<第2部:第10章 夏のエピソード(9):中庭で夕食です(4)> [片いなか・ハイスクール]
「片いなか・ハイスクール」連載第333回
<第2部:第10章 夏のエピソード(9):中庭で夕食です(4)>
メインディッシュの大きなお肉の塊は、強火の炭火で炙られて、表面の焼けたところから削ぎ落としていって、さっきのソースをかけて配られていった。表面の焦げ目のすぐ内側はピンク色だけど、レアというわけではなくてちゃんと火が入って味が活性化してるところがアロン君曰わく炭火の魔力だそうだ。焼き鳥も炭火で焼いたのは格段に美味しいから、同じような感じかな。
あれだけあったお肉も、焼いて配ると余ることなく意外と普通に行き渡っちゃった。そしてあのソース、作り方は大ざっぱなのに、お肉と合わせると意外や上品な味になって驚いた。ビネガーの酸味がお肉をさっぱりさせて美味しい。
「さすがユミちゃんね。おいしいわあ」
「あ、いえこれ、味付けとかわたし本当に何もやってないんです」
「じ、じゃあ、アロン君?す、すごぉい・・」
カーラさんはもじもじとアロン君を誉めた。
「いやあ・・俺も人から教わっただけで、俺が考えついたものでもないんだけどさ。あっはっは」
「アロン、飲んでっかー?」
「レソフィック、お前飲むペース早くないか?」
「でーじょぶ、旨いつまみもあるしー。この海老とキノコのは小泉が?」
「美女さんですよ、おつまみ系のほとんど」
「え?!」
「アロン、もっと食べて?」
美女さん、おつまみ一皿とビールの缶持って、アロン君の隣にすり寄った。
「わわわ・・」
「ちょっと美女!アロン君窮屈そうにしてるよ!」
カーラさんが割って入るが、余裕顔で美女さん返す。
「そういやカーラ、キッチン行って何作ったの?」
「う・・レ、レ、レタス剥いたもん!」
「カーラ一番の功績は火熾しだよなあー」
「ほほほ、どっちも薪割りみたいな次元ね」
レソフィック君の酔った勢いでのフォローはかえって墓穴を掘ったようで、レソフィック君の背中にカーラさんの張り手が炸裂した。アロン君も宥めに入った。
「できることで手伝ってくれりゃいいんだから。カーラ助かってるよ」
もじもじしてるが、カーラさんあまり嬉しそうにない。
「アロンー、肉おかわりー」
「俺もー」
ウォルト君とパウロさんが空になったお皿を持ち上げて催促した。
「おかわりなんてねーよ」
「えー?ないの?」
「食い足りねえよー」
「もっとゆっくり味わって食え!」
「最初の料理はあらかた食ったな」
「あと何かあったっけ?」
「食いしん坊共め~」
確かに乾杯したときのオードブルやポテトフライなどのお皿は大部分空になってきていた。
まだ残っているお皿を探して勇夫君とハウルさんがやってきた。
「あ、このテーブルもほとんどないわ」
「イザベル、もう作んないの?」
「なにその催促!そこまで頼まれてないよ!」
なみなみとビールを注がれたアロン君も、
「食い物なしにそんなガブガブ飲めないよ」
と言うと、美女さん、アロン君に肩をすり寄せて言った。
「うふふふ、じゃあ作ってあげようか。キ・ミ・の・た・め・に」
うわ、美女さん、またアピールするつもりなんだ。
アロン君も、もう顔真っ赤になってる。
立ち上がった美女さん、行きがけにわたしに声をかけていった。
「そういや小泉、何か揚げ物とか作るって言ってなかったっけ?」
「あ、そ、そうでした。冷蔵庫にあった鶏肉勝手に使っちゃいましたけど、いいんですよね?」
わたしの問いにレソフィックさんが答えた。
「あ、あれ牛肉の塊買ったときにおまけでくれたんだ。使っちゃっていいぞ」
「カーラさんも、行きますか?」
「あ、・・ううん、あたし料理ダメだから」
カーラさん、なんか自信なくしちゃったみたいだな。
「しょうがない。行くか!」
イザベルさんも踏ん切りをつけて立ち上がり、わたしと一緒にキッチンへ向かった。
イザベルさんに油を熱してもらっている間に、さっきタレに漬けておいた鶏肉に片栗粉をまぶした。
