<第2部:第10章 夏のエピソード(7):中庭で夕食です(2)> [片いなか・ハイスクール]
「片いなか・ハイスクール」連載第331回
<第2部:第10章 夏のエピソード(7):中庭で夕食です(2)>
美女さんは次に小エビを茹で始めた。一方、わたしとイザベルさんは、美女さんの指示で太いボローニャソーセージとサラミ、チーズを薄切りにしてお皿に盛りつけている。これは本当に切っただけのオードブルだ。
「イザベル、そのソーセージのお皿、何か彩り足りないわね」
「別にいいんじゃない?レタスとか使い切っちゃったし」
「あ、あの、ブロッコリーあったから、茹でましょう・・か?」
「いいわね。お願い。あとおつまみの定番のフライドポテトとかでもあれば、最初の乾杯くらいできるでしょ」
「ジャガイモあります。わたしやりますね。揚げ油、残ったら後で鶏肉の唐揚でもしようかしら・・」
美女さんは一瞬手を止めると、わたしに目をやった。
「前評判通り、料理得意みたいね。じゃあポテト頼むわ」
「は、はい」
美女さんと一緒にいると、緊張するなぁ。
美女さんはあの後、ゆでた小エビをフライパンでニンニクとエリンギ、マッシュルームと一緒にささっと炒めて塩コショウで味付けし、パセリを散らしてパルメザンチーズをふりかけたおつまみをもう1品作り、戻ってきたダーニャさんとイザベルさんと一緒に、サラミとソーセージのオードブルを持って先に皆のところに戻った。
わたしは櫛型に切ったジャガイモを低めの温度の油でしばらく揚げ、浮いてきたところで油を高温にしてこんがり色づけしてフライドポテトを作った。こうすると水分が抜けてカリッと揚がる。大皿に盛って塩とパセリを振って、ケチャップを添えた。
鶏肉は一口大に切って、ニンニク・ショウガ醤油に浸して下ごしらえしておいた。後でまた来て揚げようと思う。
「こいずみー、お腹減ったからおねーさんが手伝いに来たよー」
「ありがとうございます。いっぱいあるからどうしようかと思ってたところでした」
手伝いにという口実でやってきたシャノンさん、さっそく揚げたてのポテトにパクついた。
「こいずみー、こ、これ、おいしいわー」
まずい。シャノンさん止めないと。遠慮なく食べてる。
「あ、あの、みんなと一緒に食べましょうね」
「いっこー、あともう1個ー」
わたしも幼く見える部類だと思うけど、見かけ通りの幼さぶりのシャノンさんをあやしてると、わたしでさえ幼稚園の先生のように思えてくる。
シャノンさんと一緒にフライドポテトの大皿を持って中庭に戻ると、男子達がコップとを飲み物を配っているところだった。
「こっ、これ、ビールじゃないか!」
向こうでリーダーが叫ぶのが聞こえた。案の定注意されたわね。
「まあまあ。せっかくの旅行じゃないか。暑い夏だし、喉も潤おわさなきゃ」
「酔った勢いで何かしたらどうするんだ!お巡りさんに見つかったらどうする?!」
「宿の敷地からは出ないからさあ。いいだろー?」
周り中から説得され、終いには勇夫君が
「レソフィックの家では飲んでたのに」
と言いそうになったところでさすがに折れた。
「く、くれぐれもご近所には迷惑かけないように」
「分かってるって。かんぱーい!」
「かんぱーい!」
みんな楽しそうに夕食が始まった。
笑い声が中庭に響き、賑やかに夕食が始まっていた。
末席でわたしはジュースを傾けながら、美味しそうに大皿に盛られたオードブルを摘んでるみんなを眺めていた。
美女さん凄いな。短時間でおつまみ準備しちゃったから、すぐ食事始められた。後はこの間にアロン君達のメインディッシュができあがれば完璧。
アロン君達は乾杯もそこそこにグリルの所に戻ってお肉を焼く続きを再開していた。カーラさんはもうレソフィックさんと炭火グリルに付きっきりだ。
わたしも様子を見に側へ行ってみた。
「そ、それでアロン君、お肉はどうやって、た、食べる・・のかしら?」
カーラさんの、やけにかしこまった質問に、アロン君急に思い出したように椅子から飛び上がった。すっかり忘れてみたいだ。
「あ!、そうだ。ソース作らなきゃ!あれ?勇夫は?」
勇夫君はハウルさんとポテトを頬張ってた。
「あー、やっぱポテトは皮付きじゃなきゃねぇ」
「もぐもぐ、そうなのか?」
「皮のところにも栄養あるんだから。カリッとして食感もいいでしょ。これ作ったのは裕美子だって?」
「あ、はい。わたしです。皮よく洗ってあるし大丈夫ですよ」
