと歓声と拍手があがると、それが収まらないうちにクリスマスソングメドレーになって、今度はアロンが前に引き出された。
レソフィックがナイフを持ってきた。
「ケーキ切って配ってくれる?」
「ああ、いいよ」
「まってまって」
カーラがそのナイフにナフキンをかけ花を飾りつけると、ハウルが裕美子を連れてきた。
「でね、2人でこれこう持って」
一緒にナイフを持ってケーキの前に並ばされた2人。
「それではケーキ入刃です!」
「ちゃーんちゃっかちゃーん」
みんなで一斉にウエディングソングに切り替わった。
「なななにやらせんだ!!」
慌てまくるアロンに、その横で裕美子は片手で真っ赤になった顔を覆って立ちすくんでしまった。
その後はカードゲームしたりしてさらに騒ぎまくり、のどが乾いたところでひと休みのティータイムになった。
「え?!裕美子のお母さん、ユカリさんて言うんですか?」
「そう、由香里って名前。なんで?」
「いやあ、アロンが裕美子と付き合うきっかけになった、夏の事件の人がユカリって名前で・・」
「あれ、裕美子が名付け親だったんだ。お母さんの名前からとったんだ」
「そうだったの」
「なあに?夏の事件って」
「話すと長いですよ~。聞かせてあげましょうか」
誰かと思えば、カーラである。みんな気付いた。そう、レソフィックが持ってきたシャンパンがふるまわれていたのだ。
「か、カーラ。酔ってるだろ」
「うん?いい気持ちだけど?」
口の軽くなったカーラによって、おさななじみ事件が披露されたのだった。
次回「クリスマスと誕生日とNew Year(4):明日来てね」へ続く!
前回のお話「クリスマスと誕生日とNew Year(2):クリスティン打たれる」
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<クリスマスと誕生日とNew Year(3):クリスマスパーティー>
ダイニングテーブルの上は大騒ぎだった。
カーラが麺棒で薄く伸ばした生地に、クリスティンとハウルが具をトッピングしている。
「裕美子、1枚目できたー!」
「はい。じゃあオーブンに入れますね」
女の子達はあらかじめこねて寝かしておいた生地を持ってきてピザを作ってたのだ。
「ねえハウル、まだトッピングする材料ぜんぜん減ってないわよ」
「ほんとだ。でもさっきのも結構豪華に乗せたつもりだったけど・・・もしかしてピザって原価低い?」
「そうね。ここにある材料だって、そんなにかかってないもんね」
「しまったーっ!今までピザ屋につぎ込んできたのはなんだったの?!」
「はいハウル、次の土台伸ばしたよ」
「カーラ、これずいぶんいびつじゃない?」
「む、難しいのよまん丸にするの」
裕美子がオーブンにピザを入れてセットした横で、もっと大きなオーブンに張り付いていたのはアロンと勇夫だった。
「だいぶ焼けてきたぞ。あと20分くらいかな?」
「そうだな」
「裕美子が料理付好きったって、こんな立派なオーブン持ってるなんてすごいね」
「わたしが備え付けたわけじゃないです。お母さんです」
「料理好きはお母さんゆずりかあ」
「アロン君達もすごいですよね。七面鳥まるごとなんて」
「チキンではやったことあるんだけど、ターキーでは初めてだから、失敗しないといいけど」
「これは下ごしらえで半分は決まったようなものですから。大丈夫ですよ」
「小泉に言ってもらえると心強いな、アロン」
「うん」
そこへレソフィックがグラスを持ってやってきた。
「まあまあ旦那ども。ターキー焼きあがるまでこのワイルドターキーでも飲んで待てや」
「お、いいの持ってきたな。アメリカンバーボン」
「ちょ、ちょっとレソフィックさん、それまたお酒?だめですよ」
「まあまあ、今日は無礼講ってことで」
「・・・ここわたしの家ですから。暴れたりしたら追い出すかもしれないですよ」
「え、小泉ってそんな怖い人?」
そしてできあがった料理がずらずらと並べられ、盛大にお食事が始まった。
「こりゃすげぇ。食い切れねえぞ」
大食いの勇夫でさえこう言うほどである。
「裕美子、おうちの人も呼んできたら?」
ハウルがそう言うと、すかさずクリスティンがしゅぱっと右手を上げて立ち上がった。
「ひろき君!ひろき君呼びましょう!」
「いいんですか?じゃ、声かけてみます」
裕美子がお母さんとひろきを連れてくると、クリスティンが目をキラキラさせてまた立ち上がった。
