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<第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(2):中庭と東広場の穴の正体> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第308回
<第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(2):中庭と東広場の穴の正体>


6月の終わりのある放課後。
わたしはクリスティンさんに誘われて、お茶しに学校の中庭に向かって二人で歩いていた。

「最近ね、お菓子持ってきて中庭の芝生の所で食べてるんだぁ」

クリスティンさんは、中庭にある芝生の生えた丘にわたしを案内した。この時間そこは西側の校舎のおかげで半分日陰になっていて、夏に向かう日差しから避けることができた。クリスティンさんは鞄から敷物を出すと、てっぺんからややそれたところでそれを広げた。

「そっちの方は、ゴルフのカップの穴が開いてるから座りにくいのよ」

ゴルフのカップの穴?
見ると、深さ10cmくらいのきれいな穴がいくつか開いている。

「もしかして、東広場にいくつも開いてた穴もこれですか?サッカーやってた人が、立て続けにつまずいて怪我し そうになって、生徒会で問題になりかけてたんです」

わたしがそう言ったとたん、クリスティンさんは急に慌てだした。

「そうなの?大変!埋め戻しておけばいい?・・・いやぁ~、これ横穴でこっちのと繋がってそおよぉ~」
「??。クリスティンさんが開けたんですか?」
クリスティンさんは四つん這いになって、手に持った靴の底でパンパンと地面を叩きながら、開いてる穴を追いかけて芝生の丘を這いずっていった。そして折り返しのあるスニーカーの足下に出て止まった。インナーがチェック柄のその靴の持ち主が、クリスティンさんに向かって言った。

「それはモグラの掘った穴でしょ」

クリスティンさんが見上げた先にいたのはハウルさんだった。

「ハウル、どうしょう!この穴につまずいて大怪我した人が出たって、生徒会で大問題になってるって!犯人捕まえて処刑するってユミちゃんが!」
「え?処刑?!生徒会はいつからそんな独裁政権みたいなことするようになったの?」
「そんなこと言ってません・・」
「ち、違うわよ、私ここに穴なんて開けてないから!」
「ハウル~、この学校、監視カメラとかあったっけ?はっ、本校はお金持ちだっていうから、人工衛星使って見張ってるかもしれないわよ~」
「し、知らないわ!人工衛星?ど、どの辺飛んでるのかしら?この石投げて撃ち落とそうか!」
「ハウルならできるわよ~。そしたら国防省がハウルを雇ってくれるわ~。そうすれば少しくらい何かやっちゃっても多めにみてくれるかもしれないわ~。ハウル!撃ち落としましょう!」
「二人してクリスティン・ワールドに行かないでよ、もう大げさなんだから。それでどこまで本当なの?」

ハウルさんの後ろから現れたのは、保温ポットを持ったカーラさんだった。
そっか、カーラさんもお茶仲間だったんだ。この人もわたしをお友達として見てくれる大切な人。

「生徒会で話題になったのは東広場の穴です。つまずいた人が何人も出たのは本当です」

カーラさんが、ははぁと小さく唸った。

「東広場?!やった!あれ私じゃないから。パターゴルフ同好会の人達だから。こ、この辺のはモグラさんじゃなーい?」

ハウルさんがしてやったりという顔して言った。

「パターゴルフ同好会?」
「そうそう。だから私関係ないからー」

なんか怪しいなあ。

「ハウルさん、パターゴルフ同好会の人と仲いいんですか?」

そしたらクリスティンさんがニコニコ顔で付いてきた。

「ハウルねー、あの人たちがやってるの見てたら、勧誘されちゃったのよ~」
「勧誘?どこが。あれ下心見え見えだったわよ」
「うふふふ、そうなの~。ハウルって見た目が目立つし可愛いでしょう?立ち止まって見つめられちゃったものだから、パターゴルフ同好会の男子先輩達が、『き、君、1年生か?どうだ、やってみないか?面白いぞ~。気に入ると思うぞ~。同好会だから気軽に入ってみないか~?』って、鼻の下のばして。ねー」
「はあ。それで?」
「そしたらハウル、ちょっとやってみるって返事したの。もう先輩達喜んじゃって~。パターの握り方から振り方まで、手取り腰取り教えてくれるのよ~?」
「腰取り?」
「そんなわけだから、一人ハウルの肘打ちがみぞおちに入っちゃって、動けなくなってたっけ」
「はあ・・その人、大丈夫ですか?」
「1年の下っ端部員に保健室連れて行かれたから大丈夫よ~。それからスキンシップはぱったりなくなったわね。でね~、しばらくやってたら、ハウルが『なにこれ!みみっちくコンコン打つばっかりで、まるでゲートボールみたいじゃん!なんかじじくさい』とか言ったのよぉ」

雲行きが怪しくなってきたわ。パターゴルフ同好会の人もなんて無謀な人に声かけちゃったのかしら・・。
クリスティンさんはさらに滑らかになって続けた。

「『じゃあどんなのだったらいいんだ』って先輩達も困っちゃって、ハウルが『もっとアクロバティックなレイアウトにしようよ』て提案して、さっそく色々試すことになったの」

なんか嫌な予感がしてきた。

「入れちゃいけない穴作って避けながらゴールのカップを目指してみたり、ビリヤードみたいにしてポケット用の穴開けたりしたわよね~。でもやっぱりこれじゃゴルフと違うって同好会の人達はいやがってたわ。そこでとうとうハウルが見つけちゃったの、究極のパターゴルフ!」

するとここでハウルさんが得意げに話しに加わってきた。

「ホラ、二段グリーンとか三段グリーンとかいうのがあるじゃない!ああいうの目指そうってことにしたのよ。あれってつまり、傾斜のついてるグリーンでしょ。そういう場所探そうっていって学校中歩き回ったら、いいところがあったのよー。東広場のちょっと端の方!」

あ・・・。

「東広場の端の方って排水用に傾斜がついてるところがあるのよ。そこでやってみたら、弧を描いて転がるわ、Uの字とかSの字とか描いて転がるわ、結構面白くて連中もはまっちゃってさ。広場のあちこちで試したわ。あれならいくら私だってゲートボールなんて言わないわよ。発展させて急斜面の途中にカップの穴開けるのもやってみたし、これがまた奥が深いのよ」
「十分絡んでるじゃないですか・・」
「え?あああー!ち、違うのよ!アイディアは出したけど、ちょ、ちょっとこの辺掘ろうとか提案はしたけど、東広場の穴開けの実力行使したのはパターゴルフ同好会の人達だから・・」

そのとき、丘の下に下校途中のリーダーが現れた。


次回「第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(3):頼られるって」へ続く!

前回のお話「第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(1):放課後ティータイム」


対応する第1部のお話「第1部:第11章 7月のホタル鑑賞(1):2人で行けばよかったんじゃない?」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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TSO

やってみよう♪さん、yu-papaさん、bitさん、いっぷくさん、ぼんぼちぼちぼちさん、ネオ・アッキーさん、tonomaru521さん、copperさん、F−USAさん、yamさん、niceありがとうございます。
by TSO (2014-03-22 22:29) 

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