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スト魔女二次小説:水音の乙女 ~第13話~ [スト魔女二次小説]

第13話「スカウト」


アリューシャンでの作戦を終えた特設水上機母艦「神川丸」は、無事横須賀港に帰投した。戻るなり最優先でドック入りすると、ただちに整備と補給が始まった。
航行中に所属が北東方面艦隊から南西方面艦隊南遣艦隊に変わり、神川丸艦長 有間大佐は北東方面艦隊司令部に作戦終了を報告すると、続いて南遣艦隊司令部に出向いて着任の挨拶をしに行こうとしていた。

「艦長。今回の補給で第428航空隊が新たに配備されます。新編成の航空隊です。内訳は零式水偵4機、零観3機」

一瞬艦に立ち寄ったところを、補給の指揮をしている副長にすかさず捕まえられた。

「しこたま積むんだな。うちの専属を加えたら最大搭載数だ。司令部はどんな作戦を考えてるんだ」
「それで、搭乗員だけ先に到着していて、挨拶しにこちらへ向かっているそうです」
「今か?面倒臭え。適当に相手しといてくれるか」
「え?会われないのですか?」
「どうせ後で嫌と言うほど会うことになる。それよりウィッチの補充はないのかえ?」
「今のところ聞いておりません」
「それはなおさら司令部に話をしに行かにゃあ。それじゃちょいと頼むよ」
「はあ。それでは貸しにしときますよ」






南遣艦隊司令部に出頭し、着任の挨拶をすませると、さっそく本題を切り出した。

「司令。今度の作戦、潜水型ネウロイが相手なんでしょう?」
「そうだ。だから腕の良い水偵乗りを集めてもらってあるよ」
「そんな頭数を集めるより、凄げえのがいるらしいんですよ」

有間艦長は優奈から聞いた話、水中の様子を探る事ができるウィッチについての話をした。

「それは本当なのか?」

南遣艦隊の司令官は、小柄な体を目一杯伸ばして関心を示した。

「しかし魚の群れてるところとか、鯨の居場所を見つけられるって・・使えるのかね」

参謀の一人は胡散臭そうな顔をした。

「少なくとも試してみるべきじゃあないでしょうか?」

別の参謀が連絡票を見ながら発言した。

「横須賀のウィッチ教練隊から来てる、水中探信という固有魔法を使うものがいるという報告は、それと関係あるのか?」
「え?もうご存知なのですか?」
「一崎天音、という女学生だそうだ」

有間艦長はバシッと膝を叩いた。

「その子だ」





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期末考査も終わった学校に、扶桑皇国海軍のウィッチがやってきた。
白い二種軍装の士官制服に軍帽をかぶって、腰まである黒髪をたなびかせてきびきびと歩く姿を見かけた女学生達が、きゃいのきゃいのと騒いでいる。

「ねえねえ。見た?」
「見た見た!すごいかっこいい!」

その後ろに白い水兵服と水兵帽の、女学生達より小さそうな娘がちょこまかと付いて歩いていた。

「・・・可愛いのが追いかけてたけど、あれ本物かな」

校舎に入っていくところを遠くからチラッとだけ見た天音は、なんか見たことあるなあと思いつつも、花壇への水やりを続けていた。
そしたら担任の先生が息を切らして飛んできた。

「一崎さん、急いで校長室まで行ってちょうだい」





天音が校長室に入ってみると、そこにはさっきのウィッチの人が座っていた。見たことあると思ったら、士官服の人は初夏の頃、優奈のウィッチ適性検査をした人だった。ついでに天音も審査を受けたので面識があったのだ。たしかもう魔法力は衰えてしまって、元ウィッチとして今は教官をしているという人だった。
もう一人の天音と同い年くらいの水兵服を着た娘は面識なかった。天音を見てやけに嬉しそうに笑顔を振りまいている。

元ウィッチの人に目線を戻した。

なんでまたこの人が学校まで来たんだろう・・・
まさか!

