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<第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(17):朝食準備> [片いなか・ハイスクール]

東日本大震災被災地がんばれ!


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「片いなか・ハイスクール」連載第297回
<第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(17):朝食準備>


「お腹減ったなー」
このハウルの体に嘘をつかない正直な感想が、次なる任務の始まりであった。


「ねえ、お腹減らない?」

コーヒーをすするみんなの前でハウルが再び持ち出した。

「朝食までは考えなかったわねぇ」
「夕飯作ってあげたんだから、朝食は男子が用意だよね」

遠慮のないハウルに勇夫が鼻先を突き出した。

「マジで言ってんのか?」
「だめ?」
「だいたい8人もいるぞ。食材あると思うか?」
「あたしら昨日、12人前作ったのよ」
「え?!」
「いえ、15人前です」

裕美子が訂正した。

「どうりでいっぱいあったわけだ」

そうしたらレソフィックが慌て出した。

「アロン!勇夫!お前ら部屋戻ってありったけの食いもん持って来い!」
「なんで」

と言った勇夫をひっ掴むと、

「やべえよ、こんなところで変な借りを作るわけにいかねえ」

と小声で言った。さすが借金嫌いの現金即時払い専門だけのことはある。
小声が漏れ聞こえてしまった裕美子は、またそれですかと、じろりとレソフィックを睨んだ。それに気付いたアロンがすぐ取り繕う。

「そんなこと気にして作ってないって。なあ?」

アロンに投げかけられた裕美子、不機嫌そうなまま答えた。

「料理は好きですから・・、たとえあなた達のような人でも、おいしいと言って食べてくれるなら、作ってあげるのに変な見返りを求めたりはしませんが」

若干刺のある返答に

「ほらあ、怒っちゃったじゃないかぁ!」

と、アロンがレソフィックの脇腹に手刀を突き刺した。レソフィックは脇腹を押さえつつ、

「わ、わかった。とにかくお礼を込めて朝食の準備する・・いや、させて下さい」

と言うと台所へ向かった。
ハウルの催促で、思惑通りというか、男子達による朝食の用意が始まった。


しかし確かにこの人数である。急に食事の支度しろと言っても、何の準備もしてなければ慌てるのは当たり前だろう。
リーダーを除く男子3人は(リーダーは気持ち悪くてまだ倒れていた)、台所で冷蔵庫など眺めながらぶつくさ話し合ったあげく、

「ひとまず食えそうなもの何でもいいからかき集めよう」

と各自の部屋へ散らばることにした。






自分達の部屋へ食材を探しに行くべく玄関へ向かったアロンと勇夫に、裕美子が後ろから声をかけた。

「トーストと卵とか、そんなのでいいと思いますよ。急に言われても困りますよね」

すると勇夫が天井を見上げた。

「卵なら買ったばっかだから、10個ぐらいあるぞ」
「パンもあるだろ。俺んとこからも持ってくれば一人2枚くらいにはなる。ハムかベーコンもあったと思うけど・・・、4枚くらいしかなかったかな。それじゃ足りないか」
「それに玉ねぎみたいなのとコンソメかブイヨンありますか?」
「たぶん、固形のがあるはず・・」
「それもお願いします。わたし、スープ作ります」
「小泉、すげぇ・・」

2人から尊敬の眼差しが向けられた。それを受けて、恥ずかしくなった裕美子は少し縮こまって小さな声で言った。

「・・ハウルさん、むちゃなお願い、してると思ってますから、少し、手伝います・・」
「ありがと!玉ねぎとコンソメはレソフィックに頼んでくれ!」

そう言って2人はそれぞれの部屋へ散っていった。






しばらくして材料がかき集められたところで、台所ではアロンとレソフィックと勇夫と裕美子が朝食を作っていた。
アロンとレソフィックが次々にパンをトーストする傍ら、勇夫が颯爽とフライパンに卵を割り落とす。

