<第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(9):レソフィックの家> [片いなか・ハイスクール]
東日本大震災被災地がんばれ!
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「片いなか・ハイスクール」連載第289回
<第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(9):レソフィックの家>
「レソフィック、きたよー」
「よう、ご苦労さん。おあがりー。えっと、ハウルとカーラとクリスティンと小泉の4人できたんだね。おーい、グラス4つなー!」
玄関で迎えたレソフィックは奥へ声をかけた。すると奥の部屋からアロンが顔を出した。それを見た裕美子は心が踊った。
『いた、アロン君だ』
アロンは玄関にゾロゾロと現れた女の子達を見回した。
「グラス4つ了解。なに持ってきたんだ?ずいぶん大荷物じゃんか」
夕飯の食材におつまみに飲料(ソフトドリンクだけでなく、明らかにお酒の瓶も飛び出ている)。4人みんな袋をぶら下げて、確かに結構な量である。
先頭のハウルは靴を脱ぐと部屋に上がっていった。裕美子も靴を脱ぐと、狭い玄関に折り重なっている靴をきれいに整えた。
『レソフィックさんは金髪碧眼のヨーロッパ系の人なのに、靴を脱ぐ家なんだ。武道で日本文化に触れているからかな』
リビングに向かって歩いているハウルは、さっきのアロンの質問に答えた。
「どうせ時間かかるんでしょ?おなか空いちゃうから夕飯作ってあげようと思って」
リビングに入ったところで振り向いたレソフィックは、
「へー、気が利くねえ。女の子みたいじゃないか」
と一言。即座にカーラとハウルがつかみかかった。
「ちょっと、それどういう意味?!」
「まるで普段は違うみたいな言い方じゃん」
しかしまるで気を使うことのないレソフィックは平然と返した。
「そういうこった」
レソフィックの前に立ちはだかったハウルはいきなり切り札を切った。
「なにー!食わせないからね!」
この人は本当に食わせてもらえない可能性があると、一瞬でヤバいとレソフィックは感じ取る。
「ごめんなさいごめんなさい」
「どうしよっか」
「少なくともこいつによそる分は減量よ、減量」
その脇をクリスティンが裕美子の背中を押して
「じゃあ、台所借りますね」
とキッチンへ向かった。裕美子はまだ一言もまだしゃべってなかった。
クリックすると大きくなります
キッチンではアロンがグラスを準備していた。傍からはぽけっと突っ立っているだけのような裕美子だったが、心の中では大変な事態になっていた。
『アロン君だ・・・来てよかった』
横ではクリスティンが、キッチンを覗いてみたものの手順が分からずポリポリと頬を掻いている。
「えっと、何からしたらいいの?」
裕美子はアロンに向かって、メガネで見えないが僅かに赤らめた顔をぺこりと下げてお辞儀をすると、レソフィックの家に来て初めて口を開いた。
「こ、こんばんは。お、大きい鍋ってどんなのがありますか?2つお借りしたいんですけど・・」
アロンはシンクの下の棚からさっと鍋を取り出した。
「こんなのでいい?ここに鍋関係はあるから適当に使っていいよ。お玉とかヘラはここ、包丁とまな板はここ。調味料はここにあるよ」
「レソフィックさんの家なのに、詳しいですね」
「俺ら同じアパート暮らしで同じ間取りだから。基本自炊だし、だいたい一緒に食うから誰彼の家の区別ないんだよね」
「そうなんですか」
『アロン君たち、自炊なんだ。料理できるんだ』
一緒にお料理してみたいなあと、その顔を眺めてたら
「じゃ、よろしくね」
と人がたくさん入って狭くなったキッチンから、グラスを持って出て行こうとした。
「ちょっとごめん」
「はぁい」
クリスティンをよけようとしたアロンだが、クリスティンは両手を身体の横に上げて壁に張り付いたにもかかわらず、大きな胸が突出して全然通り道ができてない。アロンは改めてその大きなのに気付かされ、困ったように顔を赤くした。
「どうぞ遠慮せず」
何を遠慮せずとニコニコ言っているのかこの人は。
そんなわけで必要以上に大きく避けたので、反対側のシンクの所にいた裕美子の背中と派手に接触した。
「わ、わりい」
「いいえ」
と返したかったが、裕美子は声を出せなかった。
しかも触れたせいでぞくぞくした身体が収まらなくなってしまった。
グラスを持ってリビングに出て行くアロンの背中をちらっと目で追って、裕美子は心底思った。
『来て、よかった・・』
次回「第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(10):お料理」へ続く!
