<第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(7):お泊りの約束> [片いなか・ハイスクール]
「片いなか・ハイスクール」連載第313回
<第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(7):お泊りの約束>
翌日の放課後、中庭の丘の上で、例のお茶会をやっていた。
「ハウル。明日はハウルの家行くってしちゃうけど、本当にいい?」
カーラが隣に座ってるハウルに尋ねた。
「いいわよー。全然問題ないわよ。泊まってく?」
「そ、それ、本当にいいの?」
「ぜーんぜんオッケーよ。じゃあ明日はホタル見た後、私の家にね」
「ユミちゃんも大丈夫?」
クリスティンがにこやかに覗き込んだ。
「え?!と、泊まりは・・ちょっと・・」
「私もハウルもノーマルだから心配しなくて平気よ?」
「何の話?」
カーラが今日のお茶菓子のバームクーヘンを、年輪のところで器用に剥がしながら怪訝そうに聞いた。
「カーラはどうかしらねぇ・・」
「な、何?何の話?」
「カ、カーラさんは疑ってません。それより、ま、まだ家の人に話してなくって・・」
「お家の人、厳しいの?」
「そうでもないですけど・・」
「レソフィックの家には泊まって、私の家はダメなの?」
「い、いえ!そんな訳では・・」
「そっかぁ、ユミちゃんもノーマルだから、男の人とじゃないとなのね?あれえ?そしたら私もノーマルだから、男の人とじゃなきゃおかしいわ」
「何?何?いったい何の話?」
「ハウル~、ホタル見学終わったらみんなに来てもらう~?」
「嫌よ、冗談じゃないわ。私の部屋を汗くさくしないで頂戴」
「あらそう・・。ごめんねぇ~ユミちゃん、ハウルはノーマルじゃないみたい」
「もうー、何の事?ついていけないわ!」
「わたしも、どうなっちゃってるのか、分かんなくなりました・・」
「とにかく無理強いはしないから。よかったらお泊まりセット持ってきなよ」
「・・ありがとうハウルさん。・・聞いてみます、泊まれるか」
バームクーヘンをパクッと食べた。
どうしよう。ハウルさん、普通に誘ってくれてるのに、わたし迷ってる・・。この間はアロン君も来るからって、泊まる気になったんだ。他の男の人もいるのに、それも男の人の家で、雑魚寝になるかもって、ハウルさん家よりずっとハードル高かったのに。・・どれだけわたし、アロン君絡むと理性なくしちゃってるのよ・・。
家に帰ってからも、そのことはなかなか切り出せないでいた。
だが、夕飯の支度をしていたお母さんの方から、その話題をし始めた。
「明日、お友達の家でお勉強会するんでしょ?夕食はどうするの?この前みたいにみんなで作るの?」
「い、いいえ。HighWayでサンドイッチ買おうってことになってます」
「あらそう。帰り遅くなる?もしかしてまた泊まるの?こないだと同じお家だっけ?」
広報の記事作りのために集まって、そのまま泊まったのはつい2週間前のことだった。あの時もレソフィックさんの家でやるということは伏せていて、ハウルさんの家でってことにしていた。
「同じ、お家です。そ、その、泊まってってという話もあるにはあるんだけど・・」
「まあ!そういうことなら泊まってきてもいいけど、いつもそこのお宅ばっかりでご迷惑じゃないのかしら」
「そ、そうですよね。よくないよね」
「他のみんなは泊まるの?」
「・・・」
答えに詰まってしまった。
「みんな泊まるなら、裕美子も泊まったら?それとも裕美子は呼ばれてないの?」
ふるふると首を振った。
「また男の子がいるの?」
「い、いません、今度は・・」
「なぁんだ、いないんだ。でも今度はって、前はいたんだ」
「ひゃいい!」
しまったー、誘導尋問に引っかかっちゃった!にやぁってお母さんが笑ってる!
「ぜひ泊まってきなさい」
「えええ?!あの!男の人いないよ?本当に」
「あらぁー、残念ねぇ・・。でもまあ、あちらさんがいいって言うなら泊まっといでよ。髪の毛のこと気になるなら、また家でお風呂入っていけばいいし」
「う・・・ん」
もわもわのくせっ毛が濡れると真っ直ぐになることは、小学校の時からからかわれてたので知られたくなかった。
親しくなったとはいえ、必要以上にいろんな事知られたくない。いつきっかけになるか分からない。関係が崩れたとき、それらは全部難癖付ける対象になるんだから。
このときはまだそう思ってた。まだ、本当にはハウルさんたちを信頼しきってなかったんだ。
次回「第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(8):腹ごしらえ」へ続く!
