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<俺の家は海賊(1)> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第30回
<俺の家は海賊(1)>

Cクラスではマフィア映画の話が持ちきりだった。今大流行のこの映画のマフィアはワルっぽいが、正義感があり、かたぎにやさしく、筋を通すところが受けるのだ。

そんなわけで誰か実家がマフィアやヤクザってやつはいないか、という冗談じみた話をしていたら、アンザック・ボールデンが、「俺のじいちゃん、海賊かもしれない」と言い出した。
「ええー!!」とクラスは大騒ぎ。

「おまえの家、海賊なのか!」
「い、いや、かもしれないだよ。昔、もしかするとじいちゃん海賊だったかもしれない気がするんだ」

どういうことだか教えろと皆がたかると、こういうことだ。
アンザックの家にはじいちゃんが収拾したといういろんなものが飾ってある。じいちゃんは昔、沈没船の宝捜しをしていたらしく、そういった戦利品が飾られているのだ。ただ沈没船の宝なら、錆びて古ぼけたり、フジツボがついてたり、なんか長いこと海底に眠っていた時代を感じさせそうな気がするが、ほとんどはピカピカのお宝で、船を襲ってかっさらったと言う方が合ってそうなものだという。
今でも船を持っているが、優雅なヨットでとてもそれで海賊は出来そうにないから、今は引退したに違いない。

興味つつなクラスメートは、一度そのお宝を拝見しに行こうということになった。結局それには、バスケ練習のあるキャリーと、モデルのオーデションに行くというジョンを除いて全員が行くことになった。


次回「俺の家は海賊(2)」へ続く!

前回のお話「ダーニャの恋愛相談所(3)」
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<俺の家は海賊(2)> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第31回
<俺の家は海賊(2)>

ある日曜日。アンザックの家にC組のみんなが集まった。

アンザックの家は、広大な敷地にサンゴ礁の島にあるリゾートのような平屋のゆったりとした建物、奥には広い芝生の庭がある。この超豪邸を見ただけで、全員は海賊の宝による財力に違いないと確信してしまった。

建物に入ると、あちこちに南の島の民芸品らしきものやサンゴ、貝、船具、沈没船から引き揚げたらしい船の鐘などが飾ってある。散らばってそれらに見入るクラスメート達。

パイプをくわえ、ひげをたくわえた海賊のような顔のキャラクターが描かれた大きな旗が壁に貼ってあった。その下に大きな宝石のようにピカピカに磨かれたテーブルサンゴらしきものでできたテーブルがあり、アンザックがそこへ飲み物を運んできた。
ハウルが「ありがとー」と言って真っ先にそれを取って飲み始めた傍らで、クリスティンとカーラはアンザックを手伝って、お盆からテーブルへグラスを並べている。
「ハウル、少しは気を利かせたら?女の子でしょ」
とクリスティンが注意するが、
「こういうの、別に女の子の専売特許じゃないわよ。アンザック、これおいしいわー」
と一向に意を解さない。

あちこちから「すげー、すげー」の声が聞こえる。

アロンとレソフィックは、未整理品が積まれているらしいところにいた。そこは半鐘を中心に置かれており、緑青がついたり、くすんだりしたものが大半だったが、いくつかサビ落とししてきれいになったものもあった。そのひとつをよく観察したアロンはレソフィックを呼んだ。
「レソフィック、このきれいにしたやつ、1902年ってあるぞ」
「こっちのは1800年代だ。へー。なんだ、古いのも結構あるんじゃないか。アンザックのやつ、自分家のものくらいよく見ろっての」

そこに通りかかった小泉裕美子も、その未整理の山を興味深げに眺め始めた。
一つだけ舵が転がっていて『ワリルドノア』と書かれたプレートが貼ってある。
裕美子はその舵と羅針盤との間に置いてある半鐘を指さして、
「この鐘は大分汚れてるけど、きっと比較的新しいものですね」と言った。
「そうなの?なんで?」
「この羅針盤と同じカモメのマークが彫ってあります。羅針盤は1960年製ってありますから」
「なるほどねー。同じ船のものか。舵もその船のものなのかな?」
アロンはその半鐘をよく見てみた。何かに当たったのか少し凹んでいて、ちょうどそこに船名と思われるプレートがロウ付けされてあるが、左の方が欠けている。残ったところには『ラー』と書かれていた。
「船は違うかなあ」