前回のお話「第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(8):お買い物」
対応する第1部のお話「第1部:第9章 レソフィックの広報記事」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
Copyright(c) 2009-2013 TSO All Rights Reserved
挿絵は第1部で使ったのと同じです。これ描いたのはもう丸3年前になるんですね。ちょっと裕美子のスカートが小説の想定より短いです。
※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。
ぽちっと応援してください。
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「片いなか・ハイスクール」連載第289回
<第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(9):レソフィックの家>
「レソフィック、きたよー」
「よう、ご苦労さん。おあがりー。えっと、ハウルとカーラとクリスティンと小泉の4人できたんだね。おーい、グラス4つなー!」
玄関で迎えたレソフィックは奥へ声をかけた。すると奥の部屋からアロンが顔を出した。それを見た裕美子は心が踊った。
『いた、アロン君だ』
アロンは玄関にゾロゾロと現れた女の子達を見回した。
「グラス4つ了解。なに持ってきたんだ?ずいぶん大荷物じゃんか」
夕飯の食材におつまみに飲料(ソフトドリンクだけでなく、明らかにお酒の瓶も飛び出ている)。4人みんな袋をぶら下げて、確かに結構な量である。
先頭のハウルは靴を脱ぐと部屋に上がっていった。裕美子も靴を脱ぐと、狭い玄関に折り重なっている靴をきれいに整えた。
『レソフィックさんは金髪碧眼のヨーロッパ系の人なのに、靴を脱ぐ家なんだ。武道で日本文化に触れているからかな』
リビングに向かって歩いているハウルは、さっきのアロンの質問に答えた。
「どうせ時間かかるんでしょ?おなか空いちゃうから夕飯作ってあげようと思って」
リビングに入ったところで振り向いたレソフィックは、
「へー、気が利くねえ。女の子みたいじゃないか」
と一言。即座にカーラとハウルがつかみかかった。
「ちょっと、それどういう意味?!」
「まるで普段は違うみたいな言い方じゃん」
しかしまるで気を使うことのないレソフィックは平然と返した。
「そういうこった」
レソフィックの前に立ちはだかったハウルはいきなり切り札を切った。
「なにー!食わせないからね!」
この人は本当に食わせてもらえない可能性があると、一瞬でヤバいとレソフィックは感じ取る。
「ごめんなさいごめんなさい」
「どうしよっか」
「少なくともこいつによそる分は減量よ、減量」
その脇をクリスティンが裕美子の背中を押して
「じゃあ、台所借りますね」
とキッチンへ向かった。裕美子はまだ一言もまだしゃべってなかった。
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キッチンではアロンがグラスを準備していた。傍からはぽけっと突っ立っているだけのような裕美子だったが、心の中では大変な事態になっていた。
『アロン君だ・・・来てよかった』
横ではクリスティンが、キッチンを覗いてみたものの手順が分からずポリポリと頬を掻いている。
「えっと、何からしたらいいの?」
裕美子はアロンに向かって、メガネで見えないが僅かに赤らめた顔をぺこりと下げてお辞儀をすると、レソフィックの家に来て初めて口を開いた。
「こ、こんばんは。お、大きい鍋ってどんなのがありますか?2つお借りしたいんですけど・・」
アロンはシンクの下の棚からさっと鍋を取り出した。
「こんなのでいい?ここに鍋関係はあるから適当に使っていいよ。お玉とかヘラはここ、包丁とまな板はここ。調味料はここにあるよ」
「レソフィックさんの家なのに、詳しいですね」
「俺ら同じアパート暮らしで同じ間取りだから。基本自炊だし、だいたい一緒に食うから誰彼の家の区別ないんだよね」
「そうなんですか」
『アロン君たち、自炊なんだ。料理できるんだ』
一緒にお料理してみたいなあと、その顔を眺めてたら
「じゃ、よろしくね」
と人がたくさん入って狭くなったキッチンから、グラスを持って出て行こうとした。
「ちょっとごめん」
「はぁい」
クリスティンをよけようとしたアロンだが、クリスティンは両手を身体の横に上げて壁に張り付いたにもかかわらず、大きな胸が突出して全然通り道ができてない。アロンは改めてその大きなのに気付かされ、困ったように顔を赤くした。
「どうぞ遠慮せず」
何を遠慮せずとニコニコ言っているのかこの人は。
そんなわけで必要以上に大きく避けたので、反対側のシンクの所にいた裕美子の背中と派手に接触した。
「わ、わりい」
「いいえ」
と返したかったが、裕美子は声を出せなかった。
しかも触れたせいでぞくぞくした身体が収まらなくなってしまった。
グラスを持ってリビングに出て行くアロンの背中をちらっと目で追って、裕美子は心底思った。
『来て、よかった・・』
次回「第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(10):お料理」へ続く!
前回のお話「第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(8):お買い物」
対応する第1部のお話「第1部:第9章 レソフィックの広報記事」
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挿絵は第1部で使ったのと同じです。これ描いたのはもう丸3年前になるんですね。ちょっと裕美子のスカートが小説の想定より短いです。
※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。
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おつまみ何ができたんだろう~!!楽しみい~!!ポチット!
by macinu (2013-05-05 16:52)
くま・てーとくさん、yamさん、macinuさん、niceありがとうございます。
macinuさん、いつもコメント&ぽちっとありがとうございます。
次回お夕食が出てきますが、おつまみはこの章では載せてなかったな~。一応この子たち高校生だし。(^^;
(でも第1部の挿絵にスルメイカらしきものが・・・夏のエピソードでもおつまみ作ってるシーンあったかも・・)
by TSO (2013-05-12 22:41)