「さすがね~。私ポテト料理にはうるさいんだから」
「食えりゃ何でもよさそうなくせに」
「勇夫ー、ソース作るから来いよー!」
アロン君が催促した。
「ちょ、ちょっと待て。少しエネルギー補給させてくれ。腹減って動けねえんだ」
「あは、うんうん、分かる分かる。イモはそういうときいいのよねー。炭水化物は人間の最高の燃料だからね」
ハウルさんが相槌を打ちながら、勇夫君の口にポテトを差し出してた。餌やり?食いしん坊な二人は色々共通するものがあるらしい。
しょうがないな。
「アロン君、それじゃ、わたし手伝います」
アロン君がわたしの方に振り向いた。
「ホント?ソースったってたいしたモンじゃないんだけど。でもそうしてくれると助かる」
「わかりました。行きましょう」
席を立つと、アロン君とキッチンへ向かった。
また僅かな時間だけど一緒になれる。
もう決まった人がいる人だけど、それでもやっぱり一緒にいられるのは嬉しいんだ。いけないことなのに・・・
ううん、違う。わたしは単にお手伝いに行くだけなんだから。
次回「夏のエピソード(8):中庭で夕食です(3)」へ続く!
前回のお話「夏のエピソード(6):中庭で夕食です(1)」
対応する第1部のお話「第1部:第14章 夏のエピソード後編(2):美女の才能」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
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美女さんと裕美子ちゃんの料理対決?
ってわけでもないですけど、お料理シーンが続く予定です。
※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。
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<第2部:第10章 夏のエピソード(7):中庭で夕食です(2)>
美女さんは次に小エビを茹で始めた。一方、わたしとイザベルさんは、美女さんの指示で太いボローニャソーセージとサラミ、チーズを薄切りにしてお皿に盛りつけている。これは本当に切っただけのオードブルだ。
「イザベル、そのソーセージのお皿、何か彩り足りないわね」
「別にいいんじゃない?レタスとか使い切っちゃったし」
「あ、あの、ブロッコリーあったから、茹でましょう・・か?」
「いいわね。お願い。あとおつまみの定番のフライドポテトとかでもあれば、最初の乾杯くらいできるでしょ」
「ジャガイモあります。わたしやりますね。揚げ油、残ったら後で鶏肉の唐揚でもしようかしら・・」
美女さんは一瞬手を止めると、わたしに目をやった。
「前評判通り、料理得意みたいね。じゃあポテト頼むわ」
「は、はい」
美女さんと一緒にいると、緊張するなぁ。
美女さんはあの後、ゆでた小エビをフライパンでニンニクとエリンギ、マッシュルームと一緒にささっと炒めて塩コショウで味付けし、パセリを散らしてパルメザンチーズをふりかけたおつまみをもう1品作り、戻ってきたダーニャさんとイザベルさんと一緒に、サラミとソーセージのオードブルを持って先に皆のところに戻った。
わたしは櫛型に切ったジャガイモを低めの温度の油でしばらく揚げ、浮いてきたところで油を高温にしてこんがり色づけしてフライドポテトを作った。こうすると水分が抜けてカリッと揚がる。大皿に盛って塩とパセリを振って、ケチャップを添えた。
鶏肉は一口大に切って、ニンニク・ショウガ醤油に浸して下ごしらえしておいた。後でまた来て揚げようと思う。
「こいずみー、お腹減ったからおねーさんが手伝いに来たよー」
「ありがとうございます。いっぱいあるからどうしようかと思ってたところでした」
手伝いにという口実でやってきたシャノンさん、さっそく揚げたてのポテトにパクついた。
「こいずみー、こ、これ、おいしいわー」
まずい。シャノンさん止めないと。遠慮なく食べてる。
「あ、あの、みんなと一緒に食べましょうね」
「いっこー、あともう1個ー」
わたしも幼く見える部類だと思うけど、見かけ通りの幼さぶりのシャノンさんをあやしてると、わたしでさえ幼稚園の先生のように思えてくる。
シャノンさんと一緒にフライドポテトの大皿を持って中庭に戻ると、男子達がコップとを飲み物を配っているところだった。
「こっ、これ、ビールじゃないか!」
向こうでリーダーが叫ぶのが聞こえた。案の定注意されたわね。
