<第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(10):お料理> [片いなか・ハイスクール]
東日本大震災被災地がんばれ!
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「片いなか・ハイスクール」連載第290回
<第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(10):お料理>
裕美子の指図で、女の子達はスパゲッティをゆでて缶詰めのミートソースを温めた。缶詰といっても業務用である。何しろ人数が男女8人もいるうえ、裕美子は育ち盛りの自分の弟を思い出しながら
「たぶん男子は2人前くらいぺろりと食べちゃうと思います。そうすると12人前は作らないとという換算になります」
と言ったところにハウルも
「私も食べるわよ。2人前くらいかるいかるい」
とか言うもんだから
「・・・15人前くらい作ります」
と、まるでその辺で営業している食堂なみに作ることになって、それくらいの分量を買い込んでいた。しかも手の混んだ事しないといいながら、ソースには缶詰のホールトマトとローリエ、バジル、さらに
「ハウルさん、買ったお酒の中から赤ワイン少しいただきます」
と言って赤ワインも加えて味をグレードアップしてあり、味見したみんなに驚かれる。
「わぁ、おいしい」
料理初めての人でも簡単に作れるものということで選んだメニューとはいえ、業務用缶詰を開けて暖めただけでは、これで中身がカレーならどこかの宇宙人と同じである。きちんと料理ができる裕美子としてはこの程度と思われなくなかった。もちろんアロンにである。
「私たち、包丁も使ってないわ。なのにちゃんとお料理できてる」
クリスティンが感激気味に鍋の中のソースを味わいながら言った。
「レトルトのソースはそれだけでもう出来上がっているものですし、追加したトマトも缶詰なら面倒なこともないし、香辛料も入れるだけだから、手間なくて簡単でしょう?」
「すっごいね。これならわたしでもできるわ。家でもやってみよう」とカーラ。
「先生!こんどまた違うのも教えてね」とクリスティン。
「じゃあ作ったら呼んでね」とハウル。
大鍋で茹で上がったパスタはオリーブオイルを絡めてお皿に盛られ、テーブルに並べられた。
「皆さん呼んでください」
「はぁい。みんなー、できましたよ~」
女の子達が食事の準備をしている間に先に進めていたアロンやレソフィックが即座に立ち上がった。
「おお!」
「腹減ったあ」
進み具合が芳しくないようでリーダーは少し不満げである。が、テーブルの上のご馳走を見てそんな顔もすぐに変わった。テーブルでは裕美子がパスタのゆで汁で少しのばしたソースをかけているところだった。やってきた男どもが感嘆の声をあげる。
「おー、すげー」
「うまそー!」
男子とともにハウルもちゃっかり座っている。ハウルはキラキラした目で裕美子に催促した。みんなのが揃うのを待つ気はないようだ。裕美子は手でどうぞと促した。ハウルがにっこりした顔を男達に向けてフォークを取って構えると、それを合図に男どもも待ちきれずにフォークを掴んだ。
「いっただきまーす!」
ひとくち口に運んだアロンが3噛みもしないで顔を上げた。
「・・あ、うまい!」
口一杯頬張っている勇夫も、僅かに空いた隙間からくぐもった声で言った。
「ほんとうだ、出来合いのソースじゃないの?」
裕美子は頬を赤らめた。メガネでよく見えなかったが・・
『よかった、アロン君喜んでくれた』
ハウルが胸を張る。
「すごいでしょう?私よ作ったの」
「ぜってーあり得ねえ」
レソフィックが速効で返した。
「なんで?!なんでわかんの!!?」
レソフィックはパスタの入った口元にニヒルな笑みを浮かべて追い討ちをかける。
「お前はぜってー性格的に食うの専門だろ」
「げ!なんで!ど、どうしてわかんの!!?」
というか、ハウルの食いしん坊が知れ渡ったのは今に始まったことじゃないと思うぞ。
「俺の勘だと・・メガネだろ作ったの」
アロンがお玉を持ったままテーブルの横に立っていた裕美子を見上げた。
「そうなの、すごいよね裕美子って」
クリスティンも褒めてくれたが、そんなこと耳に入らないくらいアロンに評価してもらえたことがうれしくて、裕美子は天に昇ってしまいそうであった。呼んでくれたらいつでも作ってあげちゃうのに、とか思った。
「アロン君、おかわりあげます」
裕美子が少し余っているのをアロンの皿に入れるのを見て、勇夫が思いっきり羨ましそうな顔をした。
「あー、ちきしょう、いいなあ!」
次回「第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(11):記事作り再開」へ続く!
