<第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(3):頼られるって> [片いなか・ハイスクール]
「片いなか・ハイスクール」連載第309回
<第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(3):頼られるって>
丘の下に下校途中のリーダーが現れた。
「やあ、みんな。こ、小泉さんも。何してるんですか?」
丘の縁を上に向かってきたところで、リーダーの足が何かに取られてつまずきそうになった。
「あぶなっ!・・おお!こんなところにも例の穴が!」
ハウルさんたちの顔からサーッと血の気が引いてくのが分かった。(-△-;)
「・・東広場以外のところの穴も同好会が?」
「新しい場所開拓するねってハウル、約束を・・」
「クリスティン!黙秘よ黙秘!もう私、口閉じた貝だから!んんんんん~」
下ではリーダーが息巻いてた。
「小泉さん、これはかなり大掛かりな陰謀ですよ!やっぱり生徒会で大大的に取り上げたほうがよさそうですね!」
リーダーの反応に、クリスティンさんが音にならないような声で
「処刑される!!」
とか言って縮こまって目をつぶっている。
もう、確実にこの人達関係してるじゃないですか。
わたしはふうと一息ついて立ち上がった。
「わたしたち、ここでお茶しようとしてるとこです。その穴は、もうちょっと情報集めましょう。わたしも調べてみますから。この丘、モグラの穴がずいぶんあるみたいだから、気を付けてくださいね」
一瞬血の気が上がってきていたリーダーは落ち着きを取り戻した。
「そ 、そうなんですか?これモグラの穴?ずいぶんきれいな形してるけど。・・・いやいや、小泉さんが調査したらすぐ解決しそうですね。うん、じゃあ僕も調べてみますよ。何かわかったら一緒に生徒会で報告しましょう」
「はい。明日からでいいですよ、慌てずに。それじゃリーダー、お気をつけて」
手を振って下校を催促した。
「はい。それじゃみんな、また明日な。さよなら」
よかった。リーダーにこやかに帰っていってくれたわ。
それを見てわたしのロングスカートにしがみついてたクリスティンさんが、力が抜けたようにずるずると崩れ落ちていった。
ちょっ!スカート掴んだまま!
「た、助かったぁ」
「やっぱ、リーダーを止められるのは裕美子しかいないわ」
「ク、クリスティンさん、スカートが・・・」
ああもう、腰骨の上辺りの肌が見えちゃってる。急いでずり上げた。
スカートに頬くっつけて一緒にずり上がったクリスティンさんが上を向いてわたしに言った。
「そういえばユミちゃん、リーダー一人で帰しちゃっていいの?一緒に下校とか・・」
何のことかしら。リーダーと帰る約束をした覚えはないし、用事もないからクリスティンさんのお茶の誘いについてきたのに。
「どうして?わたし、みんなとお茶したいです」
「そ、そうそう、お茶しよう!カーラ」
今までのやり取りを顔に斜線入れて聞いてたカーラさんが、紙コップと保温ポット持って敷物に座った。こうしてみるとカーラさんは普通の人だなあ。
カーラさんはポットの中身を注いで、わたしにカップをくれた。この香りは、アールグレイティーね。
「はい、どうぞ。カフェテリアでポットに詰めてきたのよ」
「ありがとうございます」
わたしは紙コップを受け取ると敷物に座った。
「今日のお茶受けはなあに?」
ハウルさんがクリスティンさんに聞くと、クリスティンさんは鞄から紙の小袋を取り出した。
「マシュマロよ~」
カーラさんに差し出した袋から、カーラさんは手を入れると淡いピンクのをひとつつまんで口に入れた。
「あー、なんか懐かしいわ。うふふ、おいしー」
ハウルさんは5つくらい拾い上げると、それを手のひらに乗せてわたしに差し出した。
「なんとか穏便に済ませてください」
はぁ・・。
リーダーさえ騒がなきゃなんとかなりそうだけど・・。これ以上穴が見つかったり、つまずいたりする人が出ない事が大前提だわ。
ハウルさんの手のひらから黄色っぽいのをひとつつまんで口に放り込んでもぐもぐした。
ふわふわした感触が、クリスティンさんみたい。
・・・なんで、あんなにおっきいのかしら・・。
はっ、クリスティンさんとハウルさんがわたしを見て行く末を見守ってる。しょうがないですね。
「・・パターゴルフ同好会の人達と、穴を埋め戻してください。目立たないようにこそっと。あとこの先も、活動するときは場所をよく考えることと、開けた穴は都度埋めるよう言っといてください」
「そうだよハウル。だいたい穴開けっ放しにしとくから問題になるんじゃん」
カーラさんが突っ込み入れてる。カーラさんは絡んでないのね。ハウルさんは焦って自分を指差してまだ抵抗してた。
「わ、私?同好会の連中じゃなくて、私?」
「東広場以外のはハウルなんでしょ?」
「ここの丘と、他にあとどこに開けたんですか?」
「う、裏山の斜面とか・・」
遠く校門の方を見ながら紅茶をすすった。
「お茶し終わったら、埋めといてくださいね」
「裕美子、きびしー」
「ハウル~、頼りはユミちゃんだけなのよ~。ゆうこと聞こうね」
「そうそう、頼りになるお友達が近くにいてよかったじゃん」
頼りか。
だけどこんな心配したり根回ししたりも、お友達だからよね。これって、こういう事してあげられるお友達がいるって、幸せな事よね。
「裕美子、ひどいわ、笑ってるー」
あら、笑っちゃった?
