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<入学式(2)> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第16回
<入学式(2)>

ちょっと太ったのが入ってきた。きょろきょろしながら教室を突っ切って窓際まで行くと、
「教室が2階ってのは面倒だなあ。毎日階段登るのかあ、やだなぁ」
とぶつくさ言った。
ハウルがその体をなめまわして見た後遠慮なく言う。
「階段くらい登った方がいいんじゃない?まっ、2階くらいじゃ痩せないと思うけど」
太ったのはいや~な顔をしてハウルを見た。
「お前C組?」
「はーい!ハウルで~す。よろしく」
「ウォルトだ。でもあんまりかかわりたくないなぁ」
クリスティンがフォローする。
「ごめんなさい。この人遠慮ないんです。でも悪気はないから許してね。私クリスティンです、よろしくね」
ウォルトはちょっと顔を赤らめると
「ウ、ウォルトです。ちょっとだけかかわってもいいかなあ」

ウォルトの大きな体の後ろから小さな女の子がひょこっと姿を表した。150cm台前半の背丈に金髪のさらりとした長髪。その可憐な姿にみんな思わず見いる。クリスティンが
「わぁ、キュート!あなた誰かの妹さん?」
とその子に声をかけた。
するとその可憐な子が「あなた何月生まれ?」と聞いた。
「私?6月よ」
「じゃ、まだ15ね。あたし4月2日生まれ、16才。C組になったシャノンよ」

「い!」

そこに居合わせた誰もが仰天する。

ちっちゃくって本当に高校生か?そしてジョンやミシェルを見た後
「高校生ってもっと大人かと思ってたのに、ぜんぜんガキね。ま、しかたないか」
教室は静まり返ってしまった。

たまらず勇夫が「帰るか」と発声した。
アロンがニヤっとしてシャノンに聞こえるように
「帰りがけに缶蹴りでもしていくか」
勇夫も乗ってくる。
「高鬼にしようぜ」
シャノンが本気なのか疑い深げに
「それじゃ小学生よ」

アロンが教室を出ようとしたら、ちょうど飛び込んでこようとした女の子とぶつかりそうになった。ちょっとそばかす顔のその子は
「ここ、1年C組ですか?」
とアロンに聞いてきた。
「そうだよ」
「よかった、見つかった!」
とその子は安堵する。迷うほどこの学校広いか?
「北校舎だとか、3階だとか、ぜんぜん違うこと教えられちゃって。あっ!ちょっとあなた!!ぜんぜん似ても似つかないところ教えて!」
指さした先にはハウルがいた。またこの子か。いろいろ騒動の多い人である。
「あら、確かカーラさん。ごめんね、あの後正しいところ教わったの。だから一緒に行こうって捜したんだけど」
「ナニを根拠に3階なんて出てきたのよ!」
ハウルはカーラという子のところに来ると
「まあまあ。今度は一緒に行動しましょうよ。おいでおいで」
と肩を組むと窓の方へ連れていった。

「賑やかそうなクラスだな」
とアロンが言うとレソフィックが
「拡声器みたいなのは一部のようだけど」
勇夫が
「火の粉浴びないよう気を付けよう」
と言うと、アロンたちは外へ出た。

しかしまさか噴火口の横にいるかのような仲になるとは、このときは知る故もなかった。


次回「初登校日(1)」へ続く!

前回のお話「入学式(1)」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆


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