<第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(1):放課後ティータイム> [片いなか・ハイスクール]
「片いなか・ハイスクール」連載第307回
<第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(1):放課後ティータイム>
日もすっかり長くなった6月の終わり頃。
この日最後の授業の後半は小テストになった。わたしは早々に終わってしまい、余った時間は、窓から注ぐ夏に向かう日差しを見ながら、行くと返事してしまった夏の旅行のことを考えていた。
『アロン君との進展を期待して返事しちゃったけど、そもそもそんな進展なんて、望んじゃいけないんじゃなかったっけ?衝動的に動いちゃうと、思ってたことと違う事しちゃうんだからもう・・・』
授業が終わったところで、クリスティンさんがとことことこっちにやってきた。
「すぐ帰っちゃう?まだいてもよければ一緒にお茶しない?」
え?わたしを誘ってるの?
「わたし、ですか?」
「そぉよ」
「ど、ど、どうして・・」
「ん?お友達だから誘ってるのよ?」
そ、そっか。クリスティンさんが来たということは、きっとハウルさんもいるのね。わたしのこと、お友達なんて言ってくれる人が現れるなんて、ここ来る前は思ってもみなかったのに・・・
別に急ぐ用事もない。だけど今ひとつ乗り気にならないのは、わたしの心の傷がまだ治ってないからなのかな。人への恐怖心はずいぶんよくなったみたいだけど・・。
そしたらクリスティンさん、急に顔が赤くなった。
「あらぁ?もしかして、ナンパだと思っちゃった?」
「え、え?」
「いやぁ~ん。そりゃぁユミちゃん、実はそのメガネの下にカワイイ顔隠してるから、そういうお誘いも有りかもしれないけど~。・・・一応、私ノーマルなのよぉー」
「な、なんの話ですか・・?」
クリスティンさんが顔を近付けてきた。クリスティンさん独特のふんわりとした笑顔。ほんのり甘い香り。柔らかな手がわたしの手を取った。
「でもぉ、もし・・」
な、なんで女の子なのに・・顔が赤くなってしまうのかしら・・・。手が、温かく柔らかなものに当たった。
・・って、手を見てびっくりした。だって、クリスティンさんに握ぎられていたわたしの手は、クリスティンさんの大きな胸のところにあったんだもん!
「ユミちゃん望むんだったら・・・」
「ひ、ひゃああ!」
クリスティンさんのもう片方の手が、わたしの頬から顎の方に向かって、変な手つきで撫でたものだから飛び上がってしまった。
ぞくぞくする背筋の悪寒に体が警告を発している。鈍いわたしでさえもどういう意味だか判ってしまった。
も、も、も、もしかして、お、女の子同士のいけない世界を・・?
「!!#!★○∞◇※%?!」
ぽんっとクリスティンさんが離れた。
「はいっ。お茶しに行こうね」
「ふふふ普通にですよね?!」
「もちろん。あ、お店じゃなくて、学校のお庭でなのよ~」
もうさっきの悩ましげな顔ではなく、いつもの無害なニコニコ顔に戻ってた。
「行くでしょ?」
「す、すぐ支度して行きます」
クリスティンさんはくるりと自分の席の方に向きを変えると
「待ってるねぇ」
とにっこりしながら戻っていった。
クリスティンさんって・・・、こないだの帽子屋さんに行ったときもそうだけど、わたしやっぱり、クリスティンさんにからかわれてるんじゃないのかしら。それか・・、ハウルさんを止められるくらいの人っていうのは、あれくらい突拍子もない人でないと務まらないのかも・・・。
それでも、わたしをお友達と認めてくれた貴重な人たち。このところ、あの人達とは特に親しくなった。でも、それがかえって怖い。もし・・もしこんなにしてくれる人たちに嫌われるようなことになったら・・・次は・・立ち直れないかもしれない・・・。
きっと、そういう不安が、これ以上踏み込まないようにって、ストッパーをかけてるのかもしれない・・。
それにしても、何食べたらあんなにおっきくなるのかしら・・・
次回「第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(2):中庭と東広場の穴の正体」へ続く!