油の温度で暑くなったコンロ周りの熱気でイザベルさんが目を回しそうになってる。
「暑い~、フラフラする・・。油の温度180度だっけ?いいわよ」
「ありがとうございます」
熱々の油に鶏肉を入れる。一旦引き上げて、しばらくしてからもう一度油の中をくぐらせる。二度揚げするのは、外側カリッと、中はジューシーになるからだ。鶏肉は日本風の竜田揚げになった。
横には美女さんの置いたフライパンがあった。小ネギを刻んでた美女さんがフライパンの蓋を取ると、もわあっと上がる湯気にはガーリックとバターと磯の香り。フライパンの中身はあさりだった。貝が開いたところでお皿に開け、ぱぱっと塩コショーして刻んだ小ネギを散らした。あさりのガーリックバター蒸しだ。
美女さんはもう1品。卵を贅沢に使って、刻んだベーコンとチーズでオムレツを作った。ポンポンとフライパンを揺らす手つきは、普段からやってるものだ。
タンパク質系のものばかりなので、さっぱりしたものをもう1品と思い、イザベルさんとタマネギをスライスして水にさらして、カイワレダイコン、チリメンジャコ、かつお節をまぶし、ごま油としょう油で作ったドレッシングをかけ回してサラダを作った。この和風な材料は勇夫君のチョイスかしら。
次回「第2部:第10章 夏のエピソード(10):中庭で夕食です(5)」へ続く!
前回のお話「第2部:第10章 夏のエピソード(8):中庭で夕食です(3)」
対応する第1部のお話「第1部:第14章 夏のエピソード後編(2):美女の才能」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
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料理お食事が続いてます。こんなに長引かせるつもりはなかったんですが、、、そろそろ終わりにもっていかないと。
※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。
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<第2部:第10章 夏のエピソード(9):中庭で夕食です(4)>
メインディッシュの大きなお肉の塊は、強火の炭火で炙られて、表面の焼けたところから削ぎ落としていって、さっきのソースをかけて配られていった。表面の焦げ目のすぐ内側はピンク色だけど、レアというわけではなくてちゃんと火が入って味が活性化してるところがアロン君曰わく炭火の魔力だそうだ。焼き鳥も炭火で焼いたのは格段に美味しいから、同じような感じかな。
あれだけあったお肉も、焼いて配ると余ることなく意外と普通に行き渡っちゃった。そしてあのソース、作り方は大ざっぱなのに、お肉と合わせると意外や上品な味になって驚いた。ビネガーの酸味がお肉をさっぱりさせて美味しい。
「さすがユミちゃんね。おいしいわあ」
「あ、いえこれ、味付けとかわたし本当に何もやってないんです」
「じ、じゃあ、アロン君?す、すごぉい・・」
カーラさんはもじもじとアロン君を誉めた。
「いやあ・・俺も人から教わっただけで、俺が考えついたものでもないんだけどさ。あっはっは」
「アロン、飲んでっかー?」
「レソフィック、お前飲むペース早くないか?」
「でーじょぶ、旨いつまみもあるしー。この海老とキノコのは小泉が?」
「美女さんですよ、おつまみ系のほとんど」
「え?!」
「アロン、もっと食べて?」
美女さん、おつまみ一皿とビールの缶持って、アロン君の隣にすり寄った。
「わわわ・・」
「ちょっと美女!アロン君窮屈そうにしてるよ!」
カーラさんが割って入るが、余裕顔で美女さん返す。
「そういやカーラ、キッチン行って何作ったの?」
「う・・レ、レ、レタス剥いたもん!」
「カーラ一番の功績は火熾しだよなあー」
