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<過去との決別(2):異常反応> [片いなか・ハイスクール]

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「片いなか・ハイスクール」連載第238回
<過去との決別(2):異常反応>


道場から帰ってきたアロンは、裕美子に昼の話をしてみた。

「裕美子、レイって人知ってる?レイ・サクラギ」

裕美子はビク!っとした。そしてかなり緊迫したおっかない声で答えてきた。

「会ったの?」
「ああ、A組へ転校してきたとか言って。中学の同級なんだって?」

『レイが?!レイが来ている?!』


「どこまで・・どこまでレイは話をしたの?」
「裕美子の悪口ばかり言ってた。中学時代のことは何も言わなかったけど、なんか意味ありげに前振るようないい方して」

裕美子はうつむいた。しばらくすると顔を伏せたまま、小さなつぶやくような声で言った。

「アロン君・・ダメだ、わたし達」
「え?」

また裕美子の態度がおかしい。

『まずい、あの女の術中にはまっちまったか?これはあいつが「小泉に捨てられる」って言ってたパターンじゃ・・』

「ちょ、ちょっと待った。冷静になってくれよ」

『これは本当に何か隠していることがあるのか?』

その後裕美子は押し黙ってしまった。



いつも通りゆっくりと風呂に入った裕美子だったが、なんだか気にかかるアロンは、後番の風呂をいつもより早く、7分ほどで出てきた。
嫌な予感は当たった。案の定、裕美子がアパートを出ようとしているのに気付いた。身支度していたのだ。

「どうしたんだ、裕美子。俺に隠し事はなしにしようぜ」

裕美子は目線を合わせず小さな声で言った。

「ダメよ、アロン君。やっぱりわたしはあなたのことを遠巻きに見ているだけにすればよかったんだわ。ちょっとばかり気持ちが通じたからって、彼氏だ彼女だなんて・・やってはいけないところまで行ってしまった」

「・・・ほぅ」
アロンは安堵のため息をついた。

「よかった嫌われているわけじゃないんだね。君は俺のことやっぱり好きでいてくれているってのが今のでわかった」

そして裕美子の肩に手を置くと、

「でも俺も君の気持ちを聞く前から君に惹かれていたわけだし、今だって大好きだし、いまさら君の方が一方的に降りるなんてことされたら、俺たまんないよ」

裕美子はメガネの奥からも悲しげな目がわかるほどの顔をアロンに向けると、両手でアロンの頬をなでた。

「あぁぁ・・アロン君。わたし取り返しつかないことを・・」

そしてそのままずり落ちるように縮こまってしまった。

「いえ、でもいずれあなたはわたしを嫌うでしょう。わたしをすべて知ってしまったら。それなら別れるのは今の方がいい」

アロンは裕美子の精神状態を見て、何を言っても今は聞き入れてくれそうにないと思うと、口での説得はやめ、スキンシップだけにして落ち着かせようとした。崩れている裕美子をやさしく覆った。



結局この晩はアロンのアパートにいた裕美子だったが、しかし翌朝学校へ向かったものの、学校には来ていなかった。

『まずった。どこか狂わされている?・・これは裕美子の過去を、何があったのかを知る必要がある』


次回「過去との決別(3):人殺し」へ続く!

前回のお話「過去との決別(1):レイ・サクラギ」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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by TSO (2011-11-20 23:25) 

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