前回のお話「第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(9):レソフィックの家」
対応する第1部のお話「第1部:第9章 レソフィックの広報記事」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
Copyright(c) 2009-2013 TSO All Rights Reserved
業務用のカレーを暖めて出した宇宙人。「涼宮ハルヒ・・」の長門さんですね。裕美子は物静かなところで長門さんなんかと同じジャンルの人ですが、オリジナルではなくて「長門有希ちゃんの消失」の長門さんの方が近いかも。
※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。
ぽちっと応援してください。
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「片いなか・ハイスクール」連載第290回
<第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(10):お料理>
裕美子の指図で、女の子達はスパゲッティをゆでて缶詰めのミートソースを温めた。缶詰といっても業務用である。何しろ人数が男女8人もいるうえ、裕美子は育ち盛りの自分の弟を思い出しながら
「たぶん男子は2人前くらいぺろりと食べちゃうと思います。そうすると12人前は作らないとという換算になります」
と言ったところにハウルも
「私も食べるわよ。2人前くらいかるいかるい」
とか言うもんだから
「・・・15人前くらい作ります」
と、まるでその辺で営業している食堂なみに作ることになって、それくらいの分量を買い込んでいた。しかも手の混んだ事しないといいながら、ソースには缶詰のホールトマトとローリエ、バジル、さらに
「ハウルさん、買ったお酒の中から赤ワイン少しいただきます」
と言って赤ワインも加えて味をグレードアップしてあり、味見したみんなに驚かれる。
「わぁ、おいしい」
料理初めての人でも簡単に作れるものということで選んだメニューとはいえ、業務用缶詰を開けて暖めただけでは、これで中身がカレーならどこかの宇宙人と同じである。きちんと料理ができる裕美子としてはこの程度と思われなくなかった。もちろんアロンにである。
「私たち、包丁も使ってないわ。なのにちゃんとお料理できてる」
クリスティンが感激気味に鍋の中のソースを味わいながら言った。
「レトルトのソースはそれだけでもう出来上がっているものですし、追加したトマトも缶詰なら面倒なこともないし、香辛料も入れるだけだから、手間なくて簡単でしょう?」
「すっごいね。これならわたしでもできるわ。家でもやってみよう」とカーラ。
「先生!こんどまた違うのも教えてね」とクリスティン。
「じゃあ作ったら呼んでね」とハウル。
大鍋で茹で上がったパスタはオリーブオイルを絡めてお皿に盛られ、テーブルに並べられた。
「皆さん呼んでください」
「はぁい。みんなー、できましたよ~」
女の子達が食事の準備をしている間に先に進めていたアロンやレソフィックが即座に立ち上がった。
「おお!」
「腹減ったあ」
進み具合が芳しくないようでリーダーは少し不満げである。が、テーブルの上のご馳走を見てそんな顔もすぐに変わった。テーブルでは裕美子がパスタのゆで汁で少しのばしたソースをかけているところだった。やってきた男どもが感嘆の声をあげる。
「おー、すげー」
「うまそー!」
男子とともにハウルもちゃっかり座っている。ハウルはキラキラした目で裕美子に催促した。みんなのが揃うのを待つ気はないようだ。裕美子は手でどうぞと促した。ハウルがにっこりした顔を男達に向けてフォークを取って構えると、それを合図に男どもも待ちきれずにフォークを掴んだ。
「いっただきまーす!」
ひとくち口に運んだアロンが3噛みもしないで顔を上げた。
「・・あ、うまい!」
口一杯頬張っている勇夫も、僅かに空いた隙間からくぐもった声で言った。
「ほんとうだ、出来合いのソースじゃないの?」
裕美子は頬を赤らめた。メガネでよく見えなかったが・・
『よかった、アロン君喜んでくれた』
ハウルが胸を張る。
「すごいでしょう?私よ作ったの」
「ぜってーあり得ねえ」
レソフィックが速効で返した。
「なんで?!なんでわかんの!!?」
レソフィックはパスタの入った口元にニヒルな笑みを浮かべて追い討ちをかける。
「お前はぜってー性格的に食うの専門だろ」
「げ!なんで!ど、どうしてわかんの!!?」
というか、ハウルの食いしん坊が知れ渡ったのは今に始まったことじゃないと思うぞ。
「俺の勘だと・・メガネだろ作ったの」
アロンがお玉を持ったままテーブルの横に立っていた裕美子を見上げた。
「そうなの、すごいよね裕美子って」
クリスティンも褒めてくれたが、そんなこと耳に入らないくらいアロンに評価してもらえたことがうれしくて、裕美子は天に昇ってしまいそうであった。呼んでくれたらいつでも作ってあげちゃうのに、とか思った。
「アロン君、おかわりあげます」
裕美子が少し余っているのをアロンの皿に入れるのを見て、勇夫が思いっきり羨ましそうな顔をした。
「あー、ちきしょう、いいなあ!」
次回「第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(11):記事作り再開」へ続く!
前回のお話「第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(9):レソフィックの家」
対応する第1部のお話「第1部:第9章 レソフィックの広報記事」
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業務用のカレーを暖めて出した宇宙人。「涼宮ハルヒ・・」の長門さんですね。裕美子は物静かなところで長門さんなんかと同じジャンルの人ですが、オリジナルではなくて「長門有希ちゃんの消失」の長門さんの方が近いかも。
※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。
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F−USAさん、bitさん、yamさん、くま・てーとくさん、いっぷくさん、CROSTONさん、niceありがとうございます。
by TSO (2013-05-25 11:09)