前回のお話「第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(6):ホタル見学ツアー」
対応する第1部のお話「第1部:第11章 7月のホタル鑑賞(2):見学ツアー」
「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
Copyright(c) 2009-2014 TSO All Rights Reserved
カーラちゃんがクリスティンちゃんの言う「ノーマル」を解せないでいますが、これはこの章の第1話で裕美子ちゃんが初めてお茶会に誘われたとき、クリスティンちゃんがアブノーマルな誘い方をしたことに端を発してます。
この章の第1話を掲載したのも、もう2ヶ月も前になるので、忘れちゃってるかなと思って。
※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。
ぽちっと応援してください。
<第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(7):お泊りの約束>
翌日の放課後、中庭の丘の上で、例のお茶会をやっていた。
「ハウル。明日はハウルの家行くってしちゃうけど、本当にいい?」
カーラが隣に座ってるハウルに尋ねた。
「いいわよー。全然問題ないわよ。泊まってく?」
「そ、それ、本当にいいの?」
「ぜーんぜんオッケーよ。じゃあ明日はホタル見た後、私の家にね」
「ユミちゃんも大丈夫?」
クリスティンがにこやかに覗き込んだ。
「え?!と、泊まりは・・ちょっと・・」
「私もハウルもノーマルだから心配しなくて平気よ?」
「何の話?」
カーラが今日のお茶菓子のバームクーヘンを、年輪のところで器用に剥がしながら怪訝そうに聞いた。
「カーラはどうかしらねぇ・・」
「な、何?何の話?」
「カ、カーラさんは疑ってません。それより、ま、まだ家の人に話してなくって・・」
「お家の人、厳しいの?」
「そうでもないですけど・・」
「レソフィックの家には泊まって、私の家はダメなの?」
「い、いえ!そんな訳では・・」
「そっかぁ、ユミちゃんもノーマルだから、男の人とじゃないとなのね?あれえ?そしたら私もノーマルだから、男の人とじゃなきゃおかしいわ」
「何?何?いったい何の話?」
「ハウル~、ホタル見学終わったらみんなに来てもらう~?」
「嫌よ、冗談じゃないわ。私の部屋を汗くさくしないで頂戴」
「あらそう・・。ごめんねぇ~ユミちゃん、ハウルはノーマルじゃないみたい」
「もうー、何の事?ついていけないわ!」
「わたしも、どうなっちゃってるのか、分かんなくなりました・・」
「とにかく無理強いはしないから。よかったらお泊まりセット持ってきなよ」
「・・ありがとうハウルさん。・・聞いてみます、泊まれるか」
バームクーヘンをパクッと食べた。
どうしよう。ハウルさん、普通に誘ってくれてるのに、わたし迷ってる・・。この間はアロン君も来るからって、泊まる気になったんだ。他の男の人もいるのに、それも男の人の家で、雑魚寝になるかもって、ハウルさん家よりずっとハードル高かったのに。・・どれだけわたし、アロン君絡むと理性なくしちゃってるのよ・・。
家に帰ってからも、そのことはなかなか切り出せないでいた。
だが、夕飯の支度をしていたお母さんの方から、その話題をし始めた。
「明日、お友達の家でお勉強会するんでしょ?夕食はどうするの?この前みたいにみんなで作るの?」
「い、いいえ。HighWayでサンドイッチ買おうってことになってます」
「あらそう。帰り遅くなる?もしかしてまた泊まるの?こないだと同じお家だっけ?」
広報の記事作りのために集まって、そのまま泊まったのはつい2週間前のことだった。あの時もレソフィックさんの家でやるということは伏せていて、ハウルさんの家でってことにしていた。
「同じ、お家です。そ、その、泊まってってという話もあるにはあるんだけど・・」
「まあ!そういうことなら泊まってきてもいいけど、いつもそこのお宅ばっかりでご迷惑じゃないのかしら」
「そ、そうですよね。よくないよね」
「他のみんなは泊まるの?」
「・・・」
答えに詰まってしまった。
「みんな泊まるなら、裕美子も泊まったら?それとも裕美子は呼ばれてないの?」
ふるふると首を振った。
「また男の子がいるの?」
「い、いません、今度は・・」
「なぁんだ、いないんだ。でも今度はって、前はいたんだ」
「ひゃいい!」
しまったー、誘導尋問に引っかかっちゃった!にやぁってお母さんが笑ってる!
「ぜひ泊まってきなさい」
「えええ?!あの!男の人いないよ?本当に」
「あらぁー、残念ねぇ・・。でもまあ、あちらさんがいいって言うなら泊まっといでよ。髪の毛のこと気になるなら、また家でお風呂入っていけばいいし」
「う・・・ん」
もわもわのくせっ毛が濡れると真っ直ぐになることは、小学校の時からからかわれてたので知られたくなかった。
親しくなったとはいえ、必要以上にいろんな事知られたくない。いつきっかけになるか分からない。関係が崩れたとき、それらは全部難癖付ける対象になるんだから。
このときはまだそう思ってた。まだ、本当にはハウルさんたちを信頼しきってなかったんだ。
次回「第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(8):腹ごしらえ」へ続く!
前回のお話「第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(6):ホタル見学ツアー」
対応する第1部のお話「第1部:第11章 7月のホタル鑑賞(2):見学ツアー」
「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆
Copyright(c) 2009-2014 TSO All Rights Reserved
カーラちゃんがクリスティンちゃんの言う「ノーマル」を解せないでいますが、これはこの章の第1話で裕美子ちゃんが初めてお茶会に誘われたとき、クリスティンちゃんがアブノーマルな誘い方をしたことに端を発してます。
この章の第1話を掲載したのも、もう2ヶ月も前になるので、忘れちゃってるかなと思って。
※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。
ぽちっと応援してください。
にほんブログ村 |
にほんブログ村 |
にほんブログ村 |
☆☆ 災害時 安否確認 ☆☆
いっぷくさん、yamさん、ほちゃさん、tedさん、F−USAさん、copperさん、yu-papaさん、ぼんぼちぼちぼちさん、teftefさん、bitさん、ネオ・アッキーさん、やってみよう♪さん、niceありがとうございます。
by TSO (2014-04-28 00:05)