そこへじいちゃんが登場。横幅のある肩幅に、ごっつい体付き。背はそれほどでないが、真っ白な沖田艦長のような髭を生やし、片目の眼帯でもあればいかにも海賊っぽい人だ。塩で荒れたのか少々しゃがれた声で
「皆さん、いらっしゃい。アンザック、今日はどうした、ずいぶん賑やかじゃないか」
と言った。
「お邪魔しております。すごいお宝があると聞いて、皆でやってきました」とリーダーのチャンが受け答える。ミシェルとパウロがすっかり感心しきって、おじいさんを質問攻めした。
「すごいですね、これみんなおじいさんが集めたんですか?」
「そうじゃ。若い頃あちこち船で回ったとき収集したものだ」
「話によると、沈没船の宝捜しをされていたとか」
「船に限らんが、海底のいろんな調査を支援するのが仕事だ。宝捜しもついでにずいぶんやったものだ。いや、宝捜しの暇な時に調査の支援かな?」
笑いが飛び交う。

「沈没船の宝なら古そうな気がするけど、そういったものはどっかあるんですか?」
アンザックの言っていた疑問をそれとなく聞くミシェル。
「古いのならほら、そこの隅の壺を見るといい」
指差されたところにはフジツボや海底の石についてそうな赤い色のついた黒っぽいかめのようなのがある。
覗き込むと海底の泥が固まったようなのが詰まっている。しかしよくよく見ると・・黒く腐食した金属のコインらしきものが数枚、固まった泥から顔を出しているではないか。
「これ、コインですか?!」とパウロ。
「うむ、銀貨だ。その壺、持ち上げられんほど重いから、たぶんその中いっぱいに詰まっているのだろう」
すげー、すげーの声でわんさとなる。

急に美女とダーニャとシャノンがおじいさんの座っている横長のソファの周りに座り、お酌し始めた。
「すごぉい!指輪とかもないんですの?」
「はっはっは、あってもやらんぞ」

若い女子に囲まれて機嫌よさそうだったおじいさんが、急に険しい顔になり立ち上がった。目の方向にはパリッとした背広の男がいた。その男は開口一番こう言った。

「よう、海賊」

一斉に皆のびっくりした視線が背広の男に向かう。


次回「俺の家は海賊(3)」へ続く!

前回のお話「俺の家は海賊(1)」
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<俺の家は海賊(3)> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第32回
<俺の家は海賊(3)>

「よう、海賊」

一斉に皆の視線が背広の男に向かう。

「何の用だ、挨拶もなく入り込みおって。公僕らしからぬことをする奴だ」
「だ・・誰です、この人」とパウロが聞く。
「海上保安庁のダグラス警部だ。どうもこいつとは馬が合わない」
迷惑そうなじいさんである。

「なんだ今日は。学校の社会科見学か?確かに面白そうなものが沢山ここにはあるが、本当の持ち主はそいつじゃないかもしれないぞ」
「失礼なことを子供達の前で言うもんじゃない。この男は何度かわしに妙な罪を被せようとするが、成功したことがない」
「ふん、しらを切れるのも今のうちだ」
「で、何しに来た。また新しいいちゃもんネタを考えついたのか?」
「今日は子供達がせっかく来ているようだから、コレクションの見学だけで、また次回来るとしよう」
こう言うと入り口近くの方から飾ってあるものを見始めた。