「ひろき君、こっちこっち!クリスお姉さんの横どうぞ」
クリスティンの横にいたレソフィックが苦笑いする。
「クリスティンの頭から俺は一掃されたみたいだな」
「え?あああっ、レソフィック君!あ、お母さんお母さん!こちらどうぞ」
クリスティンは裕美子のお母さんをレソフィックの横に指名した。
「悪いわねぇ、呼んでもらっちゃって。こんなに若い人に囲まれるなんて初めてよ。ここいいの?」
「どうぞどうぞ。この人熟女の相手なら任せろ、ですから。ひろき君はこっちね(ハート)」
クリスティンの暴走に裕美子が引きつりそうである。
「ピザもターキーのグリルもむちゃくちゃ旨いね。ユミねえの周りはいつもご馳走だらけだなあ」
ひろきもがっつり食ったところでクリスティンが切り出した。
「ね、そろそろケーキ食べない?ひろき君も食べるよねえ」
「甘いものは別腹よね。勇夫、手伝ってくれる?」
ハウルが珍しく冷所に置いておいたケーキを取りに行った。まあ当然戻ってきたときは勇夫だけがかついでたわけだが、とにかくでっかいケーキだった。
「バースデーケーキよ~、裕美子」
「ええ?!」
「裕美子のためにわざわざ用意したの?」
裕美子のお母さんも驚いた。
「そ、そんなにしてもらうのは・・心苦しいです」
「遠慮なしよ~」
ハウルがにこにこすると、カーラが気を利かせた。
「気が引くっていうなら、これクリスマスケーキでもあるから。安心して」
するとハウル、
「そうそう、クリスマスケーキ。裕美子のところだけバースデーバージョンにするから。どの辺がいい?ここ?」
そういうとローソクを取り出して
「16歳よね~。ちょっと幼なく見えるけど、一応もう大人の体になりつつあるはずだから。あとで私確認しとくよ。アロンよかったねえ」
と言いながらブスブスとローソクを立てはじめた。アロンが止めに入る。
「いや、いくらなんでも一切れに16本全部立てるなよ。穴だらけになっちゃうぞ。ほれみい!これおまえ食え!」
一個所だけ針千本状態になった。
「くすっ。いいですよそれで。ありがとうございます」
「でもこれはひどくないか?」
アロンは文句言うが、裕美子はかえって楽しんでいるようだ。
「いいじゃないですか、ハウルさんらしくって」
「寛大ねえ。火、着ける?」
カーラが先の細長いライター「点火人(TENKABITO)」を取り出した。
「ひろき君、電気消せる?」
「うん」
部屋の電気が消され、大きなケーキの一角だけにロウソクが乱立する妙な光景だが、ハッピーバースデーが歌われ、裕美子がロウソクを吹き消した。
わーっと歓声と拍手があがると、それが収まらないうちにクリスマスソングメドレーになって、今度はアロンが前に引き出された。
レソフィックがナイフを持ってきた。
「ケーキ切って配ってくれる?」
「ああ、いいよ」
「まってまって」
カーラがそのナイフにナフキンをかけ花を飾りつけると、ハウルが裕美子を連れてきた。
「でね、2人でこれこう持って」
一緒にナイフを持ってケーキの前に並ばされた2人。
「それではケーキ入刃です!」
「ちゃーんちゃっかちゃーん」
みんなで一斉にウエディングソングに切り替わった。
「なななにやらせんだ!!」
慌てまくるアロンに、その横で裕美子は片手で真っ赤になった顔を覆って立ちすくんでしまった。
その後はカードゲームしたりしてさらに騒ぎまくり、のどが乾いたところでひと休みのティータイムになった。
「え?!裕美子のお母さん、ユカリさんて言うんですか?」
「そう、由香里って名前。なんで?」
「いやあ、アロンが裕美子と付き合うきっかけになった、夏の事件の人がユカリって名前で・・」
「あれ、裕美子が名付け親だったんだ。お母さんの名前からとったんだ」
「そうだったの」
「なあに?夏の事件って」
「話すと長いですよ~。聞かせてあげましょうか」
誰かと思えば、カーラである。みんな気付いた。そう、レソフィックが持ってきたシャンパンがふるまわれていたのだ。
「か、カーラ。酔ってるだろ」
「うん?いい気持ちだけど?」
口の軽くなったカーラによって、おさななじみ事件が披露されたのだった。
次回「クリスマスと誕生日とNew Year(4):明日来てね」へ続く!
前回のお話「クリスマスと誕生日とNew Year(2):クリスティン打たれる」
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by TSO (2011-02-11 22:09)