「優奈に、何かあったんですか?」

天音が急に心配顔に変わったので、その元ウィッチの人は宥めるように優しく微笑んだ。

「筑波さんはすこぶる元気よ。安心して」

天音はほーっと胸をなで下ろした。

優奈の事じゃないのか。よかったー。

元ウィッチの人が切り出した。

「海軍横須賀教練隊の横川和美少佐です。久しぶりね、一崎天音さん。今日はあなたに話があって来たの」

天音は不思議そうな顔をした。横川少佐と校長先生の顔を交互に見た。

「今日来たのは他でもない。一崎さん、あなたに扶桑海軍に来てほしいの」

横川少佐の顔で目を止めた天音は、首を傾げて益々不思議そうな顔をした。

「・・・わたし、半年前に検査したばかりですよ。ずいぶん前からウィッチとして発現はしてるけど、空のも陸のにもストライカーが反応してくれなくて、ぜんぜん役に立たなかったじゃないですか」

そして校長の方を向いた。

「誰か他の人と間違えてるんじゃ・・」

しかし校長先生は首を横に振った。

「一崎さん。海軍が欲しているのは、あなたの固有魔法、『水中探信』です。いよいよあなたの力が必要なときがきたのよ」
「・・使い道がないって言われてたのに?」

天音はきょとんとした。

「この一週間で状況は一変したわ」

はあ?・・と、天音は飲み込めない返事をした。

「とにかく、事は国家の存亡に関わる重要事案。軍に引き抜きたいといってもご両親の耳にも入れないといけない事だから、これからあなたのお家に行きます。送るので帰宅準備して下さい」

天音は驚いた顔を校長先生に向けた。

「下校してよい。この方の言うとおりにしたまえ」

状況についていけない天音は戸惑ってあわあわした。

「心配するな。君の力はこんな地方の漁協で使うための物じゃない。その辺のウィッチなんか足下にも及ばない活躍が期待されとるんだ」

ぽんぽんと頭を撫でられた。

今まで用途のなかった魔法が、急になんでそんなことに?ぜんぜん納得いかないわ。

「ところで、この方は?」

天音は水兵服の娘を指した。

「私の助手として来てもらった磐城一飛曹です。この子もウィッチですよ」

すっくと立ち上がると、いっちょ前に敬礼した。背丈は天音より小さかった。

「磐城浅子(いわきあさこ)一等飛行兵曹であります!今日は運転手兼雑用係として、横川少佐のお供をしております!お会いできて光栄です!」
「こ、光栄になるようなことしてませんが・・。一崎天音です。よろしくお願いします」
「これから有名になるですよね?今のうちサイン貰っといていいでしょうか?!」

ポケットをごそごそしだしたので、横川少佐が止めに入った。

「やめなさい、磐城さん。ごめんね、子供みたいで。これでも16歳なのよ」
「え?わたしより3つも上?!」
「ウィッチとしては新米であります!実は、筑波さんと同期なのです」
「優奈と?」
「はい!今年度前期の入隊であります!」
「海軍に入ったというのに、家が陸軍の人ばかりだから口調が陸軍調で、参っちゃうわ」
「海軍陸戦隊に配置換えになりましたら、ぜひチリ改陸上戦闘脚に!」
「そんなの陸戦隊は持ってません。あなたは航空歩兵でしょ」
「はい、であります!」

まったく、と呆れ顔の横川少佐である。

「さあ行きましょう。親御さんがお待ちだわ」





天音と横川少佐が車の後ろの席に乗ると、磐城が運転席に座った。天音より小さい磐城なので、運転席に埋もれて頭のてっぺんしか見えないような状態である。エンストを1回したが、なんとか車を運転して学校の敷地を出て行った。

天音がウィッチの人と海軍の用意した車に乗せられて帰っていったので、学校のみんなは大騒ぎだった。

「VIP?」
「なにそれ?」
「最重要人物ってことよ」
「天音、捕まっちゃったのー?」
「採っちゃいけないもの捕まえちゃったのかな。伊勢エビってまだ禁漁期だよね?」
「財宝じゃない?昔沈んだ千両箱積んだ千石船を見つけたんだよ」
「警察じゃなくて海軍だったよ?」
「じゃ、軍の海底秘密基地見つけちゃったんだよ。こりゃヤバいわー」
「ねぇ~、悪い方ばっかり考えるのやめようよ~」




続く


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前回までしばらくおっさんどものむさ苦しい会話のオンパレードが続いていたので、雰囲気を変えて引っ掻き回すキャラとして急遽、磐城ちゃんというウィッチを作り出しました。急ごしらえキャラの割には重要な役を担うことになりましたが・・。無計画に出場者増やしてますが、収拾つくのでしょうか。

天音ちゃんのスカウトに来たウィッチは横川和美。
リバウの魔王こと西沢義子がまだ入隊希望者だったころ、練習脚で一緒に飛んでるイラストが本家スト魔女にある人です。このとき少尉とのことなので、少佐に昇進させて使わせていただきました。イラストと西沢とのエピソード以外知らないので、キャラ設定はいろいろ間違ってるのかもしれませんが、独自解釈でいきます。

天音ちゃんを審査したウィッチはもう一人いることになってますが、こちらもすぐ判明します。



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