なんか場が悪くなる皆。


地図が貼ってある前で立ち止まった警部がまた話し始めた。
「おまえの縄張りはトラリス海峡らしいな」
「調査対象は世界中に散らばっておるぞ。トラリス海峡もよく行ったが特定の場所に固執しておらん。そもそもあそこで海賊騒ぎは起きておらんだろう。あそこでは、延縄漁船『第4神海丸』の沈没、貨物船『マラヤ』の座礁事故、政府チャーターの海洋機構調査船『レグラド・ラー号』の行方不明、フェリー『ネグロ・ビーナス』の火災沈没」
「さすが詳しいな」
「仕事場のは特にだ。フェリー『ネグロ・ビーナス』の火災では救助と沈没後の調査もやったぞ。海難事故なら他のところもいくらでも思い出せる。xx年マラッカ海峡のタンカー重油流出、xx年日本海不審船事件・・・」
「トラリス海峡では本当に海賊行為はなかったのか?」
警部はほとんど壁にかかっているものを見回していた。立ち止まって長々と見渡し始めたのが、舵がたくさん掛けて飾ってあるところだ。大小の舵が20くらいあるというすごい壁だ。


このやり取りの間、アロンはさっきの未整理品のところに戻っていた。そしてそわそわしていた。
勇夫が小声で「どうした?」と聞く。
「この半鐘とコンパス、隠せないかな」
「は?」

警部とじいさんのやり取りの間に、また裕美子が未整理品の近くまで戻ってきていた。
壁伝いにアロンの側まで来ると、顔はアロンとは違う方に向けたまま、手は口にかざしてアロンの方へ向け、小声で
「その舵、ちょっと場所変えませんか?」と言った。
アロンはびっくりして裕美子を見た。

このメガネも同じことに気付いた?!

その顔を覗くが、メガネのせいかほとんど無表情のように見える。
アロンは意を決すると2人に向って小声で言った。
「レソフィック、勇夫、ちょっと警部の陰になるように立ってくれ」
2人はそれに答えてすすっと動くと、2人を死角にしてアロンは静かに舵を持ち上げ、反対側の壁に舵を寄りかからせた。


舵がたくさんかかっている壁の前にいた警部が
「ほう、フェリー『ネグロ・ビーナス』の舵だ」と言った。
おじいさんが答える。
「沈没後の調査したと言ったろう。その時引き揚げたものだ。新しい船にしちゃ珍しく木製の立派な舵を着けてたんでな」
「ふーん」と言いながら警部はまた歩き出した。

そのうちアロン達のいる例の未整理品のところまで来ると、その反対側に舵を見つけてまじまじと眺めだした。
しばらくして、
「ふん」
と言うとその場を離れていった。
アロンはちょっと安堵する。


警部は帰っていった。

C組の面々も、最初の華やいだ気持ちがしぼんでしまい、引き揚げることにした。

アンザックは皆を見送ろうとしたが、勇夫に
「まだ早いだろう。昼飯食いに行こうぜ。午後も暇ならもうちょっと遊んでいこう」
と外に連れ出された。

みんなが出ていった後、壁に立てかけられた舵に気付いて、その前に立つおじいさんの姿があった。


次回「俺の家は海賊(4)」へ続く!

前回のお話「俺の家は海賊(2)」
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<俺の家は海賊(4)> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第33回
<俺の家は海賊(4)>

「なんか、がぜん海賊説が濃厚になったな」
「あんな警部が来たのは初めて見た。マジじいちゃん海賊?でもなんかすげーやばくない?」

レソフィックがアロンに質問した。
「なんであの半鐘と羅針盤を隠そうって?」
アロンが答える。
「半鐘には欠けたプレートに『ラー』って名前が残ってた。そしてどっちにもカモメマークがあった。カモメマークは海洋調査機構のマーク。トラリス海峡の行方不明船の名前は海洋機構調査船『レグラド・ラー号』って言ってたろ」
一同がびっくりする。
「ま、マジ?!」
「行方不明船とおじいさんに関係が?」
「そもそも行方不明の船のものがあそこにあったってこと?!」
「おじいさんが襲って沈めたの?」
「決め付けるなって。でもなんかありそうだろ?」
「よく気付いたなあ」
「それより驚いたのはメガネの機転だよ。レグラド・ラー号のものの横に置いてあった舵を動かそうって。あの警部、舵にやたら興味もって見回してたから、おかげで離れたところに舵を置いたら、半鐘とかには目も向けなかった」
見回すと裕美子は集団の後ろの方で付いてきている。

勇夫が「そういやアロンが調べたら、舵だけ違う船のだったんだよな。舵には『ワリルドノア』ってプレートがあったから、確かに別の船のだ」
するとアンザックが『ワリルドノア』は今のじいちゃんの船の名前だ」と言った。

アロンがぴんと来た。

「アンザック、じいさん今も船持ってるんだろ?昼飯食ったらちょっと見に連れてってくんない?」


次回「俺の家は海賊(5)」へ続く!