「見ろ見ろ、俺片手で卵割れるんだぜ!」

鼻息荒く裕美子に向かって自慢した。まるで小学生の自慢みたいだ。

「すごいですね。・・・でも、卵は高さ5cm以内で落とした方がいいです。細胞が壊れなくて、ふっくら焼きあがるんです」
「え、そうなの?」

しかし落下高度以前に、力加減を失敗して卵は黄身まで割れた状態でフライパンの上に落ちてきた。

「わ、わははは!」
「・・・・」

台所は4人も入ると窮屈過ぎて、レソフィックが追い出されてリビングに戻ってきた。
そして座るなり、テーブルに着いて待ってるだけのハウルへ半月を下に向けたような目を向けて文句垂れた。

「お前、本当に食うだけなのな」
「それが何か?」

はなっから開き直ってるハウルを見て、これではいけないと思ったカーラとクリスティン、そそくさと立ち上がって台所へ手伝いに行った。

「裕美子ちゃん、何か手伝うことある?」

味付けも終わったし、もうちょっと煮込むだけでスープは完成だった。

「特に・・あとよそるくらいしか・・」
「そんじゃ、こっちの焼けたパンにバター乗っけてテーブルへ持ってってくれ~」

奥にいたアロンが声かけた。
裕美子の注意はカーラに向けられた。昨夜の様子から、アロンはカーラに頼んだと思ったのだ。ところがカーラは何だかためらうように固まって動かないでいる。そうこうしているうちにクリスティンが

「じゃあ、私スープよそるの手伝うね」

と言った。台所の最も入り口側にいる勇夫の後ろを通ろうと

「おじゃましまぁ~す」

と言って通過するとき、大きな胸が避けきることができず、勇夫の背中をふにゃ~っと撫でていく。勇夫は妙な柔らかい感触に、何だ?と振り向いたら、その撫でたモノをみてびっくりして真っ赤になって飛び上がった。

「どうぞお気になさらず」

何をお気になさらずといっているのかこの人は!

クリスティンが裕美子のところに行ったので、アロンの方へは必然的にカーラが手伝いに行くことになった。奥に向かうカーラに裕美子はしゅんと気持ちが落ち込む。
スープカップをお盆に載せてクリスティンがリビングへ戻ろうとしたとき、勇夫は飛び退いて台所から飛び出た。

「ありがとう、勇夫君。でも私そんなにおデブじゃないから通れるわよぉ」
「デ、デブじゃねえかも、し、しれんけど・・・さっき、当ってたし」
「あら、どこが?」
「・・・い、言えるか!!」
「そ~ぉ?」

ニコニコしながら台所から出て行った。


次回「第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(18):朝ごはん」へ続く!

前回のお話「第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(16):モーニングコーヒー」


対応する第1部のお話「第1部:第9章 レソフィックの広報記事(4):リーダーも変身?!」
☆☆「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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『目玉焼き作るとき、卵は高さ5cm以内で落とした方がいい。』
これはウチにもご訪問してくださっているmacinuさんのブログ「無駄なし!まかない道場」で「極上目玉焼きの作り方」として紹介されていたネタです。他にもとっても魅力的なレシピが一杯あって、料理好きの裕美子ちゃんに作らせたい~っていつも思ってます。また使わせてくださいね~。


※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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コメント 2

macinu

卵は高さ5cm以内流石です!楽しいお料理教室になりましたね~!!ポチット応援~(^o^)v
by macinu (2013-08-19 12:26) 

TSO

ぼんぼちぼちぼちさん、bitさん、ネオ・アッキーさん、いっぷくさん、alba0101さん、(。・_・。)2kさん、青竹さん、タッチおじさんさん、macinuさん、niceありがとうございます。

macinuさん、コメントありがとうございます。いつも参考にさせてもらってます。こっちもぽちっと応援してま~す。

by TSO (2013-08-25 11:15) 

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