わあ!ハウルさん飛びかかってきたー!
わたしはハウルさんにくちゃくちゃにされた。こんなスキンシップ、忘れてた。小学校以来?・・でも、いやじゃなかった。
次回「第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(4):ヘビーデューティー・ライスクラッカー」へ続く!
前回のお話「第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(2):中庭と東広場の穴の正体」
対応する第1部のお話「第1部:第11章 7月のホタル鑑賞(1):2人で行けばよかったんじゃない?」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
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クリスティンちゃんの「処刑される!」ってところは、時事ネタで少し書き換えたところですが、わずかな間に世界はさらに激動しております。ついこないだ買った地球儀はいつまでもつことか・・。
※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。
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<第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(3):頼られるって>
丘の下に下校途中のリーダーが現れた。
「やあ、みんな。こ、小泉さんも。何してるんですか?」
丘の縁を上に向かってきたところで、リーダーの足が何かに取られてつまずきそうになった。
「あぶなっ!・・おお!こんなところにも例の穴が!」
ハウルさんたちの顔からサーッと血の気が引いてくのが分かった。(-△-;)
「・・東広場以外のところの穴も同好会が?」
「新しい場所開拓するねってハウル、約束を・・」
「クリスティン!黙秘よ黙秘!もう私、口閉じた貝だから!んんんんん~」
下ではリーダーが息巻いてた。
「小泉さん、これはかなり大掛かりな陰謀ですよ!やっぱり生徒会で大大的に取り上げたほうがよさそうですね!」
リーダーの反応に、クリスティンさんが音にならないような声で
「処刑される!!」
とか言って縮こまって目をつぶっている。
もう、確実にこの人達関係してるじゃないですか。
わたしはふうと一息ついて立ち上がった。
「わたしたち、ここでお茶しようとしてるとこです。その穴は、もうちょっと情報集めましょう。わたしも調べてみますから。この丘、モグラの穴がずいぶんあるみたいだから、気を付けてくださいね」
一瞬血の気が上がってきていたリーダーは落ち着きを取り戻した。
「そ 、そうなんですか?これモグラの穴?ずいぶんきれいな形してるけど。・・・いやいや、小泉さんが調査したらすぐ解決しそうですね。うん、じゃあ僕も調べてみますよ。何かわかったら一緒に生徒会で報告しましょう」
「はい。明日からでいいですよ、慌てずに。それじゃリーダー、お気をつけて」
手を振って下校を催促した。
「はい。それじゃみんな、また明日な。さよなら」
よかった。リーダーにこやかに帰っていってくれたわ。
それを見てわたしのロングスカートにしがみついてたクリスティンさんが、力が抜けたようにずるずると崩れ落ちていった。
ちょっ!スカート掴んだまま!