前回のお話「俺の家は海賊(3)」
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<俺の家は海賊(5)> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第34回
<俺の家は海賊(5)>


みんなでちょっと早い昼飯を済ませると、一部はここで帰ることになった。

「私船酔いするのよ。だからごめんね」とシャノン。
「私もうだめ。これ以上歩き回るなんてムリだわ」と足をさすりながら辛そうな顔のイザベル。
ウォルトも「俺も昼寝しなきゃだから帰るよ」とあくびしながら言った。
「えー?クリスティン帰るの?」とハウルが残念そうにクリスティンに言った。いつもハウルと行動を共にしている彼女だが、
「ちょっと1回家に帰らないとなの。すぐ用事済むから、そしたら港に行くわね」
と答えた。


-----
帰宅組み:パウロ、ウォルト、ミシェル、イザベル、クリスティン、シャノン
残り組み:アロン、レソフィック、勇夫、チャン、アンザック、ハウル、美女、ダーニャ、カーラ、裕美子
-----

まだ時間のある面子は電車でマリーナまで移動し、じいちゃんの今の船「ワリルドノア」の係留場所へ行くことにした。

ワリルドノアは3本マストの中型のヨット風。マストの上には、あのパイプをくわえてひげをたくわえたキャラクターの旗がはためいていた。
アンザックが説明する。
「あれがじいちゃんとその仲間の船の印なんだ」
「ドクロじゃないんだね」カーラが言うと、
「そんな本物の海賊があからさまにドクロ印の旗なんか掲げるかよ」とチャンが笑いながら言った。

ワリルドノアは船体の後ろ3分の1にキャビンがあり、その2階が操舵室だった。その室内操舵室へ行くと、そこにある舵は木製のピカピカの立派なものだった。
そして舵にはこう彫られてあった。
「レグラド・ラー」
桟橋に4WDが停まった。そしてがっしりとした人が降りてきた。おじいさんだ!
「アンザック、おまえの学校、そんなに頭いいところだったか?」


次回「俺の家は海賊(6):じいちゃんは海賊?」へ続く!

前回のお話「俺の家は海賊(4)」
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<俺の家は海賊(6):じいちゃんは海賊?> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第35回
<俺の家は海賊(6):じいちゃんは海賊?>

桟橋に4WDが停まった。そしてがっしりとした人が降りてきた。おじいさんだ!

おじいさんの他、もう三人車から降りてきた。ちょっと年取った中肉中背の水夫だ。鋭い目つきは堅気っぽくなく、いかにも海賊船の乗組員のようだ。
四人はタラップを渡って自分達の船に戻ってきた。そう、まさに戻って来たの表現が相応しい。
甲板で生徒達が迎える。

「アンザック、おまえの学校、そんなに頭いいところだったか?」


「おじいさん、舵を見つけましたよ」アロンが言った。
「驚いたな。どこで気付いたんだ?」
「たまたま海洋調査機構のマークに覚えがあったんです。そのマークの入った半鐘と羅針盤があったうえに。半鐘に残ってたネームプレートには「ラー」の文字。そこに警部との会話で行方不明船の話が出たとき、全部が繋がりました」
「舵を動かしたのも君らか。意図してやったのかね」
ちょっと一呼吸入る。裕美子が言うべきと思ったのだ。しかし裕美子から発言はなさそうだったのでレソフィックが代わりに言う。
「舵には違う名前のプレートが付いてましたし、警部は舵にばかり興味持ってるようだったから、舵から遠ざければ見つかるまいと思ったのがいるんです」
「うむ、傍に置いてあった舵を動かすという機転には感心した」
アロンが続く「そしてその舵に付いてたプレートの名前の船はこの船だって聞いたとき、あれ?今船には何の舵がついてるんだ?もしかして半鐘の横には元々カモメマークの舵があったんじゃないか?って思ったわけです」
ニヤリと笑うおじいさん。
「まあ入りたまえ。お茶でも入れよう」


