<カーラの誕生日(6):私のため?> [片いなか・ハイスクール]
「片いなか・ハイスクール」連載第89回
<カーラの誕生日(6):私のため?>
2人はドライブインの建物に入った。
平日昼間のドライブインは空いていて、店員たちも比較的のんびりした雰囲気が漂っていた。
「ほら、あそこだよ」
お土産屋やパン屋などが並んでいる一角にショーケースと簡単な囲いだけの小さな店舗があった。「シューちゃん」はどうやらシュークリーム一筋の店のようである。
「レストランも含めてこれだけ店があるのに、パン屋も通り越してなんでこの店に行ったのかは、いまだによくわかんないんだけどね。あの時はもう腹ペコだったから、もう忘れられない旨さだったなぁ」
「うらやましいわね。それくらいおなかすかせてれば何食べてもおいしかったんじゃない?」
「きっとそうだろうけどさ。さては味疑ってんな?」
「う、疑うわけなないじゃない・・アロン君が言ってるんだから・・・」
ドライブインの喫茶コーナーに席を確保すると、カーラにそこを留守番させてアロンが買いに行った。
しばらく待っているとアロンがコーヒーと一緒に戻ってきた。
「ほら、これがお勧めのだよ」
そう言って持って来たのは、見た目は普通のシュークリームだが、大きさはかなりでかい。
「お、おっきいのね」
「まあ食べてごらんよ」
カーラは外見をよく眺めた後、カプッっとかじりついてみた。
すると中は確かにカスタード。しかしクリームではない。中央にはカラメルソースの帯があり、口の中はまさにプリンの風味だ。といってシューの中はプリンそのものでもない。滑らかながらもっと固めだったし、皮との隙間は生クリームで埋められていた。
「わあ!え?これ中身プリンみたいな味だけど、食感は違う・・ティラミス的な?」
「おもしろいだろ。プリンほどくどくなくて上品だし」
「うん、おいしい!」
アロンも同じのをひとつ買っており、2人でちょいとしたティータイム。
カーラはニコニコである。
『よかった。落ち込んでた気分が戻ったみたいだな』
アロンはカーラが満足そうにシュークリームを食べるのを見て思った。
カーラは視線を感じて、ちょっとソバカスのある頬を赤くした。
「な、なに?いやだわ、そんなに見て・・」
「がっついて食ってるからさ」
「う、うそ!私そんながっついてなんかないわ」
「クリームがほっぺたについてるぜ」
「ええ?!」
カーラは急いでポーチから小さい鏡を取り出して顔を確認した。
「ないわよ!」
「冗談だって」
カーラは膨れッ面になった。
「いっつもからかうよね、アロン君って」
「いつも引っ掛かるからさ」
カーラはぷいっと横を向いてしまった。
が、いくらも抵抗することなく、カーラはちらりとアロンを覗くと言った。
「ごめんねアロン君、今日はわざわざ・・・」
「いいんだよ。せっかくの誕生日だし」
「私の・・ために?」
「食べ損ねたのがカスタードのケーキだったのが幸いしたね。そうじゃなかったら思いつかなかったよ」
「ありがと・・」
帰りの電車は行きよりも人が乗っていた。
ちょうど2個空いていた席にアロンを先に座らせたカーラは、思い切ってアロンに腕と、ちょっと腰のところも触れるように、隣に座った。
次回「夏のエピソード前編(1):恋愛相談所にいたのは・・・」へ続く!
前回のお話「カーラの誕生日(5):飢えた勇夫が見つけた店」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
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<カーラの誕生日(6):私のため?>
2人はドライブインの建物に入った。
平日昼間のドライブインは空いていて、店員たちも比較的のんびりした雰囲気が漂っていた。
「ほら、あそこだよ」
お土産屋やパン屋などが並んでいる一角にショーケースと簡単な囲いだけの小さな店舗があった。「シューちゃん」はどうやらシュークリーム一筋の店のようである。
「レストランも含めてこれだけ店があるのに、パン屋も通り越してなんでこの店に行ったのかは、いまだによくわかんないんだけどね。あの時はもう腹ペコだったから、もう忘れられない旨さだったなぁ」
「うらやましいわね。それくらいおなかすかせてれば何食べてもおいしかったんじゃない?」
「きっとそうだろうけどさ。さては味疑ってんな?」
「う、疑うわけなないじゃない・・アロン君が言ってるんだから・・・」
ドライブインの喫茶コーナーに席を確保すると、カーラにそこを留守番させてアロンが買いに行った。
しばらく待っているとアロンがコーヒーと一緒に戻ってきた。
「ほら、これがお勧めのだよ」
そう言って持って来たのは、見た目は普通のシュークリームだが、大きさはかなりでかい。
「お、おっきいのね」
「まあ食べてごらんよ」
カーラは外見をよく眺めた後、カプッっとかじりついてみた。
すると中は確かにカスタード。しかしクリームではない。中央にはカラメルソースの帯があり、口の中はまさにプリンの風味だ。といってシューの中はプリンそのものでもない。滑らかながらもっと固めだったし、皮との隙間は生クリームで埋められていた。
「わあ!え?これ中身プリンみたいな味だけど、食感は違う・・ティラミス的な?」
「おもしろいだろ。プリンほどくどくなくて上品だし」
「うん、おいしい!」
アロンも同じのをひとつ買っており、2人でちょいとしたティータイム。
カーラはニコニコである。
『よかった。落ち込んでた気分が戻ったみたいだな』
アロンはカーラが満足そうにシュークリームを食べるのを見て思った。
カーラは視線を感じて、ちょっとソバカスのある頬を赤くした。
「な、なに?いやだわ、そんなに見て・・」
「がっついて食ってるからさ」
「う、うそ!私そんながっついてなんかないわ」
「クリームがほっぺたについてるぜ」
「ええ?!」
カーラは急いでポーチから小さい鏡を取り出して顔を確認した。
「ないわよ!」
「冗談だって」
カーラは膨れッ面になった。
「いっつもからかうよね、アロン君って」
「いつも引っ掛かるからさ」
カーラはぷいっと横を向いてしまった。
が、いくらも抵抗することなく、カーラはちらりとアロンを覗くと言った。
「ごめんねアロン君、今日はわざわざ・・・」
「いいんだよ。せっかくの誕生日だし」
「私の・・ために?」
「食べ損ねたのがカスタードのケーキだったのが幸いしたね。そうじゃなかったら思いつかなかったよ」
「ありがと・・」
帰りの電車は行きよりも人が乗っていた。
ちょうど2個空いていた席にアロンを先に座らせたカーラは、思い切ってアロンに腕と、ちょっと腰のところも触れるように、隣に座った。
次回「夏のエピソード前編(1):恋愛相談所にいたのは・・・」へ続く!
前回のお話「カーラの誕生日(5):飢えた勇夫が見つけた店」
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xml_xslさん、ケンケン@さん、Ainoさん、dorobouhigeさん、F−USAさん、niceありがとうございます。
このシュークリームは完全に想像の産物です。doraさんのところとかをずいぶん参考にしましたが、結局自分でもどんなものだが見当つかないものになりました。(--;
センスが疑われます。
by TSO (2010-06-11 01:30)
copperさん、ルピナスさん、niceありがとうございます。
by TSO (2010-06-13 11:48)