「た、助かったぁ」
「やっぱ、リーダーを止められるのは裕美子しかいないわ」
「ク、クリスティンさん、スカートが・・・」
ああもう、腰骨の上辺りの肌が見えちゃってる。急いでずり上げた。
スカートに頬くっつけて一緒にずり上がったクリスティンさんが上を向いてわたしに言った。
「そういえばユミちゃん、リーダー一人で帰しちゃっていいの?一緒に下校とか・・」
何のことかしら。リーダーと帰る約束をした覚えはないし、用事もないからクリスティンさんのお茶の誘いについてきたのに。
「どうして?わたし、みんなとお茶したいです」
「そ、そうそう、お茶しよう!カーラ」
今までのやり取りを顔に斜線入れて聞いてたカーラさんが、紙コップと保温ポット持って敷物に座った。こうしてみるとカーラさんは普通の人だなあ。
カーラさんはポットの中身を注いで、わたしにカップをくれた。この香りは、アールグレイティーね。
「はい、どうぞ。カフェテリアでポットに詰めてきたのよ」
「ありがとうございます」
わたしは紙コップを受け取ると敷物に座った。
「今日のお茶受けはなあに?」
ハウルさんがクリスティンさんに聞くと、クリスティンさんは鞄から紙の小袋を取り出した。
「マシュマロよ~」
カーラさんに差し出した袋から、カーラさんは手を入れると淡いピンクのをひとつつまんで口に入れた。
「あー、なんか懐かしいわ。うふふ、おいしー」
ハウルさんは5つくらい拾い上げると、それを手のひらに乗せてわたしに差し出した。
「なんとか穏便に済ませてください」
はぁ・・。
リーダーさえ騒がなきゃなんとかなりそうだけど・・。これ以上穴が見つかったり、つまずいたりする人が出ない事が大前提だわ。
ハウルさんの手のひらから黄色っぽいのをひとつつまんで口に放り込んでもぐもぐした。
ふわふわした感触が、クリスティンさんみたい。
・・・なんで、あんなにおっきいのかしら・・。
はっ、クリスティンさんとハウルさんがわたしを見て行く末を見守ってる。しょうがないですね。
「・・パターゴルフ同好会の人達と、穴を埋め戻してください。目立たないようにこそっと。あとこの先も、活動するときは場所をよく考えることと、開けた穴は都度埋めるよう言っといてください」
「そうだよハウル。だいたい穴開けっ放しにしとくから問題になるんじゃん」
カーラさんが突っ込み入れてる。カーラさんは絡んでないのね。ハウルさんは焦って自分を指差してまだ抵抗してた。
「わ、私?同好会の連中じゃなくて、私?」
「東広場以外のはハウルなんでしょ?」
「ここの丘と、他にあとどこに開けたんですか?」
「う、裏山の斜面とか・・」
遠く校門の方を見ながら紅茶をすすった。
「お茶し終わったら、埋めといてくださいね」
「裕美子、きびしー」
「ハウル~、頼りはユミちゃんだけなのよ~。ゆうこと聞こうね」
「そうそう、頼りになるお友達が近くにいてよかったじゃん」
頼りか。
だけどこんな心配したり根回ししたりも、お友達だからよね。これって、こういう事してあげられるお友達がいるって、幸せな事よね。
「裕美子、ひどいわ、笑ってるー」
あら、笑っちゃった?
わあ!ハウルさん飛びかかってきたー!
わたしはハウルさんにくちゃくちゃにされた。こんなスキンシップ、忘れてた。小学校以来?・・でも、いやじゃなかった。
次回「第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(4):ヘビーデューティー・ライスクラッカー」へ続く!
前回のお話「第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(2):中庭と東広場の穴の正体」
対応する第1部のお話「第1部:第11章 7月のホタル鑑賞(1):2人で行けばよかったんじゃない?」
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クリスティンちゃんの「処刑される!」ってところは、時事ネタで少し書き換えたところですが、わずかな間に世界はさらに激動しております。ついこないだ買った地球儀はいつまでもつことか・・。
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2014-03-08 18:00
nice!(18)
コメント(2)
☆☆ 災害時 安否確認 ☆☆
司馬亮さん、bitさん、げいなうさん、コボさん、enigumaさん、yamさん、いっぷくさん、ド田舎ネットさん、tonomaru521さん、niceありがとうございます。
by TSO (2014-03-09 11:18)
ネオ・アッキーさん、(。・_・。)2kさん、やってみよう♪さん、copperさん、TEDさん、ぼんぼちぼちぼちさん、ド田舎ネットさん、yu-papaさん、F−USAさん、ほちゃさん、niceありがとうございます。
by TSO (2014-03-22 23:18)