3人の水夫のうち、リーダー格の人がコーヒーを入れてくれた。味は薄いのだが、香りがすばらしい。

「それにしても、そもそもあの半鐘と羅針盤を気付かれないようにしようした魂胆が判らん」
「なんとなく、あの警部の味方にはなりたくなかったのかな」
「じいちゃん。海賊ってのはもしかしてマジ・・?」アンザックが聞く。
「もしそうだとしたら、おまえと友達は少し警戒心が足りん。最初から確信をぺらぺらとしゃべっているとひっ捕えられるぞ。信用できない相手だったらどうする」
しかしカーラはきっぱり言った。
「海賊でも、正義に沿っているならいいんです」

それは映画の見すぎではないか?

「アンザックの身内じゃ、悪い人じゃなさそうだもんな」
勇夫が言うと、みんながうんうんと頷いた。

そこへ別の水夫の一人がやってきた。
「桟橋にダグラスの野郎の車がやって来やした」


「盗品を隠しに来たのか?」

ダグラス警部はダリルの船の横に立つと、そう言った。
「子供達がうちの船を見たいというから連れてきたのだ」
「それじゃ、俺も見学させてもらうとするか」
ダグラス警部はタラップを上がってこようとした。
「おい、いい加減にしとけよ。さっきから失礼極まりない。甲板に一歩でも上がったら不法進入で訴えるからな。捜し物なら令状持ってこい」
やむなく引き下がる警部。しかし同僚と桟橋に車を止め、動く気配がない。


船内ではおじいさん相手に詮索が始まった。
「なぜ行方不明船の舵とか半鐘とかをおじいさんは持っているの?」
おじいさんはキャピンの自分の決まった席、キャプテンシートに座ると、語り始めた。
「行方不明というレグラド・ラー号こそ海賊だったんだ。わしらは、その秘密を知ってしまったのだ」


次回「俺の家は海賊(7):31年前」へ続く!

前回のお話「俺の家は海賊(5)」
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<俺の家は海賊(7):31年前> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第36回
<俺の家は海賊(7):31年前>

31年前、アンザック・ボールデンの祖父ダリル・ボールデン(当時39歳)はトラリス海峡で沈没船の宝をねらっていた。

その海峡の入り口で政府がチャーターしていた海洋機構調査船レグラド・ラー号と出会った。レグラド・ラー号は帆船の形をした優雅な船で、海流・潮流・海底地形などを観測するのが主な役目だが、本格的調査の事前調査に使われることもある。この船の指揮は政府系機関、海洋調査機構のリー・ワン教授が執っていたが、ダリルとは犬猿の仲だった。
今回レグラド・ラー号は事前調査で来ていた。

ダリルの船は、かつての仕事で知り合った石油王から格安で譲り受けた海洋観測船「レミーノア号」。ダリルはそれを改造し、船に付属していたリモート操作の無人潜水調査船(潜行能力1000m)、それに仲間と作った別名「ソウボール(saw ball)」というボール型の1名乗車潜水艇(潜行能力100m)2艘を積み、民間からの海洋・海底調査を請け負うほか、空いた時間で自ら沈船の宝探しをしていた。

レミーノア号の船首にはスポンソンがあり、なぜか捕鯨砲が設置されている。またソウボールは鋼鉄製で、体当たりができるほど頑丈な造りになっており、上部にぎざぎざのノコギリのようなブレードを付けていて、船の底を削るなどができる。

なぜこのような実力行使手段を装備しているかというと、見つけた沈船の宝は海賊に狙われるのだ。沈船調査も極秘で行わなければならない。宝が見つかったとたんに襲われる可能性が高まる。そして場合によっては海賊と戦う必要が出てくるのだ。そのためレミーノア号も28ノットと非常に俊足だった。


ダリル達がトラリス海峡で調査中のこと。ソウボールが海面に急浮上したとき、そこへたまたま高速大型モーターボートが通りかかり、そのボートは猛スピードでソウボールに衝突した。
ボートは空中を1回転すると転覆してしまった。

ソウボールからの連絡でレミーノア号がすぐ駆けつけるが、ボートの乗員は1名のみが見つかったが死亡。ひっくり返ったボートを引き起こして調べると、そこには自動小銃、手榴弾、自爆用爆薬といった物騒なものの他、この船の行き先(会合点と時刻情報)、そしてテロ支援国家「K国」の秘密があった。

「K国」の秘密とは?