「まあまあ。せっかくの旅行じゃないか。暑い夏だし、喉も潤おわさなきゃ」
「酔った勢いで何かしたらどうするんだ!お巡りさんに見つかったらどうする?!」
「宿の敷地からは出ないからさあ。いいだろー?」
周り中から説得され、終いには勇夫君が
「レソフィックの家では飲んでたのに」
と言いそうになったところでさすがに折れた。
「く、くれぐれもご近所には迷惑かけないように」
「分かってるって。かんぱーい!」
「かんぱーい!」
みんな楽しそうに夕食が始まった。
笑い声が中庭に響き、賑やかに夕食が始まっていた。
末席でわたしはジュースを傾けながら、美味しそうに大皿に盛られたオードブルを摘んでるみんなを眺めていた。
美女さん凄いな。短時間でおつまみ準備しちゃったから、すぐ食事始められた。後はこの間にアロン君達のメインディッシュができあがれば完璧。
アロン君達は乾杯もそこそこにグリルの所に戻ってお肉を焼く続きを再開していた。カーラさんはもうレソフィックさんと炭火グリルに付きっきりだ。
わたしも様子を見に側へ行ってみた。
「そ、それでアロン君、お肉はどうやって、た、食べる・・のかしら?」
カーラさんの、やけにかしこまった質問に、アロン君急に思い出したように椅子から飛び上がった。すっかり忘れてみたいだ。
「あ!、そうだ。ソース作らなきゃ!あれ?勇夫は?」
勇夫君はハウルさんとポテトを頬張ってた。
「あー、やっぱポテトは皮付きじゃなきゃねぇ」
「もぐもぐ、そうなのか?」
「皮のところにも栄養あるんだから。カリッとして食感もいいでしょ。これ作ったのは裕美子だって?」
「あ、はい。わたしです。皮よく洗ってあるし大丈夫ですよ」
「さすがね~。私ポテト料理にはうるさいんだから」
「食えりゃ何でもよさそうなくせに」
「勇夫ー、ソース作るから来いよー!」
アロン君が催促した。
「ちょ、ちょっと待て。少しエネルギー補給させてくれ。腹減って動けねえんだ」
「あは、うんうん、分かる分かる。イモはそういうときいいのよねー。炭水化物は人間の最高の燃料だからね」
ハウルさんが相槌を打ちながら、勇夫君の口にポテトを差し出してた。餌やり?食いしん坊な二人は色々共通するものがあるらしい。
しょうがないな。
「アロン君、それじゃ、わたし手伝います」
アロン君がわたしの方に振り向いた。
「ホント?ソースったってたいしたモンじゃないんだけど。でもそうしてくれると助かる」
「わかりました。行きましょう」
席を立つと、アロン君とキッチンへ向かった。
また僅かな時間だけど一緒になれる。
もう決まった人がいる人だけど、それでもやっぱり一緒にいられるのは嬉しいんだ。いけないことなのに・・・
ううん、違う。わたしは単にお手伝いに行くだけなんだから。
次回「夏のエピソード(8):中庭で夕食です(3)」へ続く!
前回のお話「夏のエピソード(6):中庭で夕食です(1)」
対応する第1部のお話「第1部:第14章 夏のエピソード後編(2):美女の才能」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
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美女さんと裕美子ちゃんの料理対決?
ってわけでもないですけど、お料理シーンが続く予定です。
※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。
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2014-12-07 07:00
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コメント(2)
☆☆ 災害時 安否確認 ☆☆
「共産党と社民党の消滅を望む」さん、本ブログ内容とは関係のないコメントのようなので削除させていただきました。
by TSO (2014-12-13 22:10)
やってみよう♪さん、ネオ・アッキーさん、F−USAさん、bitさん、(。・_・。)2kさん、いっぷくさん、ジョナサンさん、まっつんさん、楽っくん。(らっくん)さん、ぼんぼちぼちぼちさん、yamさん、copperさん、桂文筆さん、ほちゃさん、niceありがとうございます。
by TSO (2014-12-13 22:13)