「ほほほ、どっちも薪割りみたいな次元ね」
レソフィック君の酔った勢いでのフォローはかえって墓穴を掘ったようで、レソフィック君の背中にカーラさんの張り手が炸裂した。アロン君も宥めに入った。
「できることで手伝ってくれりゃいいんだから。カーラ助かってるよ」
もじもじしてるが、カーラさんあまり嬉しそうにない。
「アロンー、肉おかわりー」
「俺もー」
ウォルト君とパウロさんが空になったお皿を持ち上げて催促した。
「おかわりなんてねーよ」
「えー?ないの?」
「食い足りねえよー」
「もっとゆっくり味わって食え!」
「最初の料理はあらかた食ったな」
「あと何かあったっけ?」
「食いしん坊共め~」
確かに乾杯したときのオードブルやポテトフライなどのお皿は大部分空になってきていた。
まだ残っているお皿を探して勇夫君とハウルさんがやってきた。
「あ、このテーブルもほとんどないわ」
「イザベル、もう作んないの?」
「なにその催促!そこまで頼まれてないよ!」
なみなみとビールを注がれたアロン君も、
「食い物なしにそんなガブガブ飲めないよ」
と言うと、美女さん、アロン君に肩をすり寄せて言った。
「うふふふ、じゃあ作ってあげようか。キ・ミ・の・た・め・に」
うわ、美女さん、またアピールするつもりなんだ。
アロン君も、もう顔真っ赤になってる。
立ち上がった美女さん、行きがけにわたしに声をかけていった。
「そういや小泉、何か揚げ物とか作るって言ってなかったっけ?」
「あ、そ、そうでした。冷蔵庫にあった鶏肉勝手に使っちゃいましたけど、いいんですよね?」
わたしの問いにレソフィックさんが答えた。
「あ、あれ牛肉の塊買ったときにおまけでくれたんだ。使っちゃっていいぞ」
「カーラさんも、行きますか?」
「あ、・・ううん、あたし料理ダメだから」
カーラさん、なんか自信なくしちゃったみたいだな。
「しょうがない。行くか!」
イザベルさんも踏ん切りをつけて立ち上がり、わたしと一緒にキッチンへ向かった。
イザベルさんに油を熱してもらっている間に、さっきタレに漬けておいた鶏肉に片栗粉をまぶした。
油の温度で暑くなったコンロ周りの熱気でイザベルさんが目を回しそうになってる。
「暑い~、フラフラする・・。油の温度180度だっけ?いいわよ」
「ありがとうございます」
熱々の油に鶏肉を入れる。一旦引き上げて、しばらくしてからもう一度油の中をくぐらせる。二度揚げするのは、外側カリッと、中はジューシーになるからだ。鶏肉は日本風の竜田揚げになった。
横には美女さんの置いたフライパンがあった。小ネギを刻んでた美女さんがフライパンの蓋を取ると、もわあっと上がる湯気にはガーリックとバターと磯の香り。フライパンの中身はあさりだった。貝が開いたところでお皿に開け、ぱぱっと塩コショーして刻んだ小ネギを散らした。あさりのガーリックバター蒸しだ。
美女さんはもう1品。卵を贅沢に使って、刻んだベーコンとチーズでオムレツを作った。ポンポンとフライパンを揺らす手つきは、普段からやってるものだ。
タンパク質系のものばかりなので、さっぱりしたものをもう1品と思い、イザベルさんとタマネギをスライスして水にさらして、カイワレダイコン、チリメンジャコ、かつお節をまぶし、ごま油としょう油で作ったドレッシングをかけ回してサラダを作った。この和風な材料は勇夫君のチョイスかしら。
次回「第2部:第10章 夏のエピソード(10):中庭で夕食です(5)」へ続く!
前回のお話「第2部:第10章 夏のエピソード(8):中庭で夕食です(3)」
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※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。
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