それはK国の、とある潜水艦の予定航路だった。
その潜水艦は原爆製造部品を運ぶ役目を担っていたのだ。その潜水艦の航行ルートは、本来アメリカへ渡るはずの情報だった。しかし諜報員が寝返ったか、あるいはやられたかで、現在この情報を握ったものがK国に買い取りを要求したのだ。
このボートは会合点へ向かい、『K国の秘密』を渡して金を受け取ることになっていたのだ。つまり会合相手はK国ということになる。


次回「俺の家は海賊(8):レグラド・ラーの正体」へ続く!

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<俺の家は海賊(8):レグラド・ラーの正体> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第37回
<俺の家は海賊(8):レグラド・ラーの正体>

K国の秘密を知ったダリルは、成りすましてちゃっかり金を受け取ってしまおうとした。

モーターボートは転覆のせいで一部船が壊れたのと、エンジンの調子も完璧ではなくなっていた。
ダリルはボートを応急修理すると、会合点へ向けてボートを走らせた。
会合点はトラリス海峡を抜けた、小さな島がいくつか点在する内海の島影だった。


時間は夜。するすると会合点の辺りへ行くと島影に隠れて船の姿が見えた。近付くと帆船のような形をしている。

なんとそれはあのレグラド・ラー号だった。

背後にモーターボートが近付いてきた。そしてそのモーターボートに乗っていたのはリー・ワン教授だった。

「これはこれは、ダリル船長ではないか。なぜ君がここに?」
「それはこっちも同じだ。政府の仕事をしているリー教授がなぜこんな危ないことを?」

成りすまして金だけ受け取るという状態でなくなったダリルは逃走を図る。
リーのボートからライフルで撃ってきた。しかし不調とはいえ、わずかにダリルのボートのほうが早い。
リーはレグラド・ラー号を発進させる。レグラド・ラー号もまた26ノット出せる船なのだ。
ダリルは無線でレミーノア号を呼び出す。レミーノアの舵を握っていたのは副船長のコナーである。

「コナー、相手は驚いたことにリー教授だった。しかも鉄砲撃って俺たちを追いかけてきている。金もらえる状態じゃねえ!レグラド・ラー号で追っかけてくる。急いで罠を仕掛けてくれ!仕掛けたら場所教えてくれ、それまで何とか逃げ回る!」

レミーノア号はトラリス海峡を抜けた外洋に待機していたが、連絡を受けコナーはすぐにソウボールを海中に下ろすことにした。
『罠』とはソウボールを潜ませた場所のことであり、レミーノア号の戦闘海域なのだ。
ソウボールを操るのは、アロン達にコーヒーを入れてくれたあの水夫風の人、ダグ・ジャンだ。

真っ直ぐ罠の地点へ向かうダリルのボートだが、外洋に出るとモーターボートは大きなうねりに不利になってきた。俊足のレグラド・ラー号がすぐに迫る。

再び銃撃が始まり、ボートにたまに弾痕が開く。
エンジンもたまにパスっという。
止まったら終わりだ!


次回「俺の家は海賊(9):レグラド・ラーの最期」へ続く!

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<俺の家は海賊(9):レグラド・ラーの最期> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第38回
<俺の家は海賊(9):レグラド・ラーの最期>

ボートの前方でダリルの到着を待ちわびるようにレミーノア号の姿がレグラド・ラー号からも見えるようになった。リー教授はレミーノア号も武力で拿捕、撃沈する覚悟である。

銃撃をかいくぐり、ダリルのボートが罠のすぐ横を通過した。すぐにレグラド・ラー号もそこへ来る。
そのとき、ダグの操作するソウボールが海中から勢いよく浮上した!
バリン!ガリガリガリ
絶妙のタイミングでレグラド・ラー号の船底を例のノコギリで削った!