前回のお話「第2部:第7章 隣町への買い物(7):夏の旅行計画」
対応する第1部のお話「第1部:第11章 7月のホタル鑑賞(1):2人で行けばよかったんじゃない?」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
Copyright(c) 2009-2014 TSO All Rights Reserved
どこかの有名作品にあるようなサブタイトルがついちゃってますが・・・まったく関係ありません。
さて、新章突入です。対応する第1部は同タイトルの第11章「7月のホタル鑑賞」ですが、場面は第1部より少し前から始まります。
※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。
ぽちっと応援してください。
<第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(1):放課後ティータイム>
日もすっかり長くなった6月の終わり頃。
この日最後の授業の後半は小テストになった。わたしは早々に終わってしまい、余った時間は、窓から注ぐ夏に向かう日差しを見ながら、行くと返事してしまった夏の旅行のことを考えていた。
『アロン君との進展を期待して返事しちゃったけど、そもそもそんな進展なんて、望んじゃいけないんじゃなかったっけ?衝動的に動いちゃうと、思ってたことと違う事しちゃうんだからもう・・・』
授業が終わったところで、クリスティンさんがとことことこっちにやってきた。
「すぐ帰っちゃう?まだいてもよければ一緒にお茶しない?」
え?わたしを誘ってるの?
「わたし、ですか?」
「そぉよ」
「ど、ど、どうして・・」
「ん?お友達だから誘ってるのよ?」
そ、そっか。クリスティンさんが来たということは、きっとハウルさんもいるのね。わたしのこと、お友達なんて言ってくれる人が現れるなんて、ここ来る前は思ってもみなかったのに・・・
別に急ぐ用事もない。だけど今ひとつ乗り気にならないのは、わたしの心の傷がまだ治ってないからなのかな。人への恐怖心はずいぶんよくなったみたいだけど・・。
そしたらクリスティンさん、急に顔が赤くなった。
「あらぁ?もしかして、ナンパだと思っちゃった?」
「え、え?」
「いやぁ~ん。そりゃぁユミちゃん、実はそのメガネの下にカワイイ顔隠してるから、そういうお誘いも有りかもしれないけど~。・・・一応、私ノーマルなのよぉー」
「な、なんの話ですか・・?」
クリスティンさんが顔を近付けてきた。クリスティンさん独特のふんわりとした笑顔。ほんのり甘い香り。柔らかな手がわたしの手を取った。
「でもぉ、もし・・」
な、なんで女の子なのに・・顔が赤くなってしまうのかしら・・・。手が、温かく柔らかなものに当たった。
・・って、手を見てびっくりした。だって、クリスティンさんに握ぎられていたわたしの手は、クリスティンさんの大きな胸のところにあったんだもん!
「ユミちゃん望むんだったら・・・」
「ひ、ひゃああ!」
クリスティンさんのもう片方の手が、わたしの頬から顎の方に向かって、変な手つきで撫でたものだから飛び上がってしまった。
ぞくぞくする背筋の悪寒に体が警告を発している。鈍いわたしでさえもどういう意味だか判ってしまった。
も、も、も、もしかして、お、女の子同士のいけない世界を・・?
「!!#!★○∞◇※%?!」
ぽんっとクリスティンさんが離れた。
「はいっ。お茶しに行こうね」
「ふふふ普通にですよね?!」
「もちろん。あ、お店じゃなくて、学校のお庭でなのよ~」
もうさっきの悩ましげな顔ではなく、いつもの無害なニコニコ顔に戻ってた。
「行くでしょ?」
「す、すぐ支度して行きます」
クリスティンさんはくるりと自分の席の方に向きを変えると
「待ってるねぇ」
とにっこりしながら戻っていった。
クリスティンさんって・・・、こないだの帽子屋さんに行ったときもそうだけど、わたしやっぱり、クリスティンさんにからかわれてるんじゃないのかしら。それか・・、ハウルさんを止められるくらいの人っていうのは、あれくらい突拍子もない人でないと務まらないのかも・・・。
それでも、わたしをお友達と認めてくれた貴重な人たち。このところ、あの人達とは特に親しくなった。でも、それがかえって怖い。もし・・もしこんなにしてくれる人たちに嫌われるようなことになったら・・・次は・・立ち直れないかもしれない・・・。
きっと、そういう不安が、これ以上踏み込まないようにって、ストッパーをかけてるのかもしれない・・。
それにしても、何食べたらあんなにおっきくなるのかしら・・・
次回「第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(2):中庭と東広場の穴の正体」へ続く!
前回のお話「第2部:第7章 隣町への買い物(7):夏の旅行計画」
対応する第1部のお話「第1部:第11章 7月のホタル鑑賞(1):2人で行けばよかったんじゃない?」
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by TSO (2014-03-09 11:01)