船底に亀裂が入り、破口からドドッと水が勢いよく進入する。
水の抵抗を受けて破口はギイギイといやな音をたて、よけいに破口が広がっていく。レグラド・ラー号は速度を落とさざる得なかった。
これを見てレミーノア号が急接近。そしてレグラド・ラー号の水線下付近に向けて捕鯨砲を撃ち込んだ。捕鯨砲の銛には、あのボートに積んであった自爆用爆薬が結んであった。

銛は狙い通りの場所へガシャンと突き刺さると、ドドーンと大音響を上げて結び付けてあった爆薬が爆発した。魚雷が命中したかのように水柱がレグラド・ラー号の舷側に高々と上った。
するとレグラド・ラー号の水線下付近にぽっかりと巨大な大穴が開いた。

渦を巻いて海水が大穴に吸い込まれていく。
レグラド・ラー号はものすごい勢いで海中に引きずり込まれていった。


レグラド・ラー号の沈没点はトラリス海峡ではなく、海峡を抜けた外洋に沈んだのだ。そのため、その後海峡を探した調査船が見つけられなかったのである。
沈没点を知っているダリルは、レミーノア号で沈没したレグラド・ラー号を探し当て、操舵輪や半鐘、違法な積荷などを引き上げたのだ。


次回「俺の家は海賊(10):拉致」へ続く!

前回のお話「俺の家は海賊(8):レグラド・ラーの正体」
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<俺の家は海賊(10):拉致> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第39回
<俺の家は海賊(10):拉致>

道場の用事がある勇夫と、美女とダーニャが一足先に帰ることになった。ただこれには陽動の意味もあった。3人は船を出ると警部のところに寄って行くことになっていた。

「警部さん大変ねえ。張り込み?」
「でもおじいさん、悪い人じゃないと思うわよ?」
美女とダーニャが警部に話しかける。
「おーい、俺行くぜ」
「いいわよ。私達ちょっと警部さんと交流深めていくから」
「お前らそんなおじさんが趣味だったんだ」勇夫が女の子達に言う。
ダーニャと美女は警部の車の窓に寄りかかって
「大人の魅力ってのは、あんたらとは違うのよ。でも警部さんは一段と渋いよねえ。背広似合うわあ」
「トレンチコートなんか着てみたらどう?名探偵って感じするわよねえ。帽子はないの?」
と2人の女の子はやたらとダグラス警部を褒めた。警部はちょっと鼻の下を伸ばし、
「おじさんを褒めたって何も出てこないぞ。ところであの船の中はどんなだった?」

そんな感じで美女達が警部に話しかけて気を引いているうちに、ワリルドノアの反対側舷側では小船を寄せて、問題の舵を降ろしていた。
小船は近くに係留しているダグの船に向った。
舵はダグの船に移されたのだ。


しかしこの後、もうひとつ事件が起こった。
美女達と別れた勇夫だが、駅に行く途中に正体不明の男たちに拉致されたのだ。

比較的近くの工場か倉庫と思われるところに連れ込まれた勇夫は尋問された。
「すまんな、手荒なまねをして。だがおとなしく言うことを聞いてくれれば何もしない、すぐに帰してやる」
「ボールデンの船にこんな舵はあったかい?」
写真を見せられた。それはまさにレグラド・ラー号の舵だった。
「隠すとためにならんぞ」
とピストルをちらつかされる。
さすがの勇夫も「見た」といわざるを得なかった。

「ガキがあの船の中で見たそうだ」
別のところにいる仲間と連絡しているようである。
そうすると、一人を勇夫の監視役に残していなくなった。

『まずい、まずいよ!これがじいさんの敵側の人間だったら、俺なんか簡単に殺されちまう。なんとか逃げなきゃ』


次回「俺の家は海賊(11):勇夫脱出」へ続く!

前回のお話「俺の家は海賊(9):レグラド・ラーの最期」
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